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LASTDAY  作者: 杉田健壱楼
三章 大陸大戦
58/92

五十六話 ユイリィの記録

通称「シュライド事変」の記録

担当:ユイリィ・ミケディデス


煌暦24年、カムイ・エアハルト暗殺。

狙撃魔法によるもので、狙撃手はオズワルド・スプラウト。カムイを庇った付き人の人間(黄色)アイリス・クヴァールも巻き込まれて死亡。

事件名の通称となっている『シュライド事変』とは、元はカムイの無茶振りであった試練に耐え抜き

"王者の風格"を手に入れたスレイン・ケマルを中心としたクーデター的事件から、エカテリーナ朝シュライドやその他新勢力の誕生までを指す。


洗脳されていた一部の民衆の洗脳が一気に解け、カムイ死亡の噂はどこからともなく広がった。

翌日昼刻、スレイン・ケマルは大都市チェルスにて

カムイの生首を晒し、自身が討ち取った事を民衆に伝えた。その際にスレインが行った演説の一部を抜粋する。


「我々はあの極悪人、カムイに記憶操作され一時的に屈するまで、各々の小国に分かれていた。しかし今は共にあり、諸悪の根源も既に断ち切られた。我々は今こそ団結し、女王の元で王国を新しく生まれ変わらせ、『新生』シュライド王国として平和と大陸統一を目指すべきではないだろうか」


計48分に渡る演説には、カムイに味合わされた屈辱、そこから立ち直る為の団結の必要性、新たな国の構想、すぐに実施する政策の発表など、民の注目する話が盛り込まれていた。


新たな国の構想としては

・ベル王国出身のエカテリーナ姫を女王とした新王国

・民を押さえつけない政治体制

・積極的な領土拡大

・魚を主食とした健康的な国民性の維持

などが挙げられた。

このうち、『魚を主食とした健康的な国民性の維持』は反対を押し切って通したものの、国民の殆どはあまり魚を食べなかったので、大失敗だったといえる。


政策としては

・貨幣制度の確立

・税制度の確立

・人材募集の為の試験実施

・積極的な海上開発

・遠距離攻撃魔法の研究や軍隊の強化などを行い、

領土を積極的に拡大

・法律の成文化

などが挙げられる。

税制度は比例課税で、一律で収入の30%とされた。

しかし、貨幣制度が上手く確立せず物価も安定しなかった為、結局税率も一定となる事は無かった。


また人材募集の為の試験は即実施されたが、

賄賂が横行し成功したとはいえない結果となる。


軍事力の強化に関しては非常にスムーズに進み、

海軍の開発によりシュライドのすぐ下の海と、コルットラー近海を領海として獲得。

この際建設された軍港都市"ヴェネツィオン"は、その後も長く栄えることとなる。


一方政府に構成に関していえば、

幹部クラスとなると旧シュライド王国のメンバーを引き継ぐ形となった。

王女 エカテリーナ・ベル・アリューシア

護衛隊隊長 スレイン・ケマル

護衛隊副長 オズワルド・スプラウト

軍師・内大臣 ハンニボル・ルール

討伐隊隊長 ファイン・ルール

遠征部隊長 ギギル・アショーカ

遠征部隊軍師:ハインリヒ・オリジン

書記・内大臣補佐:ユイリィ・ミケディデス

治安管理官:アイナ・モンテッソーリ

治安管理官:バルカ・ルール

治安警察官:ギスコ・ルール


後に試験によって選ばれたメンバーにも重役を任せるというふうには宣言しているものの、これには「結局身内で固めた自称新政府」と揶揄された。

試験が実施されて2週間が経っても、官僚に新たな人員が加わる事はなかった。



新政府樹立から3週間経つと、早くもあらゆる問題点が見えていた。


1.宗教関連

今までカムイに弾圧されていたヒューヤ教の保護の是非、新たに現れたミコル教の政府への要求など。


2.貨幣制度

先述した通り、貨幣制度を導入したは良いものの、生産を追いつかせる為に石を削り取っただけの簡単な硬貨となってしまい、偽造のものが急増。

物価も安定せず、定めた税制度も調整せざるを得なくなってしまう。


3.賄賂の横行

こちらも先述したが、賄賂の横行により正当な能力試験とはならなかった。結局、正当な評価では無いという事で新たな官僚の起用は延期される。

これが新政府への不満が募る大きな要因となった事は間違いないだろう。


4.新たな徴税システムの混乱

今までの徴税システムであれば一部の者は野放しにされていたが、等しく徴税されるようになった事で逆に不満を持つ者もいたようである。

特に大土地所有者たちからは抗議の声が多かった。

しかし、支持する国民も多かった為、徴税システムの整備は間違いではなかったといえるだろう。


5.デモ

思いのほか上手く行かない政治運営に対して批判を上げる民衆が増加。前のようにすぐに弾圧される事がないのがその一番の要因であるといえる。

デモの旗手はなかなか姿を表さなかったが、このまま拡大が続くと国の運営に支障をきたす可能性も生じてきた。

更に、ミコル教の激しい要求も殆どデモであり、

政府が対応しきれない事態となった。


 そして2週間後、シュライドを再び揺るがす大事件が発生する。




「あーー、疲れた。休憩!」


 筆を置いたユイリィは大きく伸びをして、すぐに少し心配そうな顔をする。


「アイツの学校は大丈夫なのかな…」


 突然、ドアの向こうから声がする。


「ユイリィ、入っていいかしら?」

「いいわよ」


 声の主はユイリィの部屋に入り、彼女の隣に来て机上を覗き込んでくる。


「あら、"当時の"シュライドの記録?」

「ご明察。それで、どうしたの?」

「今度開催される歌唱コンテストの相談に来たの。でもその前に…」


 彼女は手のひらをドアの方へ向けて続ける。


「彼"が呼んでいたから、行ってらっしゃい。終わるまで何処かで待っとくわ」

「そう。それならこの部屋で待っておいて。紅茶を7番に保管してあるから、ご自由に」


 そう言ってユイリィは部屋を出て、彼の元へ向かった。

現在に戻りました。

『新生』シュライド建国のいきさつを詳細に書いているとあまりにも長くなりすぎる気がするのでこのようにまとめる形となりました。

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