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LASTDAY  作者: 杉田健壱楼
三章 大陸大戦
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七十五話 謎の男

 一方その頃、ベッジハード軍は行軍を開始して数時間が経過していた。


「マックス、なんで瞬間移動テレポートを使わないんだよ、徒歩と魔獣なんて非効率すぎないか?」


 こう問うのはヤマトである。


「コルットラーが瞬間移動テレポート阻害の結界を展開している。だから我々は徒歩と魔獣を駆使して行軍するしかないんだ」

「何故だ、我々の属国...いや同盟国であるはずだが...」

「キングダム、それは俺も疑問に思ってる所でな。何故通れない...ナイトメアもシュライドに行ってから音信不通...これは何かあるぞ」


 マックスが思考を巡らせる。巡らせても巡らせても、出てこない答えに次第にマックスは苛立ちを覚え始めた。


「まぁ、考えても仕方ないなら行動するしかないだろ。俺考えるの嫌いだし、で、後どれくらいで着くんだ?」

「半日もかからないうちには着くだろう。兵達もまだ疲弊の様子は見せていないしな」


 そんな話をしている時、突然、目の前に黒いローブを被った不審な人物が姿を現した。それと同時にマックスは軍全体に行軍停止を命じた。


「貴様、何者だ、名を名乗れ。名乗らねば即刻処刑する」

「名を尋ねる時は自分から名乗るのが筋と言うものではないかね」


「これは失敬、私はベッジハード大帝國大元帥兼特級将軍のマックス・イ...失礼。マックスである。現在コルットラー救援の任に就き、行軍中である。さあ貴様の番だ」

「自己紹介御苦労様、かと言って私が名乗る義理はないので名乗らんがね」


 数秒の静寂の後、マックスが放った言葉は...


れ」

「「「御意」」」


 ガンツとヤマトが同時に言い放ち、謎の男に踊り掛かる。

 

「野蛮な奴らだな」


 男は、ガンツとヤマトの攻撃をやすやすとかわした。只者ではないようだ。

 

「出でよ!闇の眷属達よ!」


 男の言葉に合わせ、どこからともなく魔物が湧いて出た。


「我々も舐められたものだな、ヤマト。魔物如きで狂神五人衆が止められると...」

「恐慌」


 マックスの行使した凄まじい恐慌により、魔物達は消滅した。


「御託はいい、早く仕留めろ」


 マックスの言葉はガンツですら尻込みをする圧を放っていた。


「おぉ、怖」

「こいつは俺が仕留める!!」

「おい、待て。ヤマト...」


 ヤマトが単独先行し、再び謎の男に踊り掛かる。


「ヤマトというのかな?攻撃が単調だ。もっと工夫をした方がいい」


 男は余裕の笑みを浮かべながら、また魔物を呼び出した。


「単調なのはてめえも同じじゃねえか!」


 ヤマトはさっきより更に怒って男に襲いかかる。魔物はマックスの恐慌で全て倒れるはずであった。しかし、男を囲うように現れた魔物は1匹も倒れていない。


「おい!マックスなにしてやがんだ!」

「なぜだ...?恐慌が効かない...?」


 マックスはすでに恐慌を放っていた。それで倒れないということは、さっきの魔物よりも強いということだ。


「はて、単調なはずなのだがな」


 煽るだけ煽って一切戦おうとしない男に対し、ヤマトだけでなくガンツとマックスも怒りを隠せない。


「魔物如き、恐慌が効かぬからと言ってなんだと言うのだ!」


 3人にかかれば、いくら恐慌が効かないほどの魔物であると言っても瞬殺である。しかし、その奥にいたはずの男の姿はない。


「おい!出てきやがれ!」

「私は忙しい...残念だが君たちの相手はしてやれないのだ。魔物たちと遊んでおいてくれ」


 また魔物が現れた。当然、恐慌は効かない。むしろ、2度目に呼び出された魔物たちよりも強くなっている。


「急がねばならんと言うのに...とんでもない邪魔が入るもんだ...」

「それはこっちのセリフだ。コルットラーを攻め取る邪魔をしないでもらおうか」


 魔物はどんどん増え続ける。無視して進軍したいのはやまやまだが、流石にこれだけの数の魔物を放置すれば、コルットラーに到着した頃には軍がボロボロになってしまうだろう。相手取るしか方法はない。


「恐慌さえ使うことができれば...」


 マックスは奥歯をギリギリと噛み締めながら魔物と戦い続ける。魔物と戦っても負けはしないが、数は増え続けている。


「卑怯なやつだ!出てこい!」


 ヤマトの言葉に返事はない。すでに男はどこか遠くへ行ってしまったのだろうか。


「クソっ!逃げられたか!」

「やつのことは気になるが、今はこの魔物どもを蹴散らすのが先だ」


 もうすでにかなりの数を倒してきているはずだが、魔物の数は増える一方である。


「早く救援に向かわねば...」


 マックスは、焦りが募っていつもの実力が出せていない。結果、魔物を全滅させるのにはかなりの時間がかかってしまった。


「恐慌が効かぬ魔物は上位種、それも稀に生まれてくる変異種のみのはず。何故効かなかった...」

「マックス、考えるより先に行軍を再開させよう。これ以上遅れては、コルットラーが持たない」

「嗚呼、そうしよう。キングダム」


 ここでエリカが今作戦で初めて口を開いた。


「私にあの謎の男を追わせて、あの男は“それはこっちのセリフだ。コルットラーを攻め取る邪魔をしないでもらおうか”と言った。つまり今回の騒動に深く関わっているのは必至。奴がドラゴンの可能性だってある。放置するにはあまりに危険すぎる。だからお願い」

「エリカ、何を言っている!!お前一人にそんな危ない事させる訳にはいかない!!」


 この瞬間、阿吽の呼吸でキングダムとマックスがお互いの考えを理解した。


 キングダムが目配せをし、マックスがエリカに命じた。


「分かった、承諾しよう。奴の事は頼んだぞ」

「おい、マックス!!」

「今回の言い分を聞くにエリカの言ってる事は正しい。今最善の選択と言える。お前は国の為の意向よりも私情を優先するのか?」

「クソ...エリカ、絶対無事に...」

「分かってる。安心して」


 エリカは謎の男を追った。この単独作戦が後に、どのような影響を及ぼすかは、まだ誰も知らない。そしてマックス率いるベッジハード軍は行軍を再開した。

ご覧頂き誠に有難う御座います。今後も御愛読の程、宜しくお願いします。

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