三十話 真っ向勝負
「さぁ、かかって来い」
ナイトメアがそう言った瞬間、リンがナイトメアに攻撃を仕掛けた。
「五極連斬!!!」
「何!?」
ナイトメアは何が起こったのか一瞬理解できなかった。それもそのはず、五極連斬はヤマトが使う技で、リンが使えるはずがなかった。
しかし、ナイトメアが焦ったのは一瞬だった。リンは物理攻撃有効化の技術を持っていない。
「!?」
ナイトメアの体は傷ついていた。五極連斬のせいであろうか、ナイトメアは記憶をたどった。しかし、五極連斬はただ敵の近くに瞬間移動して5回斬りつけるだけの技で、物理攻撃有効化がついていた記憶はない。
「リンめ...まさか物理攻撃有効化を取得していたとは...これは少々本気を出さねばならぬようだな」
ナイトメアは暗黒空間を使って体制を立て直そうとしたが、間に合わない。
「雷鳴斬!!!」
ナイトメアは寸前で見切った。
「流石に暗黒空間を使う隙を与えてはくれんか」
そう言い、ナイトメアは獣人形態に姿を変えた。
「ならば真っ向勝負だ。来い」
ナイトメアは獣人形態へと姿を変えた。肉弾戦に持ち込むつもりなのだ。
「そうこなくては面白くありません...!五極連斬!」
ナイトメアはやすやすとかわした。
「ふん、五極連斬を使うことが分かっているなら、どうってことはないな!」
ナイトメアはそう言いつつ、拳をくらわせた。鈍い音がして、リンが吹き飛ばされる。
「くっ、強い...」
ナイトメアはその後、一切の隙を見せることはなかった。リンが体制を立て直し、死角から攻撃しても、ナイトメアはその全てを見切ってみせた。
リンは血を吐きながらなおも戦い続けた。しかし、万全の状態で勝てなかったナイトメアに、満身創痍のリンが勝てるわけがなかった。
「もうすでにお前は戦えぬであろう。ここらで打ち切りだ」
「.......」
リンは何も言わなかった。疲れ果て、喋る体力すら惜しいのだ。
「しかし、強かった。私に本気を出させたのだからな」
本来であれば、リンは飛び上がって喜ぶところだが、そんな力は到底残っていない。
その言葉を聞いたすぐ後、リンは倒れてしまった。
「メイ、キマイラの元へリンを運んでくれ。少々やりすぎてしまった」
「は、はい、本日は私達の相手をしてくださって、ありがとうございました。では失礼します」
メイは急いでリンをキマイラの元へ運んだ。
キマイラは、ベッジハード帝國の神官戦士である。治癒魔法を得意としており、ベッジハードの重臣達からの信頼も厚い。彼女がいるからこそ、ベッジハードは無茶な戦争を仕掛けられるのだ。
ナイトメアも自室へと戻った。生誕祭の構想と、そこでの演説内容を考えなければならなかったのだ。
生誕祭は国の士気を上げるため、またベッジハードの武威を示すための重要な式典である。失敗するわけにはいかなかった。
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