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鬼たちのクリスマス

作者: 長曽禰ロボ子
掲載日:2019/12/24

挿絵(By みてみん)


 ここは雪国の田舎町。

 この町を担当する鬼たちが、忘年会のために町外れの観音堂に集まってきている。

「いよっす」

「いよっす」

「いよーっす」

 仲間内には必ず一人はいる料理好きがやはりここにもいて、すでに寄せ鍋が暖まっている。

「おー、いいにおいだねー」

「さすがだねー」

「さすがだねー」

「みんな集まったね。とりあえず乾杯だね」

「乾杯だね」

「乾杯だね」

「ビールでいいね」

「ねえねえ、おれ、こんなの買ってきたんだけど、どう?」

「なにこれ、シャンパン?」

「高そうじゃね」

「高そうじゃね」

「それはあとでいいんじゃね。とりあえずビールで」

「そっかー、とりあえずビールかあ。そだよねー」

「かんぱーい」

「かんぱーい」

「かんぱーい」

「いやー、ことしも終わりだねえ」

「終わりだねえ。結局なにごともなかったねえ」

「田舎だもんな」

「田舎だもんな」

「なにもないってのがいちばんさあ」

「鬼がそれでいいの?」

「ああ、ねえねえ。寄せ鍋も美味しいけどさ。おれもこんなの買ってきたんだ。いっしょにどう。いや、この寄せ鍋も美味しいよね。さすがだよね」

「あれ、けんたっきー」

「おや、けんたっきー」

「ねえ、この町にケンタないんじゃない?」

「ないな」

「なにおまえ、となり町まで買いにいったの?」

「うん」

「となり町ったって、五〇キロ先だからな」

「いや、まいったよー。なにせ今日じゃない。混んでたわー。並んだわー」

「鬼が並んだの?」

「鬼が?」

「鬼が?」

「ていうかさ。なによその『なにせ今日じゃない』って」

「いや、あのさ。鬼だって時と場合をわきまえなきゃだめでしょう。コンプライアンスだよ、コンプライアンス。なに君ら、不祥事起こして閻魔さまに謝罪会見で頭下げさせたいの?」

「鬼だよ?」

「鬼だよ?」

「時代だよ、時代。そんな君もさ、後になに隠しているの」

「あっ、これは」

「それ、この町でいちばんの洋菓子屋さんの包み紙だよね」

「ええと、デザートにどうかなって思ってさ。デザートにさ」

「いや、だからなんだよ『今日』って。おまえら無視すんなよ。今日だからなんだっていうんだよ。今日は何の日なんだよ」

「いいから食えよ、寄せ鍋」

「おまえもさ、後ろに置いてるそれ、なんだよ」

「盆栽だよ」

「クリスマスツリーだろ! それ、クリスマスツリーだろ! 素直になれよ!」

「ああああ、もう! 空気読めよおおお!」

「みんなで微妙な綱渡りしてるの、すこしはわかれよおおお!」

「もういい、もういい! ぶっちゃけようぜ! メリークリスマス!」

「ああっ、言いやがったコイツ!」

「一線越えやがった!」

「くっそう、負けるもんか! メリークリスマス!」

「メリークリスマス!」

「メリークリスマス!」

「メリークリスマス!」

「閻魔さまに知れたら、やっぱすっげー怒られるのかな! 異教に転びやがってとか折檻されるのかな! こんちくしょう! メリークリスマス!」

「メリークリスマス!」

「メリークリスマス!」

「ケンタ、うめえええ!」

「ケンタ、うめえええ!」

「シャンパンあけろや!」

「うめええ、シャンパン!」

「うめええ、シャンパン!」

「メリークリスマス!」

「メリークリスマス!」

「メリークリスマス!」

「とりえあず、おちつこうや」

「おう」

「おう」

「おう」

「しかしな、今ごろ都会の鬼たちはイヴをホテルで過ごしてるんだよな」

「どんな鬼だよ」

「おれ、都会の鬼になりたかったな」

「いや、一極集中の弊害をだな」

「おまえ、なんの評論家だよ」

「ケーキ出せや、ケーキ。食おうぜ」

「ろうそく、誰が吹き消せばいいんだ?」

「いや、誕生日じゃないし」

「異教の神の誕生日だけどな」

「どんだけろうそく立てるつもりなんだよ」

「なんか、テンション下がってきたな」

「いやさ、観音堂で忘年会するおれたちがそもそも罰当たりじゃね」

「そだね」

「しかも、メリークリスマスいってるしな」

「そだね」

「来年、いい年になるといいな」

「そだね」

「そだね」

「それ、鬼が笑うよな」

「がははは」

「がははは」

「おれ、ブラジャーになりたかったな」

「わかんねーよ」

「わかんねーよ」

「わかんねーよ」

「なあ、それ、クリスマスツリーだよな?」

「盆栽だよ」

 夜は更けていく。

秋葉原クリエイティ部 @akiba_creatibuさんがボイスドラマにしてくださいました!


男性版。

https://www.youtube.com/watch?v=bjiGMaMeIMU(15分から)

女性版。

https://www.youtube.com/watch?v=Q8FXzIhuj28&f

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― 新着の感想 ―
[良い点] ふふってなりました。 絵も可愛いし、読んでいて楽しかったです。
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