十三話 不安な初陣
マックスとコルットラー王国の将軍、オリオンが相対した。
「貴様がコルットラー王国のオリオンか」
「ええ、貴方がマックス殿でございますね。此度は我がコルットラー王国に加勢していただき恐悦至極でございます」
「感謝するならエースにすることだな」
コルットラーの将軍は黙りこくった。マックスの覇気と敵意を肌で感じ取ったのだ。
マックスとしては協力する気など鼻からなく、コルットラーは攻撃しないが、コルットラーが苦戦しようが放っておくつもりだ。
会談が終わり、コルットラーの将軍は背中にぐっしょりと汗をかいていた。
「あれが大陸最強国たるベッジハードの大元帥、なんと強烈な覇気だ、私の国など比べものにならん力を持っている。このままいけばコルットラーはどうなってしまうことか…」
オリオンは憂いたが、とりあえず今はコルットラーが滅亡しないようにすることが先決だった。
オリオンは軍を配置し、迫ってくるであろう敵軍を迎え討とうとした。しかしマックスは防衛軍に参加する気もなければ協力する気もなかった。むしろ、防衛軍を囮にして敵を叩こうと思っていたのだ。
「奴らがどこまで耐えられるか見ものだな。俺達に救いを求めたことからも国力は小さなものだろう」
マックスは思った以上に謀略家であった。その武に目が行きがちで、ベッジハードにはタチャンカなどの軍師が多いためあまり目立たないが、相当に頭が切れる。
布陣が完成してから2日後、敵は姿を現した。
「とうとう来たか、マックス殿はちゃんと戦ってくれるだろうか…」
オリオンは不安がった。マックスは本陣から見える位置にいない。
「敵が来たぞ!防御陣形を崩すな!耐え抜け!」
将軍の指示が飛んだ。
コルットラーが動かないのを見て敵国の将軍フェンリルは鼻で笑った。
「はっ、コルットラーはこんな臆病者の国だったか。全軍突撃!!一気に蹴散らせ!」
敵国将軍の号令がかかる。一斉に敵軍が防衛軍に襲いかかった。
防衛陣形を崩すなと言う指示はほとんど意味をなさなかった。敵軍が突っ込んできたので乱戦になったのだ。
「くっ、消耗戦になれば数の少ない我らの方が不利だ、何か打開策を見出さねば…」
オリオンは考えたが、最終的に出た結論は考えてる暇があるなら自分も戦うべきだ、というものだった。
「俺の名はオリオン!コルットラーの将軍ぞ!私の首が欲しいものがいればかかってこい!」
オリオンの声が戦場に響き渡る。一斉に兵が襲いかかるが、簡単に蹴散らされてしまう。
「敵国の力はこんなものか!!私を舐めるな!!」
敵兵は戦慄し、ジリジリと後退を始めたが、それと同時にフェンリルがオリオンの前に現れた。
「ふん、腰抜どもが、誰が引いていいと言った?」
「貴様がフェンリルか!」
フェンリルが視界に入った瞬間に将軍は攻撃を仕掛けた。フェンリルはやすやすとそれをかわす。
「ほう、骨のありそうなやつだ。少しは楽しめそうだ」
フェンリルは戦を楽しんでいるようだった。
「俺は楽しくなどない!貴様の首を取り国を守る!」
「首を取れたらいいな」
まるでバカにしたかのような言い方にオリオンは憤った。
「おおおお!!!」
雄叫びを上げながら斬りかかるがフェンリルに弾かれる。
「どうしたどうした?」
フェンリルは挑発してきたが、結局のところ決着はつかなかった。
そのうち、コルットラーは徐々に押され気味になっていった。
「くっ、引くぞ。部隊は隊列を崩さずに後退せよ!」
戦いながら徐々に後退を始めるコルットラーであったが、このままでは全滅してしまう。仕方なく、一部の部隊を取り残して、オリオンは王都まで逃げ帰った。
初戦は敵国の大勝に終わったが、まだ戦の決着がついたわけではない。
「そろそろこちらからも仕掛けるとするか」
マックスがいよいよ動き出したのだ。目指す場所は、敵国の王都である。戦の結末がどうなるのか、まだ誰にもわからなかった。
LASTDAY13話「不安な初陣」を読んで頂き誠に有難う御座います
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