十六話 他愛のない話
各国の戦争が終結を迎え一時の平穏な時代が始まる
話を少し前に戻そう。マックスを見送ったナイトメアは直様ベッジハード帝都にある城に帰りエースの所に向かった。
しかしナイトメアが城内で幾らエースを探しても見つからない。
勿論ナイトメアは他の将軍達に聞いて回る。
「おいヤマト、エースの居場所を知らないか?」
「何だナイトメアか、驚かすな。俺はエースの居場所なぞ知らん。今はそれどころでは無いのだ」
「それどころではないとは?」
ここでナイトメアは後悔した。ヤマトに会話を振ると長話になってしまうのだ。
「良くぞ聞いてくれた!!」
物凄い剣幕でヤマトはナイトメアに詰め寄ってきた。
「実のところを言うとな、俺がアルバートとの戦闘時に後遺症を負ったのはお前も知っていただろう?それのリハビリをしていたんだが、さすがアルバートという所か凍傷の後遺症が一向に良くならなくてな、腹が立って仕方ないんだ。それでさっきまで廊下でエリカと喋ってたんだが、その会話の中でエリカの野郎、俺のこの姿を見てデクの棒と言いやがったんだ。ついカッとなってエリカに渾身の一撃を脳天目掛けて喰らわせてやったんだよ。まあ、こんな体ではダメージを与えられないと思っていたんだが廊下に穴が空いてしまってな、廊下で臨戦状態よ。途中でガンツが仲裁に入ってくれなかったら今頃王城は半壊だったかもな、ハハハ!!」
「おいヤマト、貴様ローゼに謝ったのか?」
「ローゼ?ローゼとは誰の事だ?」
ヤマトが問い返す。
「お前な...」
ナイトメアが呆れて大きく溜息をついた。
「ヤマト、確かにお前はドミニオンの時代から今までずっと戦場に出ていて、狂神五人衆の他に面識のある者は少ないだろう。しかし、せめて国政に携わる重要人物の名前と役職くらい覚えておいたらどうだ?いや、覚えろ」
指図されたのが癪に触ったのだろうか、ヤマトは小刻みに震え出した。
「結論を言え...ローゼとは誰なんだ..?」
ナイトメアはこの瞬間こう思った。
(ほう、あの短気なヤマトが怒りを抑えたか...そもそもヤマトがこれぐらいの事で憤慨するのがおかしいんだが)
そしてナイトメアが質問に答える。
「ローゼはドミニオンの時代からこの帝都を守っている守護神的な存在だ。今は帝都が襲撃されることもないため、城の修理及び帝都守護を担当している。つまり、王城を破壊する事によりローゼの仕事が増えるんだ、謝罪するのは当然だろう」
ヤマトが静かに頷いた。
こんな性格でもヤマトは潔く誇り高き戦士。自分が間違っている事を言ったらしっかり認めるのだ。
「分かった覚えておこう」
「しっかり謝罪しろよ」
こんな会話をしている内にアフトザフトがナイトメアの横にスッと現れて喋りかける。
「突然の無礼申し訳御座いません。エース陛下がお帰りになりました」
ヤマトはいきなり現れたアフトザフトに驚きを隠せない様だ、その姿を見てナイトメアは笑いながらこう言った。
「すまんな、余りにもお前の話が長いものだからアフトザフトに思念伝達してエースが帰り次第即伝える様に言っておいたんだ」
「話が長くてすまなかったな!!」
そんな他愛のない会話をしているとアフトザフトが横から口を挟みこう言った。
「エース陛下の所に向かわなくてよろしいのですか?急ぎの用事があるのでは?」
「ヤマトすまん、急ぎの用があるので失礼」
「おい、待て!!」
ナイトメアはヤマトにそう言いエースの所に瞬間移動で向かった。




