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LASTDAY  作者: 杉田健壱楼
二章 平穏
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三十八話 虐殺

「嘘ってなんで...」


 クロノスが続きを言おうとした時、イルゼがクロノスの口を塞いだ。


「そりゃ、ナイトメアをこの部屋から追い出す為だよ」


 一方その頃ナイトメアはと言うと、イルゼに言われた村に向かっていた。


 しかし、ナイトメアは村に行った事がない為、瞬間移動テレポートが使えない。その為、瞬間移動テレポートで行ける所まで行き、そこから獣人形態となり向かっていた。


「あれがイルゼの言っていた村か」


 ナイトメアが村に到着すると、同時に何人かの村人が姿を現した。


「あの金髪で色白、青い瞳はメテオの民だな。ということはここはメテオ領、あまり長居したくはないな」


 すると一人の若い女の村人が喋りかけてきた。


「あの、貴方はどちら様でしょうか?」

「私はベッジハード大帝國将軍兼外交官のナイトメア・フリッツだ。村長と話がしたい」


 ナイトメアがそう言った瞬間、村人がどよめいた。


「これはこれはベッジハード帝國の将軍様がよくぞ、こんな辺境の地にいらしてくださいました。私が村長のミリア・アンサンブルと申します。ご用件は何でしょうか?」

「ここに、鏡の玉髄(ミラーカルセドニー)と呼ばれている鉱石があると聞いて来た。あるならさっさと出せ」


 鏡の玉髄(ミラーカルセドニー)とは透明で強固な美しい六角柱状の水晶の非常に細かい結晶が網目状に集まり、緻密に固まった鉱物の変種である。


鏡の玉髄(ミラーカルセドニー)...ですか?私共の村でその様な鉱石は保有しておりません。何か勘違いをされているのでは?」

「無いだと...それは本当か?」

「はい、そもそも私共は鏡の玉髄(ミラーカルセドニー)という鉱石ですら初耳で御座います」


 ナイトメアは大きく溜息をついた。そしてイルゼに対して思念伝達メッセージを行使したが、イルゼに反応はない。


「あのクソあま!!俺を騙したな!!ただでは済まさんぞ!!」


 しかしナイトメアは突如として冷静になった。村人達は勿論困惑している。


「おい、お前達は本当に虚偽の報告をした訳ではないのだな?」


 ミリアと村人は混乱しながらも首を縦に振る。


「なら試してやろう」


 そう言ってナイトメアは魔法陣の中から天秤を取り出した。


「これは最後の審判と言って、世界に十個しかない貴重な、魔道具マジックアイテムだ。対象者が真実を言っているか否かを正確に判定できる。嘘をついていた場合、分かるな?」


 ミリアは冷静に対応する。


「はい」

「では判定を開始する。始めろ」


 ナイトメアがそう言った瞬間、両方の天秤にミリアの物らしき心臓が出現した。流石にこれにはミリアも慌てふためく。


「ナイトメア様!!これは...」

やかましい、黙って見てろ」

「因みに判断基準は...」

「黙って見てろと言ってるのが分からんのか。まぁ良い、教えてやる。右に傾けば真実、左に傾けば虚偽だ」


 天秤は左右に揺れ、周りの村人達は何かに祈ってる様に見えた。そして天秤は右に傾いて動きを止めた。


「ほう。嘘ではなかったか」


 緊張から解放された村人達は、一安心した様に膝から崩れ落ちた。


「疑って悪かったな」


 ミリアは安堵の表情を浮かべながら答えた。


「身の潔白を証明できて何よりです...」


 しかしこれではナイトメアの気が収まらない。ここでナイトメアは良い事を思いついた。メテオの民を殺せば多少の鬱憤うっぷんらしができるのではないかと。


「おい、村長。一つ聞いても良いか?」

「なんで御座いましょう?」

「私が星帝戦争でアルバートを殺した。そう言ったら貴様は私を信じるか?」


 ナイトメアがそう言った瞬間、周囲の村人から途轍(とてつ)もない憎悪の視線が飛んできた。


(よしよし、村人共はちゃんと怒っているな。これで村人の一人か二人が俺に攻撃してきてくれさえすれば、正当防衛で村人達を殺せる。このままでもいい鬱憤うっぷんらしだが、美男美女は奴隷として捕縛しよう。魔力保有量が多いメテオの民は高く売れるんだ。そして生誕祭の時、カムイや各国の将軍、貴族に売ってやろう。その時のイーブルの顔が目に浮かぶわ、嗚呼愉快愉快)


「...ナイトメア様、それは本当なのですか?」

「ああ、本当だ。私が殺した」


 周りの村人は激怒し今にもナイトメアに襲いかかりそうだ。しかしミリアは違った。


「それが事実なのであれば...確かに我々メテオの民からしてみればナイトメア様は憎悪の対象です。しかしアルバート様の死は戦争によるものです。戦争は互いに血を流し、命を賭け、祖国の為に戦う。それが戦争なのです。現にアルバート様も沢山のベッジハード兵を殺しています。ベッジハードの国民からすれば憎悪の対象でしかないでしょう。ですから今後は互いを憎悪するのではなく、認め合い、親しみ合っていくべきだと考えます」


 ミリアの言っている事は正論である。しかし周りの村人達はそうもいかない。


「村長!!それは違う、あんたには愛国心がないのか!!そいつは決して許してはならない!!村長がやらないなら、俺達がやってやる!!」

「そうだ!!そうだ!!!」

「皆さん待ってください!私は愛国心が無いのではなく...」

「喰らえ、炎の球(ファイアーボール)!!」


 ミリアの静止も虚しく、村人はナイトメアに攻撃してしまった。


「戯けが、こんな低位の魔法、私に効くか」


 そしてナイトメアは自分の手を実体化させ、ミリアの心臓を一突きにした。それと同時にミリアは血反吐を吐いた。


「私が憎いのだろう?別に構わん。当然だ。自国の王の仇だからな。しかしお前達から攻撃を仕掛けたから、これは正当防衛だな」

「どうか村人達だけは...」


 そう言ってミリアは絶命した。


「ミリア・アンサンブル、貴様の勇気ある行動と言動に敬意を表し、名前を覚えておいてやろう。しかし最後の願いは却下だ」


 ナイトメアはミリアの亡骸を地面に叩きつける。


「ふざけるな!!よくも村長を!!」


 村人達はナイトメアに襲いかかってくる。中には逃げ出す者もいたがナイトメアは見過ごさない。


「下衆共が、どれだけ集まっても無駄だ」


 そう言ってナイトメアは周囲に暗黒物質ダークマターをばら撒いた。


 別にナイトメアは暗黒空間ダークネスを行使しても良かったのだが、メテオの民如きに魔力を使いたくなかったのだ。


 追伸になるが、暗黒物質ダークマターは生物にとって有害であり、体内に入るとその生物にとっての辛い記憶を蘇らせ、事によっては発狂死させるという作用を持っている。並の生物ならこれだけで死ぬのだ。


「なんだ、何も見えない!!」


 村人がそう叫んだ途端だった。村人達は急に悶絶し、次々に倒れていった。


 ナイトメアは最初にナイトメアを襲った村人の頭部を掴み、持ち上げ、こう言った。


「最初の威勢はどうした?所詮はメテオの民か、この下衆の悶え苦しむ姿をイーブルが見たら...おぉ...考えただけで興奮するではないか!!」

「ギャァァァァァ...!!!嫌だ!!助けて!!」

「黙れ」


 そう言ってナイトメアはその村人の頭を握り潰した。


「やはり殺しは獣人形態の方が良いな。暗黒物質ダークマターで殺すのも悪くないが」


 そう言ってナイトメアは暗黒物質ダークマターを体内に戻した。


「さあ、残りは...」


 ナイトメアが残りの村人を始末しようとした時、ナイトメアの背後から少女が現れ、木の棒でナイトメアを叩いた。がしかしナイトメアには当たらない。そして少女はナイトメアに捕縛された。


「まだ、子供なのに可哀想に...楽に殺してあげよう」

「お父さんとお母さんを返して!!」

「そう泣き叫ばないでくれ...女の叫び声は耳が痛くなる...耳は無いが」


 そう言ってナイトメアは少女の首をへし折った。


「逃げた村人は私の分身体が喰い殺すだろうから良いとして、次は家の中か...」


 そうしてナイトメアは数軒の家に入ったが家はもぬけの殻だった。


「やはり皆逃げ出したか」


 そして最後の一軒にナイトメアが入った時、そこには一組の夫婦とその夫婦に抱かれた二人の赤児がいた。


「どうか、どうかこの子達だけは、お助けください!!まだ赤ん坊なんです!!」

「私達はどうなっても構いません!!」

「姉弟か?」

「はい」

「流石の私も赤児を殺す趣味はない。良かろう。その願い叶えてやる。別れの言葉を言え」

「ミカエル、元気に生き抜いて、良い子に育つんだぞ」

「カスパー、お姉ちゃんの言う事を聞いて、立派な男の人になるのよ」


 そしてナイトメアは夫婦の心臓を一突きにして殺した。しかし、その夫婦は笑顔だった。


「メテオの民に情をかけるとは、私も優しくなったものだな」


 そう言ってナイトメアは赤児達をかかえ家を出た。家の前にはナイトメアの分身体が美男美女を捕縛して待機していた。


「おお、良い感じの美男美女が集まったではないか。しかし我ながら私の獣人形態はいい見た目をしている」


 その後ナイトメアはその村に火を放ち、その場を後にした。

LASTDAY38話「虐殺」をご覧頂き誠に有難う御座います。

今後も御愛読の程宜しくお願いします。

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