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空のパンドラ  作者: 真野紀由
第二章 -迷いの森-
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第十五話「迫る影」

 クウの人差し指が淡い光を帯びて夜の森を照らしたが、そんな指先を魔法でも見るかのようにウメが見ていると――光はすぐに消えた。


「これが魔気(マキ)だ。まずは魔気が感じられるようにこれをやってみろ」

 顎をくいっとウメのほうにやって、クウは同じことをやるように促す。


「よーし……」

 人差し指をたてるとウメは集中した。


「むぐぐ、う――、ぐぬぬ……」

 妙な声をだしながら指に力を込めてみるが、一向に光る気配はない。力をいれすぎて顔もプルプルしはじめる。


「はい、やめ!」

 両手の手のひらをパーンと合わせてクウは音を鳴らした。

 音にびっくりしてウメは落ち込んだ。なにをやっても上手くできない自分に影を落とす。


「ご、ごめんなさい……」

「あ? なにが?」

「できなくて……」


 白い刀を抱きかかえるようにウメは力をこめる。その肩は震えていた。不器用な自分に愛想をつかされるのが怖かったのだろう。だが、そんなウメに投げかけられた言葉はまったく違うものだった。


「あのな、最初っからできるわけねーだろ? 俺はこんな性格だからハッキリ言っとくぞ。最初から理解しろ、出来ろ、とは言わねぇ。けど、諦めるやつには何を教えても無駄だと思ってる。言ってることわかるか? できるまでやりゃーいいんだよ。やる気を見せろウメ」


「でも……私どんくさいから……」

「だから?」

「できるかわからないし……」

「わかった。じゃあ選べ。やるのか。やらないのか。どっちだ?」


 白い刀を抱きしめながらウメは瞳に涙をためた。今にも零れ落ちそうだ。


「お前さ、何しに俺を追いかけてきたんだ? 都で安全に暮らせばよかったんじゃねーのかよ? 泣きじゃくるためにきたのか?」

「……」


 返す言葉もなくウメはうつむく。

 一息つくとクウは空を見上げる。


「何もわざわざ危険なことをするこたねーよ。都はもうきついかもしれねーが、どこか大きめな街にいってよ。平和に暮らすってのもいいんじゃねーの? ちょっと一服してくらぁ」


 それだけ言うと立ち上がって森の奥へ足を向ける。今にも泣きだしそうなウメに視線をちらっと向けるが、すぐに森の奥を見据えて歩きだした。




 ウメが見えなくなるところまで来ると、煙草を一本とりだして口に咥えて火をつける。


「言い過ぎたかな……」

 煙をはきだしながら、クウもまた己の未熟さと、本当にウメを戦闘に巻き込んでいいものかと悩んでいた。






挿絵(By みてみん)






 その頃。


 迷いの森周辺に5つの影。そこから少し離れた位置に気配を殺しながら尾行する白いクロークの女が居た。


「やっかいなところに入り込みやがって」

「どーするよ?」

「少し散らばって魔気探知で位置を特定。いつもと同じだ」

「言霊は繋いでおけ。些細なことでも連絡をいれるようにしろ」



 魔気の探知。

 使い手の力量にもよるが、魔気や少量の気を探知する技術。落ち人の能力とは別で誰にでも使えるが、鍛錬は必要だ。


 言霊(ことだま)

 魔気で言葉を包み込んで飛ばして、遠くの相手と会話をする技術。現在でいえば電話のようなものだと思えばいいのかもしれない。以下同文。



「さっきほんの一瞬だが少量の魔気の反応があったぜ。移動している可能性もあるが、そこらを中心に包囲していくぞ」

「よし。ぬかるなよ。それと今回は能力欲しさに殺すなよ」

「抵抗されてもか?」

「上手くやれってこったよ。いいなおめーら」

「了解。いくぜ」


 5つの影は別々の方向に一斉に散らばって迷いの森に入った。

 それを見守っていた白いフードつきのクロークの女はどうしたものかと考え込んだ。その背中には大きな大剣を担いでいる。月明かりで照らされ、すっぽり被ったフードの隙間からは金色の髪が微かに揺れていた。

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