第十話 阿吽の呼吸 謎の狛犬兄弟現わる!
…ここはとある神社、境内の前には二体の狛犬の像が祀られている。
(…兄さん!この気配は…!)
(おう!間違いねぇ…『あの方』の気配じゃ!こうしちゃおれん!行くで!)
すると突然、狛犬の像はピキピキと亀裂が入り石が割れると中から二匹の霊獣『狛犬』が現れた。
「よっしゃ!必ず見つけちゃるけぇのぅ…!」
…ある日の午後、お昼を食べた後居間でまったりテレビを見ながら過ごす聖奈と百華。
「なんか暇ねー、最近は陰丸一族も妙に大人しいし…」
「そうだよねー、まぁでも平和でいいじゃん!」
「んー、まぁそうよねー…」
と、雑談しながらチャンネルを回していると
『続いてのニュースです、広島県にある陽海神社に祀られていた二体の狛犬像が突如姿を消した模様です、この神社はとても歴史的価値のある神社として地元では有名であり…』
「ん?ここって…」
「お姉ちゃん?どうかしたの?」
「今ニュースでやってる神社、確か昔陽向一族の門下生だった人が広島に移り住んでその人が造った神社だって前に父さんから聞いたような…」
「へぇ、じゃあ霊獣とかもなんか関係あるのかな?」
「…かもしれないわね」
と、そうこう話していると
「ただいまー」
「ただいま戻りました」
「あ、雄吾兄ちゃんとライちゃん帰ってきた!」
「ふぅ、疲れた…やっぱ強いな雷童丸は!」
「いえいえ、私などまだまだ未熟者に過ぎませぬ…ん?」
ふとテレビの映像が目に止まる雷童丸
「あの狛犬像…」
「ん?どうかしたか雷童丸?」
「いえ、あの『てれび』とやらに映っていた二体の狛犬像…昔の私の友にそっくりだと思ってな…」
「雷童丸の友達?あの狛犬像が?」
「もしかしてそれって、霊獣?」
「あぁ、彼らは二匹の狛犬の双子の兄弟でな…その昔怪我をして倒れていたところを私が助けたのだ、それ以来妙に懐かれてしまってな…しかし、私が封印されてからというものの…彼らがどこで何をしているかは分からなかったが…」
「もしかして、この像と雷童丸のいう狛犬兄弟ってのと同一人物、てか同一霊獣なのか」
「それで雷童丸が復活したってことに気づいて探しにいったってこと!?」
「…可能性はあるな、恐らく私の気配に気づいてこちらへ向かっているはずだ…」
「よし!なら早速探しに行こうぜ!こっちから出向いてやればきっとそいつらも気づき易いって!」
「簡単に言うけどね…広島から東京までなんてどんだけ離れてるか分かってる?そんなすぐ来られるわけがないでしょうに…」
と、聖奈の話を最後まで聞かぬ内に飛び出して行った雄吾
「ちょ、ちょっと雄吾!アンタ人の話は最後まで聞きなさいよー!」
…一方その頃、陰丸一族の屋敷では
「この愚か者共がっ!貴様らいつになったら陽向一族を倒せるというのだ!」
「も、申し訳ありませんご当主様!」
「お父上様、あまり叫ばれてはお体に障ります!」
「分かっておる、だがもうこやつらの不甲斐なさには儂も我慢の限界ぞ!」
「けどよご当主様!あいつらとんでもなく強くなっていやすぜ!加えてあの雷童丸までやつらの仲間に加わって…正直俺達二人だけじゃ限界ですぜ!」
「ゴウズ!口を慎みなさい!ご当主様に対して無礼ですよ!」
「けどよぉ!」
「やめんか見苦しい!」
「!!」
「よいか!これ以上我が陰丸一族の名に泥を塗るような真似をしてみろ!お前達にきついお仕置きをくれてやる!」
「そ、それだけはご勘弁をご当主様!」
「分かったらさっさと行かんかこの馬鹿共が!」
「は、はいぃ!」
…一方その頃、陽向一族の屋敷では
「ただいまー」
政宗と剛丸が学校から帰ってきた。
「あ、マーくん 剛丸兄ちゃんおかえり!」
「あれ?兄さん達と雷童丸は?」
「お姉ちゃんは夕飯の買い物、雄吾兄ちゃんとライちゃんはライちゃんのお友達を探しにいった」
「雷童丸の友達ぃ?んなもんいたのかあいつに」
「うん、400年前に仲良くしてた狛犬の兄弟だって」
「狛犬…?あぁもしかしてニュースでやってた神社からなくなったっていう狛犬像のこと?」
「うん、多分」
「へぇ…てことはそいつら雷童丸のこと400年もずっと待ってたってことか…俺だったらそんな長い間待つのは無理だな…」
「きっと、その狛犬達にとってそれぐらい雷童丸君のこと大事に思ってるからじゃないかな?」
「そ、そういうもんか?」
…一方、狛犬兄弟を探しに出た雄吾と雷童丸は
「………」
「うーん、それらしい奴はいないみたいだな…やっぱまだ近くにはいないんじゃないか?」
「いや、だがほんの僅かではあるがあやつらの気配を感じる…きっともう近くまで来ているやも知れぬ…」
「いやいやいくらなんでも無理あるでしょ?広島から東京だよ?どんだけ健脚なんだよそいつら…」
「はっ!?」
「えっ!?まさかもう!?」
「いや違う!この気配は…陰丸一族の!?」
「何っ!?」
「近いぞ!」
気配のする方へ走っていく雷童丸
「あ、おい!ちょ待てって!」
急いでスマホを取り出してみんなにメッセージを一斉送信する雄吾
「マサ!百華!」
「あぁ分かってる!今ユウ兄からナイン来た!」
「モモカ達も早く行こう!」
「うん!」
現場に到着する雄吾と雷童丸、そこではカゲオニ軍団と大型トラックから作られた怪人『トラック男』が暴れていた。
「そこまでだ!お前達!」
「トラトラトラ!やっとおいでなすったかヨーカイジャー!ここが貴様らの墓場になるのだ!トラトラトラ!」
「ふざけるな!これ以上お前達の好きにはさせない!」
「ふん!だったら止めてみろ!お前達!やってしまえ!」
「カゲー!」
雄吾達に襲いかかるカゲオニ軍団、雄吾と雷童丸は生身のままでカゲオニ軍団と対峙し、バッタバッタと斬り伏せていく
「雄吾!雷童丸!」
「わり、遅くなった!」
遅れて聖奈達四人も合流した
「姉ちゃん!タケ!」
「政宗殿!百華殿!」
「おっしゃ!暴れるぜ!」
「タイムセールが終わる前にとっとと終わらせるわよ!」
四人も生身のまま戦闘に参加し、カゲオニ軍団を圧倒していく
「よし、皆行くよ!」
「よっしゃ!」
「『獅子・マガ魂!いよぉぉぉ!!』」
「『猫又・マガ魂!いよぉぉぉ!!』」
「『鬼熊・マガ魂!いよぉぉぉ!!』」
「『龍・マガ魂!いよぉぉぉ!!』」
「『九尾・マガ魂!いよぉぉぉ!!』」
「『雷獣・マガ魂!イェェェイ!!』」
「『霊獣転生!!』」
「『雷獣転生!!』」
「『猛る若獅子!ヨーカイレッド!』」
「『瞬神の猫又!ヨーカイブルー!』」
「『剛力の鬼熊!ヨーカイイエロー!』」
「『天昇の龍!ヨーカイグリーン!』」
「『魅惑の九尾!ヨーカイピンク!』」
「『正義の稲妻!ヨーカイジャスティス!』」
「『霊獣戦隊!ヨーカイジャー!!』」
「陽向一族の名の下に、悪しき魂を浄化する!」
「正義の名の下に、沈め!」
「小賢しい奴らめ、くらえ!必殺 トラックアタック!」
猛スピードでヨーカイジャーに突進するトラック男
「ぐあっ!」
「くっ!なんてスピードだ…避けきれない!」
「トラトラトラ!もう一丁行くぞ!」
「僕に任せて!はぁぁぁ!!」
持ち前の怪力でトラック男の突進を受け止めるイエロー
「ふぎぎぎ…」
「ぬぅ…なんのこれしき!トラトラトラ!」
更に加速してイエローを押し返していく
「ぐぐっ…すごいパワー…もう、ダメ…ぐはっ!」
力負けし、押し返されるイエロー
「剛丸!」
「マジかよ、タケ兄の馬鹿力が通用しねぇなんて…」
「万事休すか…」
「これでトドメだ!トラトラトラトラ!」
勢いよくアクセルを吹かすトラック男、しかし少ししてアクセルの勢いが弱まっていく
「トラ?し、しまった!こんな時にガス欠か!?」
「チャンスだ!皆!」
「おう!」
「必殺!『霊斬波!!』」
「『奥義・雷光瞬烈斬』!!」
六つの斬撃がトラック男を襲う、しかし次の瞬間…どこからともなくゴウズとメイズが現れ、斬撃を打ち消してしまった。
「何っ!?」
「チッ!またお前らか!」
「ごきげんようヨーカイジャーの皆さん、申し訳ありませんがここは一先ず撤退させていただきます故…ゴウズ!」
「あいよ!うおらぁぁぁ!!」
大槌で地面を叩き砂埃が飛び散りそれに乗じて姿を消す
「くそ!逃がしたか!」
一同変身を解く、するとどこか遠くから何かが勢いよくこちらに向かってくる音が聞こえた。
「な、何この音!?」
「もしかして、新手の怪人!?」
「いや違う!この気配は…!」
すると、少しして何やら叫ぶ声も聞こえた。
「アーーーニーーーキーーー!!!!」
近づく声の主は雷童丸が探していた狛犬兄弟だった。
「お、お前達!?」
「お久しぶりでがんすアニキ!ワシらアニキがいなくなってからずーーーっとアニキのこと探しとったんですけぇのう!」
「よかった…また会えてうれしいッス!大アニキ!」
実に400年ぶりの再会に感動の涙を流す狛犬兄弟
「お、おい!お前達!少し落ち着け!」
「な、なぁ?もしかして、お前達が雷童丸の友達の狛犬兄弟か?」
「あん?なんならぁこん人間どもは?」
「そん刀…あ!兄さんこいつらあの陽向一族じゃ!」
「何じゃと!?己ぇ…よくもアニキを…ぶちかましちゃるけぇのう!」
雄吾達に牙を向き低く唸り威嚇する赤い隈取の狛犬
「よせ『阿犬』!こやつらは今の私の仲間だ!手荒な真似はよせ!」
「じゃけんどアニキぃ!こいつら陽向一族じゃろ?」
「とにかく!少し説明するから今は落ち着け!」
…と、一度屋敷に戻り狛犬兄弟に今の状況とこれまでの経緯を説明した。
「し、失礼しました!アニキの命の恩人とは露知らず失礼なことを!許してつかあさい!」
「も、もういいって!」
「申し遅れました!ワシは狛犬兄弟の兄の阿犬!そしてこっちの青い隈取しちょりますのが弟の『吽犬』!以後お見知り置きを!」
「そ、そっか…俺は雄吾!で、こっちから…聖奈姉さん、剛丸、政宗、百華だ」
「よろしくお願いしますけぇ!兄さん姐さん方!」
「それよりお前達、これからどうするつもりだ?」
「そりゃあもちろん、ワシらアニキに一生ついていくと決めちょりますけぇ!アニキにお供しますけぇのう!のう吽犬!」
「はいな兄さん!オイラ達一生大アニキについていきますぜ!」
「お、お前達…」
「まぁ、いいじゃない…これからはこの子達が雷童丸のパートナーってことで」
「う、うむ…まぁ、私としてはお前達さえよければ…」
「おぉ!流石はアニキじゃあ!これからもよろしくお願いしやすぜ!アニキ!」
「ふっ…あぁ!…はっ!?」
「まさか、もう来たか!?」
「うむ!」
「よし!皆、行こう!」
「おう!」
現場へ到着、そこでは既に巨大化したトラック男が暴れ回っていた。
「トラトラトラトラ!エネルギー全開だぜぇ!トラトラトラ!」
「あいつ!もう巨大化してやがる!」
「すぐに止めるぞ!獅子丸!」
巨大化して現れた霊獣達
『やっと出番か!待ちくたびれたぜ!』
『正直気は進まないけどやってやるニャン!』
『うぉぉぉ!やってやるたい!』
『我らの力を思い知るがいい!』
『ほな、皆はんいきますえ!』
「『霊獣合体』!!」
「『完成!ヨーカイオー』!!」
巨大トラック男と対峙するヨーカイオー
「また貴様らか!もう一度押し潰してくれる!くらえ!必殺 トラックアタック!!」
ヨーカイオーに向かって突進するトラック男
「ふん!ぐぎぎぎ…!」
『ぐぬぅ…これしきの力で、負けるものか!』
『そうたい!力勝負なら負けんばい!』
『フニャ~、タ、タビさんもうダメニャン…』
『ウチも…もう、限界どすえ…』
『バーロー!テメェらちったぁ気合いみせやがれ!』
「くっ!皆、頑張ってくれ…!」
必死に耐えるヨーカイオー
「みんな!」
「ここはワシらの出番のようじゃけぇのう!」
「お前達!」
「ワシら狛犬兄弟の真の力、見せちゃるわい!いくでぇ吽犬!」
「はいな兄さん!」
「『霊獣大変化』!!」
巨大化する狛犬兄弟、巨大化した状態でトラック男に同時に体当たりして退ける。
「兄さん方!ワシらも助太刀しますけぇのう!」
「えっ?」
「さぁ、どっからでもかかってこいやぁ!」
「己ぇ…ならば俺の全身全霊の攻撃を受けるがいい!」
勢いよくアクセルを吹かすトラック男
「くらえ!!」
猛スピードで突進するトラック男
「来たで!吽犬!」
「はいな兄さん!」
「『阿』!」
「『吽』!」
すると狛犬兄弟は分厚い妖気の結界を作りヨーカイオーを守る
「こ、これは!?」
「結界か!?」
結界に勢いよくぶつかるトラック男、トラック男がぶつかっても結界はびくともしなかった。
「ふん!ふん!あれ?何故だ!ふん!ふん!」
「すげぇ!全然びくともしてない!」
「ワシら狛犬は元々守護を司る霊獣、守りに関してワシら狛犬の右に出るもんはおらんのじゃあぁぁぁぁ!!」
そのまま結界で押し返してトラック男を吹っ飛ばす
「今じゃ!」
「よし!いくぞ!必殺!『ヨーカイオー・フルブラストスクリーム』!!」
強烈なビームがトラック男を貫いた。
「ぐあぁぁぁぁ!!ガ、ガス欠どころかスクラップになるとは…無念!」
断末魔と共に爆発する
…そしてその後、陽向一族の屋敷にて
「いやぁそれにしてもバリすごかったばい!」
「うむ、見事であった!」
「いやぁ、それほどでもないですけぇ…」
「そう言えば思いんしたけど、雷童丸はんはウチらと同じように大変化しやしまへんのやろか?」
「あぁ、それなんですけどのう…実はワシらもアニキが大変化したところは見たことないんじゃけぇ」
「ニャ?もしかして雷童丸大変化できないニャンか?」
「いや、そう言うわけじゃないんじゃ…」
「?」
「何故だか大アニキ、大変化したがらないんよ…」
「何だそら?なんかわけでもあんのか?」
「さぁのう…詳しい理由はワシらにも教えてくれんのじゃけぇ」
「ふーん、まぁ別に俺ぁどうでもいいけどよぉ…」
…時を同じくして、陰丸一族の屋敷では
「ぎ、ぎゃあぁぁぁ!!お、お許しください!ご当主様ぁぁぁ!!」
「あ、熱い!し、死ぬぅ!」
失敗したお仕置きとして釜茹でにされているゴウズとメイズ
「全く、不甲斐ない馬鹿どもめ…」
「お父上様…如何いたしましょうか?」
「よもや一刻の猶予もない、そろそろ『アレ』をやる」
「ア、『アレ』とはまさか…!?」
「フッフッフッ…今に見ておれ、陽向一族め…」
続く




