二十九話 直談判
それからしばらくして、メテオに来客がやってきた。コルットラー王国の者達である。
「先日は余の体調が優れず、折角イーブル殿が来てくれたのに応対できず申し訳なかった」
申し訳なさそうにコルットラー国王は述べた。名をヘルマン・ハイドリヒという。
「いえ、過ぎたことです。我らは共に助け合わなければなりませんから、そんなことを蒸し返しても何にもなりませんよ」
ファンドはにこやかに応答した。
そのまま速やかにコルットラー王国と憲政メテオ連邦の同盟が結ばれる。
そんなことを意にも介していないのがベッジハード帝國である。
メテオとコルットラー王国が同盟を結ぶ少し前に帰ってきていた、マックスはエースに向かって怒りをぶつけていた。
「ふざけるな!!お前は俺をなんだと思っているのだ!!お前は俺の力を信用していないのか!俺一人の力で西の地方など容易に統一できた!お前はなぜコルットラーなどと言う小国を従属させたのだ!」
マックスは物凄い剣幕で玉座の間に入ってきた。その場にいた近衛兵達は恐れ慄き、失神してしまった。
「いきなりなんですか、固有技術[恐慌]を無意識下に発動するとは貴方らしくもない。私が貴方の力を信頼していないわけがないし、なぜそこまでコルットラーを従属させたことを怒っているのですか?私達が統治するよりも今までそこで統治してきたコルットラーが統治した方が民達も暮らしやすいでしょう。それにあくまで従属です。ベッジハードの臣下となんら変わりません。何が不満なのです?別に戦えなかったわけではないでしょう?」
マックスは更に憤慨した。
「エース...俺には誇り高き鬼王としての誇りがあるのだ!!これではまるで、俺がコルットラーの力を借りなければ勝てなかったみたいではないか!!ましてや統治だと従属だと?笑止千万!!統治などせず支配すればいい、あんな小国は搾取できるだけ搾取して捨てればよいのだ!!」
「なぜそのような理論になるのか理解に苦しみますね。コルットラーの力を借りなければ勝てなかったみたいだ?誰もそんなこと思いませんよ。むしろ、コルットラーの方がマックスの力を借りて勝ったのだと周りは認識しているはずです。それに、搾取だけをしてもいずれ資源は尽きます。だから従属させ、統治してもらって発展するのです。恐怖政治を行えば国は滅びます。我々は和を以ってこの大陸を支配せねばなりません。貴方のように短絡的では、私達はいずれ喉元を掻っ切られますよ」
マックスはなおも怒りをぶちまけていたが、エースがそれに反論することはなかった。
10分ほど怒りをぶちまけて腹の虫がおさまったのか、マックスは最後に「理解できんな」とつぶやいて玉座の間を出て行った。
一方その頃ナイトメアはベッジハード王城地下10階層の闘技場にいた。
「リン、メイ、わざわざ休日なのに闘技場に来てもらって悪いな」
そうナイトメアが言った先にはリン・アルサラードとメイ・メイソンがいた。そして2人はナイトメアの元に駆け寄ってきた。
「ナイトメアさま〜どうなされたんですか?」
リンとメイが口を揃えて言う。
「お前達はそろそろバイオレットによる教育期間が終わる。それが終われば私の直属の部隊に加入することになるだろ?その前にお前達の力量を見ておきたいのだ」
リンとメイは目を輝かせながらこう言った。
「本当ですか!!という事はナイトメア様がお相手してくださるんですか!!」
「ああ、私が二人とも同時に相手をする。しかし、お前達と私とでは実力差がありすぎる。だから、私からはお前達に攻撃はしない。しかし、お前たちでは私に触れることができん。獣人形態になってやるから、私を殺す気でかかってくるがいい」
「はい!!分かりました!!」
かくして、ナイトメアとリン、メイの戦いが始まった。
「では、行かせて貰います!!雷鳴斬!!!」
凄まじい速さでリンはナイトメアの上空に上がり剣技を繰り出す。ナイトメアは剣に空を切らせた。
「遅い、まだまだ修行が足らんな」
ナイトメアがそう言った瞬間だった、メイがナイトメアが気付かぬ内にナイトメアの間合いに入り、魔法を繰り出そうとしていた。
「ご覚悟!!爆裂!!!」
「何!!ならば、暗黒空間!!」
ナイトメアがこう言った瞬間、闘技場一体は暗闇に包まれた。それと同時にメイの放った爆裂が爆発した。
「やった...?」
二人が口を揃えて言う。
「危なかった…危うく死ぬ所だった」
二人が凄く嬉しそうにナイトメアに言った。
「本当ですか!?」
「ああ、いい連携だった。わざとリンに雑な攻撃をさせて、私を油断させた後にメイが私に気付かれぬ様、間合いに入れる様になったとは成長したな。しかし上位魔法である、爆裂を使える様になっているとは...バイオレットから何も聞いてないぞ」
「それは、バイオレット先生に頼んだんです、ナイトメア様にこの事を報告しないでくださいって。自分の口で報告したかったんです」
「成る程...関心、関心」
ここでリンがナイトメアに頼み事をした。
「ナイトメア様、今度は私の本気を見てください!!私一人で構いませんから!!!」
確かに先程の戦いではメイの全身全霊の攻撃である爆裂をナイトメアに披露する事はできたが、リンはただ雷鳴斬を使っただけである、まだ全力の一撃をナイトメアに披露できていない為、不服なのであろう。
「良かろう、ルールは先程と同じでいいな?」
「一つ変更して欲しいところがあります」
「なんだ、言ってみろ」
「ナイトメア様には本気で戦って頂きたいのです。ナイトメア様にこの技がどこまで通用するか見てみたいのです」
ナイトメアが驚いた様子で問い返す。
「本当に良いのか?」
「お願いします」
ナイトメアとリンの一騎打ちが始まろうとしていた。
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