第二十九話「戦う理由」
朝の優しい日差しが一室を満たす中――。
ピンクの着物を着たウメと、椅子に座ってコーヒーを啜るクウ、そしてニコニコとしたシフォンがテーブルを囲んでいた。
「あ、ウメさんちょっといいですか?」
「あ、はい?」
確認をして同意をもらってから、シフォンはウメの後ろに周ると「失礼します」と言ってから肩を触ったり、腕を確認したりし始めた。
「え、え?」
突然のことにウメは戸惑うが「どこも痛めていませんよね」とシフォンが優しげに声をかけてきたので、黙って身を任せる。
「失礼しました。身体に異常はないようですね」
「あ、はい……」
「さて、ではお腹すきましたよね。たっぷりあるので、まずは沢山食べてください」
テーブルには軽めの朝食が並んでいた。
パンに果物、スープが並んでいる。果物の甘い匂いが鼻をくすぐった。
「わぁ、すごく美味しそうですね」
目を輝かせながらウメは席に座ると感激の声を漏らす。
「すみません。夜にはご馳走を用意しますので」
「とんでもないです! ありがとうございます! 頂きます~」
食事にウメが手をつけ始めたのを見てから、
「えっと、食事を楽しみながら私の話を聞いてください」
シフォンが話しを始めて視線を送ると、クウが頷いたので続きを語り始めた。
「現状は私の隠れ家にいる状態で、周囲には魔法の結界が張られているから一先ず安全です」
ものを食べながらシフォンの説明にウメはうなづく。
その様子に微笑むとシフォンは続きを語った。
「そこで提案なのですが、クウさんと話した結果。しばらくここで戦闘訓練をしようって話になっています。いいですかウメさん? ここが分岐点です。平和に静かに暮らすか。戦いの道を選ぶか、ウメさん自身が選んでください」
真面目なシフォンの表情に、ウメは食べる手をとめると立ち上がった。
「私は戦います。でも、その前にクウに一度、聞きたいことがあります」
言いながらクウに視線を送る。
なんだよ? って顔で一瞬ウメに視線を向け返すも――
思い当たる節があるようでハッとなった。
「さっき半裸を見たのは偶然だって。悪かったよ。それに良い身体――」
「ちっが――う!」
言葉の途中で遮ってウメはクウを平手打ちした。
油断していたクウはもろにそれをくらうと、椅子から転げ落ちた。
「せっかく忘れかけてたのに……」
顔を真っ赤にすると下を向いた。
しかし、すぐに気を取り直すと咳払いをしながら言葉を続けた。
「そうじゃなくって、クウの旅の目的って何なんですか?」
「俺の旅の目的って話したよな? 闇を――」
「倒すとどうなるんですか?」
平手打ちされた頬を擦りながらクウはぶっきらぼうに答えようとしたが、
その言葉の途中でウメがさらに尋ねる。
「闇を倒せば少なくとも魔物がいなくなりますね。少しの間だけですが」
横からシフォンが口を挟む。
「落ち人が落ちてくる現象についてもしらべてーとこだよな。だってよ~ほとんど飛び降り自殺みてーなもんだろ?」
難しい顔をしながらクウは椅子に座りなおす。
戦いのことはウメにはまだよくわかっていなかった。その戦う理由も。
でもきっとクウは人の為に戦い。無慈悲に死んでしまう落ち人たちのことを想う、優しい心の持ち主なのだということをウメは感じていた。
「わかりました。なら私も戦います」
迷わずウメは言い切ると、椅子に座りなおして食事を食べ始めた。
その様子にシフォンは笑顔を向けるが、クウは複雑な表情をした。




