三十二話 シュライド領
現在ナイトメアは各国に使者を送る為の準備をしていた。
「アフトザフト、お前にはローゼと共にメテオに使者として出向いてもらう」
「分かりました、その他国々は誰が行かれるのでしょうか」
ナイトメアは深く溜息をつきこう言った。
「コルットラーはマックス、シュライドは俺だ...」
「...え?ナイトメア様がシュライドに行かれるんですか?」
「エースに命じられてな....理由は聞かないでくれ....」
アフトザフトは全てを察した顔でこう言った。
「ご愁傷様です」
ナイトメアは怠惰な感情を剥き出しにして、アフトザフトに指令を出した。
「ローゼとマックス達はベッジハードを出発して、既に各国々に向かっている。私も、もうここを出る。お前はローゼと合流せよ」
「御意」
ナイトメアは一人でベッジハードを出た。しかしナイトメアはシュライド王国に行ったことがない為、瞬間移動が使えない。その為、ムール大陸の地図を見ながら、獄炎骨馬が引く豪華な馬車で移動していた。
「この大陸の南方に来るのはなんだかんだ言って初めてだな。しかしなんだ、この道は、もうすぐシュライド領だと言うのに全く整備されていないではないか。指導者が指導者だから仕方ないか」
そんな事をナイトメアが言っていると馬車の馭者がナイトメアに喋りかけてきた。
「ナイトメア様、もうすぐシュライド領です」
「報告感謝する。お前も身構えておけよ。相手は蛮族、何をしてくるか分からんぞ」
「注告、感謝致します。しかし要件を書いた手紙を出されたんですよね。なら迎えが来てもいいはずですが」
「そうだな、しかし迎えもよこさんとは...」
そんな会話をしながら馭者が馬車を走らせていると、目の前に一人の人間でいう12歳くらいのローブを纏った少女が現れた。
「危ない!!」
馭者がそう叫ぶと馬車を緊急停止させた。
「何事か」
「子供が飛び出してきまして...」
「子供とは失礼な!!こう見えても私は大人です!!!」
その少女がそういうと、ナイトメアは馬車から飛び降りた。その隣には青年もいる。
「お嬢ちゃん、名前を教えてくれるかな?」
「だから私は子供じゃない!貴方達を迎えに来んです!!」
「それはどういうことかな」
「この子は神聖シュライド王国カムイ親衛隊隊長、ファイン・ルールです。この子と属州管理官の私、バニカ・ルールでお迎えに参りました」
「その見た目で親衛隊隊長とは、人は見た目によらぬ者だな」
「なん…なんでもありません」
馭者は慌てふためいている。
「ああ、すまん、お前はもう帰っても良いぞ」
「わ、分かりました」
馭者はそう言ってベッジハード帝國に帰って行った。そしてナイトメアがファインに話しかける。
「ここに来た理由は手紙でも伝えた通りだ、早急にカムイに会わせろ」
「分かってます!さあ王都まであと少しです。すぐに向かいます」
ファインは少し不機嫌そうである。恐らく子供と言われた事が癇に障ったのだろう。
そう言って二人は王都に向かった。
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