第一話 陽向一族と陰丸一族!宿命の戦い!
…時は平成の現代、陽向一族と陰丸一族の因縁の関係が始まってからおよそ千年の時が流れていた。
そしてここは現代の陽向一族の家、表向きには『陽向寺』というお寺をやっている。
陽向一族の二十九代当主である『陽向 虎三郎』は歴代の当主の中でもかなりの上位の霊獣使いで彼の右に出る者は誰一人もいなかったが、完全無欠の霊獣使いも年には敵わず今では実質上引退しており寺の住職の仕事に専念している。
そんな虎三郎には五人の子供達がおり、子供達は皆立派な霊獣使いになる為に日々修行に励んでいる。
「いくぜ!たりゃあぁぁぁぁ!!」
今、庭で組み手の修行中なのは陽向家長男『陽向 雄吾』と相棒の霊獣『獅子丸』
「おら!どうした雄吾!踏み込みが甘いぞ!そんなぬるい攻撃ではこのオレ様には微塵も効かんぞ!」
「ならこれなら、どうだぁ!」
「へん、やりゃあできるじゃねぇか!そらもう一度だ!」
雄吾達が組み手をしている側で洗濯物を干しているのは雄吾の姉で陽向家長女『陽向 聖奈』
兄弟の中でも一番のしっかり者で母親代わりとして家事全般をこなしている。
そんな聖奈の相棒の霊獣は猫又の『叉多尾』働き者の聖奈とは正反対でぐうたらののんびり屋で今も呑気に縁側で昼寝している。
「…ハァ、ちょっと叉多尾!そんなところでゴロゴロされたら邪魔なんだけど!」
「うるさいニャー、どこで寝ようとタビさんの勝手だニャン」
「ったくもう!ほらどいて!」
少しイラついて叉多尾を蹴飛ばす
「痛いニャン!やめてニャン!」
「さっさとどきなさい!それか少し手伝ってくれてもいいんじゃないの?」
「嫌だニャン、タビさん面倒くさいことは嫌いニャン!」
と、さっさと屋根に飛び乗ってまた再び昼寝してしまう。
「まったくもう…あっそうだ、ねぇ剛丸ー?」
「何だい姉さん?」
彼は陽向家次男『陽向 剛丸』兄弟の中でもずば抜けて大きい体格をしており中々の強面だが、本人はとても心優しい性格の持ち主、現在保育士を目指して大学に通っている。
「これから夕飯の買い物行くから一緒に行って荷物持ってくんない?」
「えぇ~また?いつも僕ばっかり荷物持ちさせるんだもん、僕だってそれなりに忙しいのに…」
「まぁまぁ、やってくれたら今日の夕飯のおかず剛丸の分ちょっと増やしてやるから」
「そんな子供じゃないんだから…」
「なら、このオイが行くですたい!」
そう言ってきたのは剛丸の相棒の霊獣 鬼熊の『熊兵衛』
「そりゃ無理でしょ熊兵衛、第一君達霊獣が外に出たら大騒ぎになるじゃないか」
「おぉそりゃそうじゃったばい!うっかりしとったわ!うわっはっはっは!!」
豪快に笑う熊兵衛、熊兵衛は力は強いのだが頭は少し弱いのだ
「まぁいいわ、とにかく行くわよ剛丸!」
「はぁ、しょうがないな…」
一方、家の中では…陽向家三男『陽向 政宗』がヘッドホンで大音量の音楽を流しながらスマホをいじっている。
政宗は現在高校生、髪を金髪に染め上げ服装も渋谷系のチャラチャラした格好をしておりいつも修行も中途半端でいつも遊び呆けている
「政宗!オイ政宗!修行の時間だ!」
彼は政宗の相棒の霊獣 龍の『龍之進』
生真面目な性格でチャラチャラした政宗に手を焼いている
「あ?修行なんかやなこったかったりーし、それよりオレこれからダチと遊ぶ約束してっから!」
「ならぬ!そうやっていつもなんだかんだ言って修行をサボりおって!今日という今日は許さんぞ!」
「うっせーな、そんなに修行してーならタッツィーだけでやりゃあいいじゃんよぉ!」
「だからそれでは意味がないのだ!後、私のことをその『タッツィー』などと妙な渾名で呼ぶのはやめろと言っているだろう!」
政宗と龍之進が言い争っているその横で、陽向家次女『陽向 百華』がパソコンで動画を見ながらお菓子を貪っている。
ちなみに百華と政宗は双子の兄妹ではあるが性格は正反対で百華は政宗と違い引っ込み思案で恥ずかしがり屋なところがあり学校のクラスメイトとも上手く馴染めず引きこもりがちになっている。
「百華はん、そないに動画見ながらお菓子ばっかり食べてはったら体に毒どすえ、そろそろ学校にも行ってみてはどないやろか?」
彼女は百華の相棒の霊獣 九尾狐の『九威女』
いつも引きこもってばかりいる百華を心配している
「…いいよ、モモカ学校行きたくない…」
「そないなこと言わんと…お友達も仰山できますえ?」
「…無理だよ、だってモモカ弱虫だもん」
「そ、そないなことあれしまへんて!あぁもうどないしたらえぇんやら…」
「もういいでしょ、モモカのことはほっといてよ」
「そ、そんな…」
…五人とも個性的且つクセの強い性格の者ばかりの陽向家の兄弟達、するとそこへ五人の父である虎三郎がやってきて
「皆、揃っておるか?ちょっと全員今すぐ寺の本堂へ集まってくれ…」
物々しい物言いで五人にそう告げる虎三郎
「親父、どうしたんだよいきなり?」
「いいから来い、話はそれからだ」
…寺の本堂へ集められた五人と霊獣達、全員揃ったところで虎三郎はようやく話し始める。
「よいかお前達、お前達はもう存じていると思うが我が陽向一族には千年もの間因縁の間柄の一族がいる」
「陰丸一族だろ?もうガキの頃から散々聞かされてうんざりだっての!」
「こら政宗!黙って聞かんか!」
「へーへー」
「ゴホンっ!話を続けるぞ、その陰丸一族がこの数十年の間に大人しくナリを潜めていたがここ最近になってまた不穏な動きを見せるようになったのだ!」
「何っ!?」
「それがホントだとしたら…とても穏やかじゃない話ね…」
「本来ならばワシが相手してやると言いたいところだが、ワシももう年には敵わずもう体が思うように動かん!そこでじゃ!この一件お前達に任せようと思う!」
「なっ!?マジかよ親父!」
「無論、本気で申しておる」
「冗談じゃねぇよ!オレはそんなのまっぴらゴメンだね!」
「僕も…だって怖いし」
「モモカも…だってモモカ弱いもん」
「政宗!貴様それでも陽向家の者か!?この期に及んで何を情けないことを!」
「オイも同感ですたい!ここで行かねば男じゃなかですばい!」
「その通りじゃ、これは陽向家の者として生まれたお前達の宿命なのだ!どの道彼奴ら放っておけばゆくゆくはこの世界を破滅しかねん!そうなる前に我らの代でこの長き因縁を断ち切るのだ!」
「…チッ、面倒くせぇな」
「でも、やっぱり怖いな…」
「案ずるな、何もお前達だけでどうこうしろと言うわけではない、その為の霊獣達だ」
「えっ?」
「そうか、とうとうアレを出す時が来たか…」
「アレ?アレってなんだよ獅子丸?」
すると霊獣達は自分達の胸に手を当て何かを念じる、すると胸の中心が光りその手には光り輝く謎の勾玉が握られていた。
「こ、これは…!?」
「これは『マガ魂』と言ってな、霊獣達の霊力の一部を具現化した物だ、これを持てばお前達も僅かではあるが霊力が使える」
「ふーん、つまりこれは霊力の塊ってことね?」
「まぁ、そういうことだ…それとな、これを持っていけ」
すると虎三郎は五本の日本刀を取り出してきて五人に渡す
「それは霊力の宿った特別な刀『霊斬刀』、マガ魂と上手く合わせて使えばきっとお前達の力になるだろう…」
するとその時だった、外から邪悪な気を感じ取った霊獣達、すると雄吾達の持っているマガ魂が突然光り出したのだった。
「こ、これは?」
「外から妙な邪気を感じる…嫌な予感しかしねぇ」
「恐らく、奴らだな…」
「!?」
陰丸一族が出てきたと聞いて一瞬にして顔が強張る五人
「…とにかく行こう!このままだとまずいことになるのは間違いない!」
「そうね、行きましょう!」
「…う、うん!」
「オレは行かねぇよ!一族の宿命とかくだらねぇ!」
「このたわけめ…いい加減諦めろ!」
すると龍之進は政宗を無理矢理引きずって連れていく
「おい!ふざけんな離せ!」
「ウチらも行きまひょ百華はん!」
「…モモカはいい、行ってもどうせ勝てないもん」
「大丈夫、ウチも精一杯力貸しますさかい!とりあえず行きまひょ?」
「…うん」
霊獣達について邪気のする方へ向かう五人、するとそこには一人の少女と牛の頭と馬の頭を持った霊獣二体がいた。
「お前が陰丸一族か…?」
「フフフ、そうよ!私の名は『陰丸 紫怨』陰丸一族二十八当主 陰丸 龍左衛門が一人娘!」
「そしてワシは紫怨様の忠実なる下僕!『剛牛のゴウズ』!!」
「同じく私は『駿馬のメイズ』!!」
「あなた達が、陽向一族の霊獣使い達ね?」
「あぁそうだ!お前達、何が目的だ?」
「これは我が父上の意思、陰丸一族の力を世に知らしめる為にまずはこの国を支配する!その上で陽向一族に復讐するの!」
「この国を、支配するですって!?」
「フフフ、その通り!まずは手始めにこの街から頂くとするわ!」
すると紫怨は大量の呪符を取り出しそれを一気ばら蒔いた、すると呪符が姿を変えて人のような形に変わっていった。
「さぁ好きに暴れなさい『カゲオニ』達!メチャメチャにしておやり!」
「カゲー!」
めちゃくちゃに暴れ回るカゲオニ達
「やめろ!」
五人も刀を抜いて立ち向かう、しかしあまりの数に圧倒され苦戦する
「フフフ、無駄よ無駄無駄!アンタ達、先にそいつらを始末しちゃいなさい!」
五人に一斉に襲いかかるカゲオニ達
「くっ…ダメか…」
もうあきらめかけたその時だった。
「ガオォォォ!!」
突然獅子丸が大きな声を出して辺りのカゲオニ達を吹き飛ばした
「し、獅子丸…!」
「情けねぇツラしてんじゃねぇぞ雄吾!しっかりしやがれ!」
「ホントは戦うの嫌ニャンけど、後でご褒美くれるニャら協力してやってもいいニャン」
「叉多尾…」
「立ち上がるんじゃ!お前達がここで倒れたら世界は終わりですたい!」
「熊兵衛…」
「立つんだ政宗!このまま奴らの好きにされて黙っているつもりか!?」
「タッツィー…」
「諦めたらあきまへん!ウチらがついてますさかい、頑張りまひょ!」
「九威女…」
霊獣達に励まされ立ち上がる五人
「そうだよな、オレ達は…こんなところで止まるわけにはいかない!オレ達は…陽向一族だ!」
すると五人の刀とマガ魂が強い光を帯び、刀の形状が変化し鍔の部分に穴が開く
「お前ら!鍔の穴に各々マガ魂をはめ込め!」
「え?わ、分かった!みんな!」
「おう!」
刀にマガ魂を刀にはめ込む
「『獅子・マガ魂!いよぉぉぉ!!』」
「『猫又・マガ魂!いよぉぉぉ!!』」
「『鬼熊・マガ魂!いよぉぉぉ!!』」
「『龍・マガ魂!いよぉぉぉ!!』」
「『九尾・マガ魂!いよぉぉぉ!!』」
「次は『霊獣転生』と叫べ!」
「『霊獣転生』!!」
次の瞬間、五人の身を各々の色をした各々の相棒をモデルにしたスーツが包む
「こ、これは…!?」
「すごい…変身したわ!?」
「なんか、力が溢れてくる気がする!」
「すげぇ…なんかよく分かんねぇけど、すげぇ!」
「これならモモカも頑張れそうかも!」
「よし、上手くいった!」
急に変身したことで驚きながらも体の底から溢れてくる力に自信が生まれる
「フン!見てくれが変わったからって何よ!ゴウズ、メイズ!後は任せたわよ!」
「はっ!」
「望むところだ!みんな!」
「おう!」
「『猛る若獅子!ヨーカイレッド!』」
「『瞬神の猫又!ヨーカイブルー!』」
「『剛力の鬼熊!ヨーカイイエロー!』」
「『天昇の龍!ヨーカイグリーン!』」
「『魅惑の九尾!ヨーカイピンク!』」
「『霊獣戦隊!ヨーカイジャー!!』」
「陽向一族の名の下に、悪しき魂を浄化する!」
ゴウズ メイズと対峙するヨーカイジャー
「くらえぇ!」
巨体をいかした猛烈なタックルを仕掛けるゴウズ
「ふんっ!」
ゴウズの角を掴みタックルを受け止めるイエロー
「うぉぉぉ!!」
「ぐぬぬ、このワシのタックルを止めるとは…できるなお主!だが、まだ甘い!」
「うわっ!」
「タケ兄!野郎!」
ゴウズに刀を振るうグリーン、しかしゴウズに素手で受け止められ投げ飛ばされる
…一方でメイズと交戦するレッド ブルー ピンク、メイズの素早い動きに翻弄される。
「くっ…!」
「早すぎて見えない!」
「ホッホッホッ!まだまだこんなものではありませんよ!」
更に加速するメイズ
「調子に乗らないでよね!」
メイズの動きを見切り刀を振るうブルー
「うおっ!」
「当たった!?」
「お姉ちゃんすごい!」
「ぐぬぬ…これは侮れませんね」
「ならば我らの本気を見せるまでよ!」
するとゴウズとメイズは各々大槌と槍を取り出した
「雄吾!オレ達の力も使え!ふっ!」
すると霊獣達は各々武器の形に変化した。
獅子丸はバズーカ砲、叉多尾は鉤爪、熊兵衛は鉞、龍之進は長刀、九威女は鉄扇に各々変化した
「すげぇ、お前らこんなこともできるのか!?」
「余所見するな!来るぞ!」
力任せに大槌を振り回すゴウズ、ゴウズの大槌を鉞で受け止めるイエロー
「マサ!お願い!」
「オーライ!」
長刀を構え、ゴウズを斬り裂く
「ぐあっ!」
メイズも槍を使って襲いかかる、ピンクとブルーが鉤爪と鉄扇で受け止めいなしていく
「いくよ百華!」
「うん!」
息を合わせて斬りつける
「ぬぐぅ!」
「雄吾!」
「OK!シュート!」
思いきりバズーカ砲をぶっ放すレッド
「ぐわぁぁぁ!!」
「どうだ!参ったか!」
「ぐぬぬ…こやつら中々やりよるわ…」
「フッ、ここは一先ず撤退しましょう!」
と、消え去る
「…とりあえず、勝ったのか?」
「そうみたいね…」
「やれやれ、疲れた…」
変身を解く一同
「とにかく、こうなった以上もう後戻りはできないわね…みんな覚悟を決めるしかないわよ、この先きっとまた奴らはやって来るわ」
「姉さんの言う通りだな、オレはやるよ!あいつらどうも気にくわねぇ…」
「僕も、ちょっと怖いけど…熊兵衛やみんなと一緒なら…」
「オレは、まぁ気は進まねぇけど…やってやるよ!」
「モモカも頑張る、一人じゃ絶対無理だけど…みんなとなら…」
「よし、これでみんなの心は纏まった!オレ達は負けない、絶対に勝つんだ!」
「おぉ!」
初めての戦いを経て結束が深まったヨーカイジャーの五人
…一方その頃、陰丸一族のアジトでは
「…そうか、やはり邪魔しに出てきたかあ奴らめ…」
「はい…奴らはヨーカイジャーと名乗りかなりの強さ誇っており、かなり厄介な存在かと…」
「そうか、ならば一刻も早くそのヨーカイジャーとやらを始末せよ!やり方はお前に任せる」
「分かりました、父上…」
「…己、陽向一族め…どこまでも我らの邪魔をしおって、必ずひねり潰してくれる!フハハハ!!」
つづく




