三十五話 許諾と過去
ナイトメアはクロノスに連れられて、自室へと向かっていた。2人の足取りは重い。普段なら何か会話が生まれるはずなのだが、今日の2人に会話はない。
部屋に着いて、ようやくナイトメアが重い口を開いた。
「俺は...」
「ナイトメアは何も喋らなくていいし、何も考えなくていいよ。私はちょっと陛下のところに行ってくるから」
「ま..待ってくれ...」
「陛下と話さなくちゃいけないから。ごめんね」
そう言ってクロノスは部屋から出て行ってしまった。ナイトメアは怒らなかった。ただ、悲しかったのだ。自分はクロノスからも見捨てられてしまったのか。そう思うと、もう自分がどうしていいかわからない。
そしてクロノスはエースの自部屋へ向かった。
「失礼します、陛下」
そう言って、クロノスはエースの部屋に入った。そこに居たのは私服でお茶を優雅に飲みながら椅子に座っているエースの姿だった。
「貴方もそこに座りなさい」
エースがそう言うとクロノスは黙って椅子に座った。
「ナイトメアの件なのですが...」
「分かっています。特にこれと言った罰を与えようとは思っていません」
クロノスはとても嬉しそうにこう言った。
「あ、有難う御座います!!この御恩一生忘れません!!」
そう言ってクロノスは深く頭を下げる。
「頭を上げなさい。しかし貴方と出会ってからナイトメアは変わりましたね...」
「エース陛下、以前からお聞きしたかったのですが、ナイトメアは私に自分の過去を教えてくれないのです。ですから教えていただけないでしょうか?」
エースは少し間を空けて答えた。
「分かりました、私の知る限りナイトメアの過去をお話ししましょう」
「お願いします」
「ナイトメアとの出会いは17年前−」
エースが語り出した。
「ファング陛下、お呼びでございましょうか」
「よくきたな、エース。単刀直入に言おう。余の隣にいる思念体を弟子にしてほしいのだ」
エースは顔を曇らせた。弟子など面倒なものを引き受けたくはない、ましてや力の底がわからない思念体などはごめんであった。
「どうした?引き受けてはくれぬか?」
その顔を見てか、ファングの声は怒気をはらんでいる。断ることは許さない、そう言いたげだ。
「...わかりました、お引き受けいたします」
「おお、引き受けてくれるか!では、もう下がって良いぞ」
追い返されるようにエースは玉座の間から退出した。もちろん思念体も一緒である。
「押しつけられる形でナイトメアを弟子にしたのですか...色々と災難でしたね」
「ええ、本当に。ですが、ナイトメアと出会えたことはよかったですね」
「それで、ナイトメアに稽古をつけていた時、彼はどんな風でしたか?」
「ええ、本当に彼はわがままでしたよ−」
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