第二十七話「落ちる夢」
――夢。
真っ白な空間。
どこまでも真っ白で、地面からは白い煙がうっすらと溢れだし足元を覆っている。
気がつくとウメはそこに立っていた。
小さな光の粒も周辺に漂っていて、幻想的な雰囲気を醸しだしている。
その小さな光にウメが触れると、光の粒は四散して――消えた。
「ここはどこ……私は……」
周囲を見渡し、ウメは一人の人物を探す。
「クウ――どこにいるの……私を一人にしないでよ……」
歩いても、ずっと白い世界は続いている。
ふと、遠くから声が聞こえた気がした。
その方向に足を進めるも――なにをしゃべっているのかは聞き取れない。
「誰なの?」
声をかけながら、ウメは声がしたと思った方向へ足を進める。
『わた……は……プ……ナ』
少し聞こえた。でもノイズが混じったように、まだハッキリとは聞き取れない。
それでも透き通るような美しい女性の声のようだった。
突然。
背後から人の気配がしてウメは足を止めて振り返ろうとするが、何故だかまるで金縛りにあったように振り返れない。
そして。
今度はハッキリとした声で聞こえた。
『あなた、このままだと――』
透き通るような女性の声は、今度は鮮明に背後から届く。
一息ついた後に、その続きがウメの耳元で囁かれた。
『死ぬわよ』
その突如。
足元が真っ暗になり、ウメは落ちるように闇に吸い込まれた。
真っ白な世界は真っ黒に染め上げられ、落ちているのも、登っているのかもわからない。
だが、暗闇に落ちていく感覚はウメの身体を恐怖させた。
――目覚め。
ベッドから転がり落ちると、泳ぐように身振り手振りをして、
「わぁあ――うああああ」とウメは喚いた。
その姿を呆れと安心したような表情でクウは眺めながら、
「おはようさん」と声をかける。
「あ、あれ、私……」
クウの声に気づいてガバっと起き上がると、着物が乱れていたので顔を真っ赤にしながら慌てて直し始めた。
「フッ。お前、5日も寝てたんだぜ?」
「え、そんなに……おはよう……クウ」
ようやくウメは現状を理解し始めると挨拶をしたが、その瞬間にお腹が鳴った。
「うっ……」
「ま、そりゃ腹も減るわな。シャワーも風呂もあるからよ。支度ができたら一階に来いよ。ここはシフォンの隠れ家で安全だからよ。まずは飯でも食えや」
「あ、うん。わかった……」
「それから、もうその着物ボロボロだろ? シフォンが新しい着物を特注で用意したからよ。そっちに着替えな。んじゃあとでな」
「う、うん。ありがとう……」
クウが部屋を出ていったので、ウメは改めて自分の姿を確認した。
「ホントだ……もうボロボロだなぁ、この黒い着物……」
そして、シャワー室って言葉を思い出し、慌てて服を脱ぎ始める。
5日も寝てたということは、それだけお風呂に入ってなかったことになるからだ。
だが、服を脱ぎ始めてすぐに――ドアが開けられた。
「それともうあんな無茶すんなよ……あっ」
顔だけだして声をかけてきたのはクウだったが――ウメは半裸の状態で固まる。
「御馳走さん」
それだけ言うとクウはドアを閉めた。
震えながら大きく息を吸い込み――ウメは叫んだ。
「バカァ――――!」
屋敷中にウメの大声が響き渡ったのだった。




