第七話 雷童丸の苦悩、己の生きていく理由
前回のあらすじ、陰丸一族の手によって四百年の時を経て現代に復活した人と霊獣との間に生まれた妖人『雷童丸』
雷童丸は陽向一族の十四代目に封印されたことを酷く怨み、復讐する為自ら陰丸一族についてしまった。
復活した雷童丸と戦うヨーカイジャーの五人、だがしかし雷童丸の強さはヨーカイジャーが束になってかかってもかなわないほど常軌を逸していた。
…陰丸一族の屋敷の修練場、大勢のカゲオニ軍団に囲まれる雷童丸、すると次の瞬間カゲオニ軍団は一斉に雷童丸に襲いかかった。
しかしその直後、雷童丸は全身から電気を発しカゲオニ軍団を吹っ飛ばすと刀を抜き、残ったカゲオニを目にも止まらない速さであっという間に斬り伏せてしまった。
その様子を見ていた龍左衛門と紫怨
「…ほぅ、中々の太刀筋だな」
「雷童丸の調子も本調子に戻ったことですし、これでいつでも陽向一族を始末できますわ…」
「フフフ、期待しておるぞ…」
「はっ…」
…一方その頃、ヨーカイジャー達は寺の近くの道場を借りてそこで稽古をしていた。
「でりゃあぁぁぁ!!」
「うわっ!?」
「あっ!わりぃタケ兄!大丈夫か?」
「イタタ…大丈夫大丈夫」
「マー君すごぉい!これでもうモモカとお姉ちゃんとで三連勝だよ!」
「ま、俺が本気だせばこんなもんよ!」
「そのくらい勉強も頑張ってほしいけどねぇ…」
「なっ!?姉貴!」
「よし、じゃあ次は俺だ!」
「ユウ兄か…へん!手加減はいらねぇからな!」
「上等!」
二人向き合い竹刀を合わせる
「二人ともいい?それでは…始め!」
「やぁぁぁぁ!!」
「たぁぁぁぁ!!」
激しく竹刀をぶつけ合わせる
「はぁっ!やぁっ!たぁっ!」
「でりゃあぁぁぁ!!」
両者一歩も引かず互角の戦いを繰り広げている
「流石兄さんだ、僕たちでも歯が立たなかったマサとも互角に渡り合ってる…」
「でもマー君だって負けてないよ、ホラ」
見ると、少し政宗の方が優勢になりつつあった。
「くっ!」
「隙ありっ!」
「甘いっ!」
隙を突こうとした政宗の動きを先読みし咄嗟に防御する雄吾
「やるなぁユウ兄!」
「お前もな!」
再び激しく竹刀を交わす二人
「おぉおぉ、やっておるな」
と、そこへ虎三郎が稽古の様子を見にやって来た
「父さん!」
「パパ!」
「なんだ随分といつになく精が出てるじゃないか、あの修行嫌いの政宗まで…」
「うん、それがね…」
虎三郎に雷童丸と戦い惨敗したことを話す
「…なんと、まさか陰丸一族側に着くとは」
「やっぱり、僕たちのこと相当恨んでるみたいだった…」
「うむ…こうなってしまっては致し方ない、私も出るぞ!」
「えっ!?でも大丈夫なの?だって父さん腰が…」
「なぁに、まだまだ若いモンには負けんぞ!まだまだこの通り!フンッ!ハッ!」
と、得意げに跳んだり跳ねたりしていると…
グキッ!
「はうっ!」
「父さん!」
「パパ!」
案の定腰を痛めてしまった虎三郎
「イタタ…やはり寄る年波には叶わんか…アイタタ」
「おいおい、親父達何やってんだよ…」
「そうだよ、気が散るし!」
「あぁ、スマンスマン…」
と、その時だった、雄吾達のマガ魂が光り出して陰丸一族が現れたことを知らせた。
「おい雄吾!出やがったぜ!」
「あぁ!みんな行こう!」
「うん!」
「ちょ、ちょっと待て!私を置いてくな!イタタ…」
…現場へ到着したヨーカイジャー、現場では雷童丸が一人で待ち構えていた。
「!?、雷童丸!」
「来たな陽向一族…今日こそは我が積年の恨み、晴らしてくれようぞ!」
「…やっぱりやるしかないのか、みんな行くぞ!」
「おう!」
「『霊獣転生』!!」
「『猛る若獅子!ヨーカイレッド!』」
「『瞬神の猫又!ヨーカイブルー!』」
「『剛力の鬼熊!ヨーカイイエロー!』」
「『天昇の龍!ヨーカイグリーン!』」
「『魅惑の九尾!ヨーカイピンク!』」
「『霊獣戦隊!ヨーカイジャー!!』」
「陽向一族の名の下に、悪しき魂を浄化する!」
対峙するヨーカイジャーと雷童丸、雷童丸は生身のままで素早い動きでヨーカイジャーを翻弄する。
「スピード勝負なら負けないわ!行くわよ叉多尾!」
『ほいニャ!』
必死に雷童丸のスピードに食らいつくブルー、しかし僅かに力及ばずに倒されてしまう。
「あぁ!」
「姉貴!なら次は俺だぁ!はぁぁぁ!!」
二刀流を構え雷童丸に真っ向から挑むグリーン
「行くぜ行くぜ行くぜぇ!」
雷童丸はグリーンの怒涛の猛攻を全て受けきり、グリーンの足を払いそのまま蹴飛ばした。
「ぐはっ!」
「行くよ!『幻術・花びらの舞』!!」
幻の花びらの吹雪を浴びせ雷童丸の動きを止めるピンク
「剛丸兄ちゃん!」
「任せて!うぉぉぉ!!」
怯んだ隙を突いて斧を構えて突進するイエロー
「甘いっ!」
と、次の瞬間雷童丸は全身から電気を発し花吹雪を蹴散らし電気を纏ったそのままの状態でイエローに強烈なボディーブローをお見舞いする。
「ぐあぁぁぁ!!」
電気で痺れてその場に倒れるイエロー
「剛丸兄ちゃん!」
すると次の瞬間、いつの間にかピンクの背後に雷童丸が現れそのまま斬り捨てられる。
「うっ!!」
「…フンッ、他愛もない」
「くそっ、やっぱり強い…!」
「さぁ、残るは主一人のみ…大人しく斬られるがいい!」
「…やらせはしない、俺がお前を止めてやる!」
「ほざけぇ!」
レッドと雷童丸の一騎打ち、両者激しく剣を交わす
「くっ!やるな!ならば、はぁぁぁ!!」
一端距離を取り、手の平に力を集中させて電気エネルギーの塊を作り出した。
「あれは、多分ヤバい!獅子丸!」
「任せろ!」
「くらえ!『獅子バズーカ』!!」
バズーカを放つレッド、それと同時に雷童丸も電気エネルギーの弾を放った
「うぉぉぉ!!」
「はぁぁぁ!!」
両者の攻撃は激しくぶつかり合い、火花を散らせた。
「…っ!なんつー衝撃だ!ユウ兄!」
「いかん!このままでは…」
「ウチに任せておくれやす!」
九本の尾を目一杯に伸ばしみんなを守る九威女
そして次の瞬間、強い爆発が起こり辺りを吹き飛ばした。
「うわっ!」
「くっ!」
「雄吾!獅子丸!」
朦々と砂ぼこりが立ち込める中なんとか無事な様子のレッドと獅子丸
「ありがとう獅子丸…後少しお前が助けるのが遅かったら危なかったぜ…」
「ゲホッ!ゲホッ!あぁ、結構ギリギリだったがな…」
すると、反対側の方でも雷童丸がボロボロになりながらもなんとか生きていた。
「…ハァ、ハァ、ハァ…倒す…絶対に…倒す!」
恨みの籠った目でレッドをキッと睨む雷童丸
「ぐう…うあぁぁぁ!!」
雄叫びを挙げるや否や霊獣の姿に変身しレッドに襲いかかる
「危ない!雄吾!」
「邪魔するなぁ!」
「ぐあっ!」
「獅子丸!」
「死ねぇ!」
刀を上段に振りかぶる雷童丸
「雄吾!」
「兄さん!」
「ユウ兄!」
「雄吾兄ちゃん!」
レッドに刀を振り下ろす雷童丸
と、その時、レッドは雷童丸の刀を受け止め刀を薙ぎ払った。
「!?」
思わず刀から手を離す雷童丸、次の瞬間レッドは雷童丸の体にしがみついた。
「!?」
「な、何をする!は、離せ!」
雷童丸は必死で振りほどこうとするが決して離れようとしない
「ユウ兄…何のつもりだ?あれ?」
「さ、さぁ?」
思いもよらないレッドの行動に一同唖然とする。
「いい加減にしろ貴様!何のつもりだ!?」
「…もういいんだ、雷童丸…俺にはやっぱりお前を倒すことはできないよ…」
変身を解除し、雷童丸に向けて優しく語りかける雄吾
「な、何を…」
「ホントは辛かったんだよな?四百年もの間ひとりぼっちにさせられて、心細かったんだよな?」
「!?」
変身が解けて人間態に戻る雷童丸
「俺達はお前を封印した先祖と違う、お前も半分は人間なんだ!きっと俺達は分かり合える!俺は信じる!」
「……………」
すると、雷童丸の目から一筋の涙がこぼれた。
「見て!アレ!」
「あいつ、泣いているのか?」
すると雷童丸は我に返り、雄吾を突き飛ばすとそのまま走り去っていった。
「…雷童丸」
「雄吾!大丈夫!?」
「姉ちゃん、みんな…ごめん」
「何謝ってんだよ…ほら、立てるか?」
「あぁ…」
「獅子丸、お主もひどくやられたな」
「へん、これぐらい…別にどうってことねぇよ!」
「まぁそれだけ口が聞ければ十分たい!」
「とにかく、一度陽向寺に戻りまひょか?雄吾はんや獅子丸はんの怪我も手当てせなあきまへんし…」
「そうね、そうしましょう…」
…一方その頃、陰丸一族の屋敷では
「何ですって!?雷童丸がいなくなった!?」
「えぇ、先ほど屋敷の表にこのような書き置きが…」
『少し一人で考えたいことがある、悪いがもう戻ることはない…今まで世話になった 雷童丸』
「一体どういう風の吹き回しかしら?まさか…陽向一族の奴らに何か良からぬことを吹き込まれたとか?」
「違ぇねぇな!そうと決まれば早速雷童丸の野郎を連れ戻しに…」
「落ち着きなさいゴウズ、またあなたは考えなしに…これだから脳みそ筋肉の単細胞は…」
「ンモー!テメェメイズ!喧嘩売ってんのか!」
「お黙りなさい!あなた達!」
紫怨に一喝されシュンと静まり返る二人
「とにかく、今はまだ様子を見ましょう…それでもし万が一にも雷童丸が陽向一族に寝返る様であれば…その時は始末すればいいだけの話でしょう?」
「はっ!紫怨様の仰せのままに…」
…一方その頃、雷童丸は一人どこかの森の中を彷徨っていた。
(…私は、一体どうすればいい?私は一体何の為に生まれ、何をすべきなのだ?)
自問自答しながらただ宛もなく、森を彷徨い続けていた。
続く