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空のパンドラ  作者: 真野紀由
第三章 -まどろみの中で-
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第二十七話「落ちる夢」

 ――夢。


 真っ白な空間。

 どこまでも真っ白で、地面からは白い煙がうっすらと溢れだし足元を覆っている。

 気がつくとウメはそこに立っていた。


 小さな光の粒も周辺に漂っていて、幻想的な雰囲気を醸しだしている。

 その小さな光にウメが触れると、光の粒は四散して――消えた。


「ここはどこ……私は……」


 周囲を見渡し、ウメは一人の人物を探す。


「クウ――どこにいるの……私を一人にしないでよ……」



 歩いても、ずっと白い世界は続いている。



 ふと、遠くから声が聞こえた気がした。

 その方向に足を進めるも――なにをしゃべっているのかは聞き取れない。



「誰なの?」


 声をかけながら、ウメは声がしたと思った方向へ足を進める。



『わた……は……プ……ナ』


 少し聞こえた。でもノイズが混じったように、まだハッキリとは聞き取れない。

 それでも透き通るような美しい女性の声のようだった。




 突然。

 背後から人の気配がしてウメは足を止めて振り返ろうとするが、何故だかまるで金縛りにあったように振り返れない。


 そして。

 今度はハッキリとした声で聞こえた。



『あなた、このままだと――』



 透き通るような女性の声は、今度は鮮明に背後から届く。

 一息ついた後に、その続きがウメの耳元で囁かれた。



『死ぬわよ』



 その突如。

 足元が真っ暗になり、ウメは落ちるように闇に吸い込まれた。

 真っ白な世界は真っ黒に染め上げられ、落ちているのも、登っているのかもわからない。

 だが、暗闇に落ちていく感覚はウメの身体を恐怖させた。






 ――目覚め。


 ベッドから転がり落ちると、泳ぐように身振り手振りをして、

「わぁあ――うああああ」とウメは喚いた。


 その姿を呆れと安心したような表情でクウは眺めながら、

「おはようさん」と声をかける。


「あ、あれ、私……」


 クウの声に気づいてガバっと起き上がると、着物が乱れていたので顔を真っ赤にしながら慌てて直し始めた。 


「フッ。お前、5日も寝てたんだぜ?」

「え、そんなに……おはよう……クウ」


 ようやくウメは現状を理解し始めると挨拶をしたが、その瞬間にお腹が鳴った。


「うっ……」

「ま、そりゃ腹も減るわな。シャワーも風呂もあるからよ。支度ができたら一階に来いよ。ここはシフォンの隠れ家で安全だからよ。まずは飯でも食えや」

「あ、うん。わかった……」

「それから、もうその着物ボロボロだろ? シフォンが新しい着物を特注で用意したからよ。そっちに着替えな。んじゃあとでな」


「う、うん。ありがとう……」


 クウが部屋を出ていったので、ウメは改めて自分の姿を確認した。


「ホントだ……もうボロボロだなぁ、この黒い着物……」


 そして、シャワー室って言葉を思い出し、慌てて服を脱ぎ始める。

 5日も寝てたということは、それだけお風呂に入ってなかったことになるからだ。


 だが、服を脱ぎ始めてすぐに――ドアが開けられた。

 

「それともうあんな無茶すんなよ……あっ」


 顔だけだして声をかけてきたのはクウだったが――ウメは半裸の状態で固まる。


「御馳走さん」


 それだけ言うとクウはドアを閉めた。



 震えながら大きく息を吸い込み――ウメは叫んだ。




「バカァ――――!」


 屋敷中にウメの大声が響き渡ったのだった。

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