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LASTDAY  作者: 杉田健壱楼
三章 大陸大戦
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五十話 電撃部隊

「さぁ...やるか」


 ナイトメアは重い腰を上げた。自分の部屋に篭って考え事をしていても何も変わらないからである。そしてナイトメアは第一にバイオレットに思念交信メッセージを飛ばした。


「バイオレット。応答せよ」

「何でしょう、ナイトメア様」


 相変わらず反応が早い。それもそのはずで、ナイトメアの部下達は皆、ナイトメアが思念交信メッセージを飛ばして間もなく反応を示す優秀な部下達であるからだ。


「俺の部下、全員に伝えろ。第三地下広間に来いと」

「御意」


 すると、ものの五分程度でナイトメアの部下全員が広間に集まった。


「案外早かったな、昔は十五分掛かったぞ」

「期待しているのでしょう、再出発の予感に」


 アフトザフトが返答する。


「さぁ、始めよう。古き良き部隊の復活と新たなる旅路への航海を」


 ナイトメアは自分の部下達の前に出ると、長い拍手が湧く。そしてナイトメアが右手を勢いよく上に挙げて、周囲は静寂に包まれた。


「よくぞ集まってくれた、我が同胞達よ。ジャックから聞いてると思うが、先程電撃部隊の復活が決定された!!」


 そして拍手喝采。周囲から万歳の言葉が飛び交う。


「暗殺部隊の再建は国家にとって本当に素晴らしい事だ。我らが電撃部隊は秘密裏に危険分子を排除し国益を成してきたが、それらは愚王ファングの横暴により白日のもとに晒され、解体を余儀なくされた。今我々はいつ戦争が起きてもおかしくない状況にいるが、民は長く続く平和に少しずつ溶け込んでしまっている。国民の意識が薄くなれば国家はどうなるだろうか?世界つまり他大陸におけるベッジハードの存在感はどうなってしまうのだろうか?我々は肩を並べ国家と運命を共同していくのだ!!電撃部隊が秘密警察と連動し秘密裏に国家にあだなす売国奴どもを粛清する。それが我々なのだ!!」


 ナイトメアの声が地下広間に響き渡る。そしてその響いた声が途絶えた瞬間、周囲から歓声が上がる。


「ナイトメア様万歳!!電撃部隊万歳!!」


 ナイトメアが右手を挙げた。その瞬間に再び静寂が訪れる。


「我が国には北のジプシー大陸や東のヤマト大陸と接触しようとした過去がある。ヤマト大陸は無事、国交を結ぶ事ができた。しかしジプシー大陸は国交を拒絶されると言う結果に終わった。どうやらジプシー大陸からすれば、我が国は取るに足らぬ国と判断されたようだ」


 その言葉を聞いたナイトメアの部下達は一斉に殺気を放った。


「そしてドミニオンがベッジハードに変わった今!!ジプシー大陸が何等かの動きを見せる事を私は予想する!!恐らく戦争の類いであろう。ならば我々電撃部隊が立ち上がらねば、誰が立ちあがろうというのか!!」


 ナイトメアの演説はまるで、ときの声の様な効果を持っているようだ。その結果、ナイトメアの部下達は感極まった状態になっている。


「そうだ!!!」

「ベッジハード大帝國、電撃部隊万歳!!!」


 ナイトメアが右手を勢いよく挙げた。そしてまた訪れる静寂。


「ここで電撃部隊主要幹部を紹介したいと思う!!幹部は前へ!!」


 すると三人の男と一人の女がナイトメアの前に並び立った。


「一人目は我が側近にして旧電撃部隊の最高幹部、アフトザフト!!」


 歓声が上がる。そしてアフトザフトは跪き、敬礼をした。


「二人目は長年に渡り、私の部下達に勉学や戦術などを教え、ベッジハード、電撃部隊に大きく貢献した男。アルフレッド・バイオレット!!」


 また歓声が上がる。そしてバイオレットは跪き、敬礼をした。


「三人目は旧電撃部隊で最も多くの武功を上げ、御国の為に大きく貢献した男、アドルフ・フォン・ジャックザール!!」


 そして歓声が上がる。ジャックは跪き、敬礼をした。


「四人目は旧電撃部隊の幹部ではないが、旧電撃部隊の幹部全員からの推薦で幹部に昇級した強者だ。しかも女の身で初めての幹部なったという功績も持ち合わせている。容姿も淡麗で学問や実力に問題は無し、その名もサイレンス・ヴァイザー!!」


 先程までとは比べ物にならないほどの歓声、ヴァイザーはナイトメアの前に跪き、敬礼をした。


「これで、幹部は全員紹介した。今後もこれで宜しく頼む。ではここに再び宣言する電撃部隊は完全復活を遂げたぞ!!」

 

 これによりナイトメア率いる電撃部隊の完全復活が完了した。電撃部隊が復活した事により今後どの様な影響をもたらすかは、まだ誰にも分からない。




 神聖シュライド王国南部。王都イルジオンからは遠く離れており、全くの未開拓である。国の管理すら行き届いていないその場所で、密かに活動する者達の姿があった。


「おお、ついに我々の布教が公に行われるのですか!」


 他にも、感嘆の声が多く上がる。しかし声を上げた全員が、何か大きな間違えをしたかのような顔をし、前に鎮座する男に向かって額を地に擦り付け謝罪する。


「申し訳ありません。感動のあまりおきてを破ってしまい…」

「構いませんよ。これも神から与えられし力の恩恵です。ただし、私は対話を重要とします。私がこの声で伝えるまでは、少し我慢してください」


 緑の服を全身に纏った信者達は、この言葉一つに感謝の声を上げている。


「私達にはもうじき、念願の布教の機会がやってくるでしょう。コンシエンシア様はいつも私達のすぐお傍にいらっしゃることを、苦しむ民に知って頂かなくてはなりません。ヒューヤ教のルーエさんは、自らの信念を胸にシュライドの元に出向かれましたが、囚われてしまいました。しかしそんな横暴が続くはずがありません。革命は起きます。その時は、きっと目前に迫っている。皆さん、これまでよく私のような単なる代行者の元で耐えてくれました。感謝します」


 信者の反応はひたすら号泣する、拍手をする、祈るなど様々であったが、皆が言葉と共に伝わってくる代行者アールカ・オップファーの心の温かみを肌で感じていた。



 一方の大都市チェルス。王都イルジオンに比較的近く、ラント川が通っている為王都に次ぐ都市となっているが、そこでもまた密かに動く者達の姿があった。


「ついにやるのか?ロイエ」


 低い声が、リーダーと見える者に問う。


「ああ。もし幹部の誰かが自我を取り戻し、反旗を翻してくれれば僕の出番など無かったのだが…仕方ない」

「決行はいつッスか?このやり方だと…この6人の中で死人が出る可能性も低くない」

「ロイエの正義は執行されるべきだ。僕は命をしてでも、あの愚王に立ち向かう」

「私もユーリにさんせー!あいつを怖がって、隠れて研究するなんてやだ!」

「ああ、もし君達の命が危なくなれば、俺が殿になる」

「それは許せん」

「それは許可できないッスね」

「それは僕の正義に反する」

「それはダメ!」


 その男、ロイエは周囲の意見が全てである。まさに、カムイとは真逆。


「…そうか。悪かった、そんな事しないよ。とりあえず、集められる人員を全て集めてくれ。恐らく決行は明明後日しあさっての七十六新星になると思う」


 シュライドは、これ以降大きく揺れ動く事になる。

ご覧頂き有難う御座いました。


追伸⏬


【期間を表す概念】


①煌暦

ドミニオン王国が統一された年が"煌暦一年"である。

②〜新星

朝刻、昼刻、夕刻を一周終えると一新星となり、それが三百六十五回繰り返されると"一年"となりリセットされる

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