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LASTDAY  作者: 杉田健壱楼
一章 戦乱の世
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一話 意志の勝利

 このムール大陸を20年以上治めていたドミニオン王国に破滅の時が来た。


 事の発端は国王ファングが部下ドラゴン・ザ・レフトに傀儡化されたことにある。ドラゴンの目的は国家を私物化することであった。ドラゴンはまず、自らに反抗する勢力の弾圧を始めた。


 まず矛先となったのはナイトメア・フリッツという男である。ナイトメアはドラゴンの目的を察知しており、ファングに再三ドラゴンを重用してはいけないと諫言かんげんしていたため、ドラゴンは邪魔だと思っていたのである。ナイトメアは王都へと呼び出され、ファングの暗殺計画をしていたという罪を着せられ追放を言い渡された。しかし、これに待ったをかけた人物がいる。ファングの右腕として長く活躍したエースという女である。


「待ってください!ナイトメアがそんなことをするわけがありません!」


 ドラゴンはまさかエースから反対されるとは思っておらず、内心動揺したが、落ち着いて反論する。


「ファング様、騙されてはいけませぬ。此奴らは結託してファング様の命を虎視眈々と狙っておるのです。とても許されることではありません。エースも国賊ということがわかった今、迷うことはありませぬ。この際二人まとめて殺してしまいましょう」


 無茶な理論だ。エースもナイトメアもそう思ったが、ファングは違った。ファングはドラゴンに騙されており、全面的にドラゴンを信用しているのである。


「其方の言う通りだな。此奴らは余の命を狙う国賊よ。さっさとここから去るがいい。貴様らのような国賊はドミニオンにいらぬ。出て行け」

「待ってください、今すぐ此奴らを殺すべきです」


 ドラゴンはそう進言した。生かしておけばのちの災いになる、そう思ったのである。


「此奴らの汚い血で帝都を汚したくはないのだ。ドラゴンよ、別に此奴らは殺さずとも何もできぬよ」


 ドラゴンは引き下がるしかなかったが、エース、ナイトメアは違った。


「そんな理論がまかり通ってたまるか!ファング様、騙されてはなりませぬ。国賊はドラゴンの方でございます」


 ナイトメアは言い返すが、ファングは聞く耳を持たない


「黙るがいい。その声も顔ももう余に見せるな。国賊めが」


 エースもナイトメアも呆れ果てた。このまま引き下がりたくはないが、食い下がってもどうにもならなそうに思えた。


「行きましょう。ナイトメア、何を言っても無駄です」


 そうしてエース、ナイトメアはドミニオン王国から追放された。しかし、ただ引き下がったわけではない。エース、ナイトメアはドミニオン王国にいた同僚達に呼びかけ、反乱軍を組織し、シュテュルマー丘に本陣を置いた。このシュテュルマー丘からはドミニオン王国が一望できるため、奇襲には最適だ。


 反乱軍にはそうそうたる者達が集まった。


「これだけの軍があれば...ファングには悪いが、ドラゴンの統治ではこの国は間違いなく終わる。国を守るための戦いなのだ」


 ナイトメアは自分にそう言い聞かせた。ドラゴンにはなんの思い入れもないが、やはり王には感謝の気持ちがあった。


「迷いは今のうちに捨てておくことだ。迷いの念が少しでもあれば勝てる戦でも負けるぞ」


 こう言ったのはマックスという男である。マックスとエースはナイトメアの師匠である。


 エースとナイトメアが追放されたと知り、抗議しに行ったが王都に入れてもらえず、王国に対する不信感を募らせていたため、反乱軍には二つ返事で参加した。彼が参加したことにより反乱軍の規模は飛躍的に大きくなった。マックスは皆から慕われていたのだ。


「そうだな、ありがとうマックス。今日のうちに迷いは捨てておく」


 そんな会話をしていた矢先、エースが号令をかけた。


「皆の者!!ファングはドラゴンに誑かされ、地に落ちました。もはや彼に国を治める能力などありません。これからは私がこの大陸の統治者となるのです。この国は私によって生まれ変わります。皆私についてきなさい!この戦いはこの国と、私達の命運がかかっています。皆、心してかかりなさい!」


 一気に歓声が起こる。皆、エース以外にこの大陸を統治する者はあり得ないと思っているのだ。そして進軍が開始される。のちに、帝國大反乱と呼ばれる大戦の幕開けである。


 ドラゴンは肝を冷やした。まさか、これだけの規模の反乱軍が押し寄せてくるとは思っても見なかったのだ。急ぎ、討伐軍を指揮したが、規模は大きくならなかった。力の強い領主達のほとんどが反乱軍に加わっており、数の面でも、また質の面でも討伐軍は大きく劣っていたのである。地方に行けばそれなりに強い領主はいるが、地方からの援軍を待つ時間はなかった。


 ドラゴンは自分が死ぬわけにはいかないと逃走を始める。しかし、現場に集められた国防軍は逃げるわけにもいかなかった。


 国防軍は指揮官なしに戦わなくてはならなかった。そんな状態の国防軍と、意欲に燃える反乱軍とでは士気が違う。次々と戦線は突破され、降伏する者、逃げ出す者まで現れ始めた。


 だが、この快進撃も終わりを告げた。


「全く、貴様らに任せた余がバカだった。結局ドラゴンも逃げたか...あやつも所詮その程度の男だったか」


 そう、ファングが前線に立ったのだ。


「ファングが出てきたか...厳しい戦いになりそうだな...」


 マックスは冷や汗を垂らした。それもそのはず、ファングはたった1人でこの大陸の戦争を収め、力によって王位に立った男だったからである。だが、エースらと力を合わせれば勝てない相手ではない。


 マックスはエース、ナイトメアと共に行動し、ファングに一斉攻撃を仕掛けた。しかし、結果は惨敗と言わざるを得なかった。エースは魔法によって攻撃を仕掛けるが全く効かず、マックスは殴りかかるも片手であしらわれて投げ飛ばされた。ナイトメアは思念体のため、直接ダメージを受けたわけではないが、ファング相手に一切のダメージを与えることができていなかった。簡単に勝てる相手ではない。


 3人は肝を潰した。まさかここまでの実力を持っているとは思っていなかったのである。しかし、ナイトメアには秘策があった。血の女王という技である。影のような物体を操り、これを相手にぶつけることによって血を内部から操作するという技である。操作するのにも多種多様な使い方がある。例を上げるならば血を爆ぜさせたり血を凝固させることである。ただ、ファング相手に当てるのは至難の技であるため、エースらと協力しつつファングの隙ができるのを待つしかなかった。


「くっ..無能とはいえ力だけは衰えておらぬか...」


 吹き飛ばされたマックスはこの一撃だけでかなりのダメージを負っており、とても戦線復帰できるような体ではなかった。


「どうした?余を倒すのではなかったか?」


 ファングは挑発するように言う。


 エースは機転を利かせ、ファングに対して光の魔法を放った。光らせて、周りを見えなくさせるという寸法だ。


「ぐおっ..く...何も見えん...」


 この隙をナイトメアは見逃さない。


血の女王(ブラッドクイーン)!!」


 血の女王が王の体を通過する。それだけでいいのだ。王の体は粉微塵に吹き飛んだ。一つの時代を作った男は部下の反乱によって最期を迎えた


「これからは我らの時代だ!!」


 ナイトメアが叫ぶ。たしかにナイトメア達の計画ではエースが王になり、それで全てが終わるはずだった。エースは王の位を簒奪し、国名をベッジハード大帝國と改名。王政の時代は終わりを告げ、帝政へと移り変わった瞬間である。


 しかし、エースらが反乱を起こしたことで、国家は混乱を極めた。その混乱に紛れて様々な国家が独立していく。


 ナイトメア達の計画は大きく狂い始めた。


 群雄割拠の戦乱の時代の始まりの鐘が今打ち鳴らされようとしていた。

LASTDAY1話「意志の勝利」を読んでいただき誠に有難う御座いました。

そして更に数ある小説の中からこの作品を選んで読んで頂き有り難う御座いました。どうも初めまして杉田です。

この物語が初の投稿となります。

もし誤字や内容に不備がありましたら指摘コメントをしていただけると、とても嬉しいです。

評価や励ましのコメントもとても嬉しいのでそちらの方も宜しくお願いします!ブクマにして頂けたら幸いです。

どうぞ今後も杉田とLASTDAYよろしくお願いします‼️

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― 新着の感想 ―
[良い点] 設定がとてもよく練られていること。戦記ものになるのかな、自分にはなかなか書けないジャンルです。 [気になる点] 話がとっ散らかっている印象。メインの主人公の動きが見えてこない。世界観の説明…
[良い点] 地の文と会話文のバランスが良いなと感じました。 想像しやすく、且つ話が複雑すぎない、そんな塩梅で読みやすいと思います。 世界観設定や人物が多いにもかかわらず上手く書けていることが素晴らしい…
[良い点] 展開の早さ、これは見習いたいものですな……畳みかけるような事象の積み重なりがスピード感を重積していくような、そんな感じを受けましたぞ!
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