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LASTDAY  作者: 杉田健壱楼
二章 平穏
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四十四話 険悪な日

 時を同じくして、神聖シュライド王国にも迎えの使者がやってきていた。


 以前ファインが反抗分子として捕縛したヒューヤ教の教祖[もちろん洗脳済み]ルーエ・エクスペールトが玉座の間にやってきて、使者の来訪を知らせる。


「"アフトザフト"様と名乗られるべッジハードからの使者の方がおいでになっています」

「おぉ!前あの思念体が来た時に言っていたあれの件か!通せ!」


 扉が開くと、その先には妙に見覚えのある思念体の姿があった。


「失礼致します。生誕祭の前夜となりましたので、お迎えに上がりました」

「おお!久しぶりだな、オリジンに負けた思念体!貴様改名したのか?まぁいい、今日こそ酒を飲もうではないか!」

「いえ、私はナイトメア様ではありません。完全なる別人です」

「なぬ!紛らわしいではないか!お前は青い仮面でもつけておけ!」


 するとアフトザフトは、青い仮面を作って被った。


「失礼致しました。以前お伝えした通り各国3名の参加となっておりますが、参加されるのはどなたでしょうか?」

「そういえば決めてなかった。ハンニボル、どうしよう」

「私は残りますが、それに関しては少しだけ会議させてください」


 そういってハンニボルは、城にいる主要メンバー全員に一気に思念交信を飛ばした。具体的な会話内容までは分からない。その場にいたスレイン、ファイン、エカテリーナは会議に参加しているようで目を閉じて少し下を向いている。


「アフトザフト殿、書記は必要だろうか?」

「別に必要ありません」

「承知した。ユイリィは不要か」


 少し経つと、ハンニボルは顔を上げてこう言う。


「お待たせした。カムイ様、ファイン、スレインを派遣したい」


 そしてカムイが補足する。


「その子供みたいなやつがファイン、魚をくわえた男がスレインだ」 


 ファインの体が少し震える。しかし表情に変化はない。


「かしこまりました。それでは瞬間移動テレポートしますので、ご準備ください」

「お前ら準備は良いか?」

「…」


 無言の主はスレイン。対して


「はい」


 こう答えたのはファイン。


 そして後ろに控えるハンニボルにこう言う。


「行ってきます、パパ」

「それでは出発します」


 青い仮面を被ったアフトザフトがそう口にして間もなく、一行はべッジハード王城の正門の前に到着した。


 するとカムイは驚いた表情を見せこう言う。


「これが王の城だと!?なんとちんけな!」


 そのカムイの発言にファインが同調する。


「全くです。我がシュライド王城シグレノンとは雲泥の差です」


 そのシュライド陣営の発言に珍しくアフトザフトが待ったをかけた。


「確かにシュライド王城シグレノンは我がベッジハード王城よりも豪華絢爛で御座います。しかしその様な言種いいぐさは少々不快なので、やめて頂きたく存じます」

「なんだ貴様、カムイ様に向かってその口草は...」


 ファインが続きを言おうとしたが、カムイが制止する。


「すまない。我が城の方がお前の所の城より、遥かに豪華絢爛であったから思わず鼻で笑ってしまったわ」


 アフトザフトは拳を握りこう言った。


「ご理解頂き有難う御座います」


 そうこうしているとナイトメアがシュライド陣営を正門まで迎えに来た。


「遠路はるばるよくぞおいでくださいました。ベッジハード帝國将軍兼外交官のナイトメア・フリッツと申します。以後お見知り置きを」

「おお!!白い仮面の思念体ではないか!!!久しいな、今日こそ共に酒を飲もうぞ!!!」


 ナイトメアは苦笑いしてこう言った。


「えぇ..宴会の席では宜しくお願いします...」


 ナイトメアとカムイがそんな会話をしている所にアフトザフトがぎこちなさそうにナイトメアに喋りかける。


「ナイトメア様、申し訳ないのですが、この後の指示を頂きたく存じます」

「あ、すまんな。言うのを忘れていた。先に待合室に行きメテオ御一行とコルットラー御一行をもてなしてこい。あとどうしたその青い仮面は」

「把握致しました。あとこの仮面はカムイ様のご要望で御座います」

「……そうか」


 そしてアフトザフトはこの場を後にした。


「お待たせして申し訳ありません。それではご案内致しますのでご一緒に来てください」


 そして、ナイトメアはシュライド陣営をベッジハード王城の中に案内し、待合室に通した。


 待合室には、先についていたコルットラー国王のハイドリヒらと、メテオ国王ファンドらがいた。


「あなたがシュライドの王、カムイ様でございますね。私が憲政メテオ連邦の王、ファンドにございます。どうぞ、よろしくお願いします」


 ファンドはつらつらと口上を述べた。心はこもっていない。


「お前がファンドか。王としての威厳をこれっぽっちも感じんな。こんなやつが王でメテオはもっているのか?」


 カムイは相変わらずである。ファンドは黙っていたが、後ろのキースが怒りをあらわにしていた。


「なんだあの態度は...」

 

 今にも抗議に行きそうなキースをイーブルが制する。


「落ち着け、ここでこじらせても良いことはない。陛下の我慢を無駄にする気か?」


 キースは渋々引き下がったが、怒りが消えたわけではなかった。



「お初にお目にかかります、私がコルットラーの王、ハイドリヒでございま_」

「貴様らのような小国と話すことなどない」


 カムイはハイドリヒの言葉を遮った。なんと横柄な輩だ、とハイドリヒも思ったが、国力がないのはその通りであるため、何も言い返せなかった。


 ベッジハードを除く三国が初めて集まった場であったが、カムイのせいで場の空気は最悪となった。


(はぁ..だからシュライドは呼ばない方が良いと言ったのだ...)


 ナイトメアは心の中で呟いた。


 そしてこの最悪の空気の中、待合室にエースとマックスが入ってきた。


「ようこそ、皆様おいでくださいました。私がベッジハード大帝國皇帝、エース・バジリスタです。今日は生誕祭の前夜祭ですので、皆様楽しんでください」

「お主がベッジハードの皇帝か、男だと思っていたが、女だったとは、これは腰抜けだな」


 その場にいるベッジハード陣営は皆拳を握り我慢するしかなかった。マックスやナイトメアは今すぐにでもカムイを惨殺したかったが、そんな事をすれば大戦争になりかねない。そう思い仕方なく、思い止まる。


「...そうですか、それでは各国ごとにお部屋を用意させて頂きましたので、お食事の用意ができるまで、そちらでお待ちください」


 それに意気揚々とファンドが礼を言う。


「はい、分かりました。態々お気遣い有難う御座います。今日は楽しませて頂きます」


 それに続いてハイドリヒも礼を言う。


「エース陛下、態々ここまでの振る舞い本当に有難う御座います。感謝の極みです。今日は存分にくつろがして頂きます」


 そう言って各陣、ベッジハード王城の召使いに案内され部屋へ向かった。しかしシュライド陣営だけは何も言わずに部屋へと向かった。初めて四強が揃った今日こんにちは険悪な日であったと記録されるであろう。

LASTDAY44話「険悪な日」をご覧頂き誠に有難う御座います。今後もご愛読の程、宜しくお願い致します。

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