表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LASTDAY  作者: 杉田健壱楼
二章 平穏
35/92

三十三話 一時の辛抱

 ナイトメアとファインは現在、神聖シュライド王国の王都に徒歩で向かっている。


「シュライド領に入りました、王都まであと少しです」


 ファインは不機嫌そうに言った。


「ほう...シュライド領というわりに、開拓がほぼ進んでおらず、周辺の村は人の住んでいた気配はあるものの荒れ果てている。何かあったのか?」

「ここら周辺の村はヒューヤ教徒が集住していて、偉大な王カムイ様に不敬にも牙を向いたのです。当然の報いとして弾圧しました」

「成る程、理解した。しかし客人である私をいつまで歩かせる気だ」


ファインが誠意の全くこもっていない謝罪をする。


「申し訳御座いません。ここら一帯は陸と空に、罠魔法トラップと結界を張っております。なので馬車や飛行魔法フライは使えないのです。お帰りの際は瞬間移動テレポートを使えるよう手配しておきます」

「はぁ...その程度の前準備ぐらいしておいて欲しいものだがね」


 そうこうしているうちに、ナイトメア一行はシュライド領の森林を抜けた。


 そして目の前にベッジハードより豪華な王都が現れる。これには流石のナイトメアも腰を抜かした。


「な...なに...!!周辺があんなに荒れ果てているのに、王都だけ異様に豪華絢爛ではないか...」


 ファインが冷静に解説する。


「我が国は完全な実力主義。お金と優れた才能、そしてカムイ様への忠誠心がある者のみがこの王都で暮らせます。逆に、これらがない者は王都には住めません。特に忠誠を誓わない者は、森に放置されるか、奴隷にされます。これに反抗する村々はことごとく弾圧されるため、最近では反乱も起こらなくなりました。カムイ様の見事な政治体制の賜物です」

「ほう、そうなのか」


 ナイトメアに話を聞く気などは全く無い。ナイトメアはシュライドの内政など、どうでも良いのだ。


「そんな事より、早く王城に案内してくれ」

「着きました、ここがシュライド王城[シグレノン]です」

「分かったから、さっさと案内しろ」

「ちっ、思念体の分際で...」


 ファインはナイトメアに聞こえない様に呟いた。


「何か言ったか?」

「いえ、何も」


 こうしてナイトメアはファインに連れられ、王城へと入っていった。王城の内装は最早、豪華絢爛という言葉では収まらないほど豪華だった。


「カムイ殿下、入らせていただいてもよろしいでしょうか」


 ファインが玉座の間の扉の前で言う。


「構わん、入れ」


 ファインが 、自身の身長より一回り大きい、過剰に装飾が豪華な扉を開ける。


「こ、これは...」


 ナイトメアは絶句した。何故なら目の前にいるカムイは、ベッジハードの使者が来ているのにも関わらず5、6人のあられもない姿の絶世の美女達を囲いながら、玉座で酒を飲み交わしているのだから。


「お連れしました。こちらがべッジハードの使者の方です」

「よく来た、ベッジハードの犬よ!私は神聖シュライド王国、国王カムイ・エアハルトだ」

「歓迎有難う御座います。私はベッジハード大帝國将軍兼外交官のナイトメア・フリッツと申します。以後お見知り置きを」

 

 この時点でナイトメアは激怒寸前だった。


(なんなのだ、この態度、こっちが下手に出てやってるのを良い事に...)


「ナイトメア・フリッツ...何処かで聞いたことのある名だな...

待てよ....あぁ!!思い出した!!!確か前にうちのオリジンに負けた奴だな!!!」


 猛烈な嫌味である。隣のファインも薄く笑った表情をしている。そしていつの間にかファインの隣には魚をくわえた男がいる。


「...えぇ、そうで御座います...

私の隠し玉であった血の女王(ブラッドクィーン)をオリジン殿によって破壊されてしまいました」

「そうだろう、そうだろう!オリジンはファングやアルバートでさえも不意打ちとは言えど一撃で倒した血の女王(ブラットクィーン)を破壊したのだ!!うちのオリジンは最強だ、ハァハァハァ!!」


 ナイトメアは失笑した。


「ハハハ」

「貴様中々に話がわかるではないか。気に入った!で、本題はなんだ?」


 この時ナイトメアは内心こう思った。


(黙れ、下種、これ以上臭い息を吐くな、汚らわしい、いつか生きている事を後悔させてやる)


「以前お出しした手紙にも書いたように、休戦協定を結ぶ為そしてベッジハード生誕祭の招待に参りました」

「休戦協定?ああ、貴様等がいきなり[ベッジハードに従属せよ]という手紙を送りつけて始まった戦争だな……良かろう!貴様の先程の態度に免じて結んでやる。感謝するが良い」


 ナイトメアは内心こう思った。


(...ん?[ベッジハードに従属せよ]という内容を書いた手紙を出した記憶は無いぞ、まさか私以外の誰かがシュライドに挑発目的で送りつけたか、あるいは....しかしなんだこの魚をくわえた男は!全く集中して考えられんではないか!)


「感謝の極みで御座います。そして生誕祭については...」


 カムイが即答する。


「勿論参加させてもらおう」

「分かりました。各国3人まで参加ですので、宜しくお願い致します。では私はこれで失礼致します」


 ナイトメアが早々に立ち去ろうとしたその時、

カムイが叫ぶ。


「おい、待て!」

「なんでございましょうか?」

「そう慌てずとも良いではないか、今日は我々の親睦が深まった日。この後宴でもしようぞ!良い女もいるぞ?」

「いえ、お気持ちだけ受け取っておきます...私はこの後多忙ゆえ、失礼致します」


 この時ナイトメアは内心こう思った。


(こいつ気分屋だな...さっきまで私を愚弄していた癖に...都合のいい奴め)


「そうか、ではまた生誕祭で会おうぞ」

「はい、では失礼致します」


 そう言ってナイトメアは瞬間移動テレポートでベッジハードへ帰還した。帰還後ナイトメアが激怒し大暴れしたのは、また別の話である。 

LASTDAY33話「一時の辛抱」をご覧頂き誠に有難う御座います、お気に召して頂ければブクマ登録や感想を宜しくお願いします、レビューなども随時お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ