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LASTDAY  作者: 杉田健壱楼
二章 平穏
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四十八話 平穏の真髄

 そしてナイトメアはと言うと、クロノスを探しに帝都に出ていた。


「案外早く終わったから、クロノスにサプライズできるな」


 ナイトメアは少し胸を躍らしている。


「ナイトメア様だ!!ナイトメア様がいるぞ!!」

「あっ...」


 ナイトメアが帝都に出れば国民達は大喜びし、近寄ってくる事は目に見えた事である。


「ナイトメア様!!ベッジハードの英雄だ!!」

「有難う、有難う」


 ナイトメアは引っ張り蛸状態である。すると一人の女性がナイトメアに近づいてきた。


「ナイトメア様、是非この赤ちゃんに名前をつけてやってください」

「良かろう、男か?」

「いえ女の子で御座います」


 ナイトメアは悩んだ。どうせなら可愛らしく、喜ばれる名前をつけたいからである。


「お前の苗字は?」

「ルドルフです」


 ナイトメアはその名前に聞き覚えがあった。そう鏡の女王(ミラークィーン)の生贄となったルドルフ・フォン・レギーナである。


「お前、もしかしてレギーナの親か?」

「そうで御座います!!レギーナったら、御国のために行ってくるって言ってから居場所が分からなかったんです。ご存知ですか?」


 ナイトメアは事の経緯を説明した。


「そうだったんですか」


 レギーナの親は少し悲しそうではあったが、嬉しそうでもあった。家の誇りになったからであろう。


 ナイトメアはレギーナの親の前に鏡の女王(ミラークィーン)を出現させた。


鏡の女王(ミラークィーン)

「これがレギーナ...」

「彼女は本当に良くやってくれたよ」


 レギーナの親は涙を拭った。


「教えてくれて有難う御座いました」

「いえいえ構わんよ。話は戻すが、この娘の名前はルドルフ・フォン・レーツェルでどうだ?」

「とても素晴らしい名前だと思います!!因みに意味は?」

「他大陸の古文書に載ってたんだが神秘的な女性と言うらしい。お気に召さなかっただろうか?」


 レギーナの母は泣き崩れた。


「なんて素晴らしい名前...有難う御座います!!」

「そんなに喜ばなくても...」


 ナイトメアは少々困惑気味である。


「では私は用があるので失礼する」

「はい!有難う御座いました」


 ナイトメアはそう言ってレギーナの親の元を後にした。


「さぁ、クロノスは何処かな。思念交信メッセージも出ないしな...」


 国民に自分がナイトメアである事を、見抜かれないように巡回していたナイトメアは、とある集団を見かけた。


「おぉあれは!!」


 ベッジハード大通りに、軍服を着ていて、国旗を掲げた集団が行進している。そう軍事パレードである。


「世界に示す時ぞ今!!いざ征け、つわもの、帝國男児!!!」


 集団達が叫ぶ。足並みを揃えて行進してる姿はまさに、一致団結しておこなっているパレードと言えよう。


 普通のパレードはローゼが主催しているためナイトメアはあまり興味は無いが、軍事パレードに関しては話は別である。


「実に愛国的だ。これこそ国民としてあるべき姿だな、誉高き帝國魂を...」


 ナイトメアが独り言を呟いていたら、路地裏から人の気配を感じた。


「今は表通りに出て生誕祭に参加してる国民が殆どの筈だが...」


 ナイトメアは気になったので、路地裏を覗いた。すると子供が一人ゴミ箱の横に座っているではないか。


「おい、何をしている」


 子供はナイトメアに気ずくなり、逃げた。


「何故逃げる」


 そう言ってナイトメアは暗黒物質ダークマターを具現化させ逃げた子供を一瞬で捉えた。


「離して...!!」

「別に取って食おうと言うわけではない。まず落ち着け」


 ナイトメアは子供をゆっくりと地面に下ろした。


「ここで何してる?」

「ごめんなさい...」

「質問に答えろ、何をしてる?」


 ナイトメアは普通に聞いたつもりだったが子供には怖く思えたのだろう。涙を流して、何も答えなくなってしまった。


「はぁ...私がそんなに怖いかね...」


 すると子供が首を縦に振る。


「なっ...まぁいい。親は何処に?」


 子供は首を横に振った。


「いないのか、可哀想に。なら此処で何をしている?それに何に怯えている?」

「...」

「答えたくないのか?」


 ナイトメアがそう問いた瞬間だった。


「そこまでだ、糞餓鬼!!返せ俺の財布!!!」


 ナイトメアは察した。この子供、盗みを働いて裏路地に逃げてきたに違いないと。


「まぁ、落ち着きたまえ。子供が怯えてしまうではないか」

「ナ..ナイトメア様!?何故ここに!!」


 子供は目を見開いた。怯えと驚きが入り混じったような表情である。


「そこは気にするな。それより盗られた額はいくらだ?」

「三万フェリルです」

「よし十万フェリルやる。これでこの子のした事を許せ」


 ナイトメアに十万フェリル貰った被害者は目を見開いた。


「良いのですか!?しかしこんな額...」

「黙って貰っとけ、口止め料だ。そのかわりこの子のした事は秘密警察や警察、軍部には不問という事にするんだぞ?」

「は...はい!!」


 そう言って被害者は金を受け取り、ナイトメアの前から走り去った。


「さぁ、自己紹介がまだだったね。私はベッジハード帝國特級将軍が一人、ナイトメア・フリッツだ。おっと何をしている?」


 子供はナイトメアに頭を下げたまま、動こうとしない。


「頭を上げろ、金の事は気にするな。さぁ名前を教えてくれ」


 子供は震えながら顔を上げた。


「私は...シャルロット・フリーデンと申します。お金有難う御座いました...」

「フリーデンか良い名だ。まず見た目をどうにかしたいな。よし」


 そう言うとナイトメアはフリーデンを抱っこして歩き出した。


「えっ..!?」

「お前は俺が引き取る。これからは親代わりと思ってくれていい」

「えぇ...あ...はい...」


 ナイトメアはとりあえず高級理髪店に向かった。


「邪魔するぞ」

「ナイトメア様!?」

「この子供を可愛くしてやれ」

「か、畏まりました!!」


 ボサボサだった髪の毛は綺麗に整えられ、隠れていた顔があらわになった。


「お前、本当に女か?」


 ナイトメアは不思議に思って尋ねる。フリーデンの顔は、女性にしては凛々しかった。


「お、男ですけど...」

「おぉ...リンみたいな男のような女は何人か知っているが、女のような男は...初めて見た...」

「まぁいい、次は服屋だ。店主代金を...」


 店主が首を横に振った。


「いえいえ、お代は結構です。今後も国の為に頑張ってください!!」

「嬉しい事を言ってくれるじゃないか、有難う」


 ナイトメアは高級理髪店を出て、高級服屋に向かった。


「邪魔するぞ」

「ナイトメア様!?」

「なんか同じくだりだな。まぁいい。こいつに似合う服をコーディネートしてやってくれ」

「喜んで!!」


 そしてコーディネートされた服は透き通るような瑠璃色の目に合う、スーツ服だった。


「どうです!?ナイトメア様、中性的な顔によく似合う服でしょう?これで腰あたりに細剣レイピアでもつけたら、もう最高!!!!」

「よし、良くやった。こいつには細剣レイピアを持たせよう。お代は...」

「お代は結構です!!!」

「そうか。なら有難く」


 そしてナイトメアは高級服屋を後にした。


「整った顔立ちに良い服...良かったな」

「有難う御座います...」


 フリーデンはまだナイトメアと馴染めていないのを隠しきれない様子だ。


「さぁ、本命のクロノス探しを再開すると...ん?あれは?」


 ナイトメアが高級服屋を出た目の前にクロノスとイルゼ、そしてリンとメイがいた。


「パレード面白かったね。イルゼ」

「まぁ国民にしつこく追い回されたのは面倒だったけどね」


 クロノスとイルゼが他愛もない話をしているのを聞いて、ナイトメアは楽しそうで何よりと思った。一方リンとメイは。


「ねぇクロノス様、イルゼ様、ナイトメア様の演説素晴らしかったですよね!?メイもそう思うでしょう!?」

「うん、私もそう思うよ!!」


 いつもにも増して、元気いっぱいな二人組である。そしてその会話に聞き耳を立てるナイトメアである。


「フリーデン黙っておけよ」

「はい...」


 気になるクロノスの返答は予想通りのものだった。


「将軍達の代表として、とても良い事を言っていたと私は思うよ。普段やり過ぎな事があるから一概に全て良かったとは言えないけど」

「右に同じく」


 これを聞いたナイトメアは別にこれといった感情は湧かなかったが、褒められているという事にして、クロノスの元に向かった。


「クロノス、思ったより仕事が早く終わったから来たぞ」


 クロノスはとても嬉しそうで、ナイトメアに抱きつこうとしたが、動きを止めた。


「ナイトメア、その子は?」

「拾った。名はシャルロット・フリーデン、親無しの孤児だ。俺が引き取って育てる事にした」


 それを聞いて、真っ先に動いたのがリンとメイである。


「私リン、隣にいるのがメイ。同じ女の子同士仲良くしましょう」


 そしてリンが右手を差し出した。


「一つ言うのを忘れてたが、そいつ男だからな」


 それを聞いた全員が疑った。しかし本人が答える答えは。


「男です...」

「...まぁ男の子でも変わらないわ、同じナイトメア様に拾われた拾い子同士仲良くしましょう」


 そしてリンはもう一度手を差し出す。


「宜しくお願いします...」


 ぎこちない様子でフリーデンはリンの手を握った。


「ほらメイも」

「分かってるよ、宜しくね」


 そしてフリーデンとメイは握手を交わす。


「という訳だ。理解の方、宜しくなクロノス」

「一つ聞いて良いかな?」

「どうぞ」


 クロノスが恥ずかしそうにしてるのを見て、イルゼは何を察したか、リンとメイ、フリーデンを連れて何処かに行ってしまった。


「私はこの子達とちょっと遊んでくるから、後はお二人でごゆっくり」


 この時クロノスはこう思った。


(イルゼ有難う!!)


「で聞きたい事とは?」


 ナイトメアがクロノスに問う。


「フリーデンって子はさ、ナイトメアは自分の子供として扱おうとしてるの?」

「まぁ、そうだな。今の今まで自分で立てた孤児院に連れてったり、アフトザフトやリンとメイに世話をさせてたから、偶には自分で世話するのも良いかなと思って、歳も手間が掛からない程度だろうし」


 クロノスは少々間を置いてこう言った。


「...それって、私達の子って事?」


 ナイトメアはクロノスが何に恥ずかしがっていたのか理解した。


「まぁ血の繋がりはないが、捉え方によってはそうなるな」


 クロノスはナイトメアに抱きついた。


「有難う!!私の願いを叶えてくれて」

「養子という方法になってしまったが許してくれ」

「うん。全然良いの!!本当に有難う!!」


 ナイトメアとクロノスは抱き合い、仲は深まった。


 そして後にイルゼ達とナイトメアは合流。生誕祭を楽しんだ六人なのであった。

ご覧頂き有難う御座いました。

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