第十四話「わぁ……綺麗」
迷いの森。
焚火の火を眺めながら、ぼんやりとしている二人の姿がそこにはあった。
すっかり夜も更けて辺りは真っ暗だ。
「思ってた以上に……森だな」
「ですね……」
どれだけ歩いても森、森、森。ため息しかでなかった。
横に置いていた白い刀を手に取るとクウは考え込んだ。だが、すぐに行動に移す。
「ほら、お前が持っとけ。着物に刀、合ってるんじゃねーの」
そう言って白い刀をウメに手渡した。
突然のことに戸惑いながらも恐々と刀を受け取る。
「私に使えるでしょうか? というか、初めてのプレゼントが刀って……」
後半の言葉は消えるような声でウメはボヤく。
それでも刀をまじまじと見て気づいたことがあるようだ。
この白い刀にはピンクの帯、というかリボンのようなものが巻いてあったりして……クウには不釣り合いだと思ったのだ。刀に女の子用ってのもおかしな例えだが、そんな感じに思えていた。ウメがそんなことを考えているとクウが口をひらく。
「護身用だな。お前に人が斬れるとは思えねぇ。守るために使え」
「はい……」
「よし。じゃーまぁ、とりあえず能力の使用は禁止だ。俺がいいっていうまでな」
「えっ」
「ばかっ、どっかにぶっ飛んで行かれたらたまらねーよ。禁止だ」
「わ、わかりました」
返事をしながらウメがもじもじしているので、クウは察したような顔をしたが、ウメもそれに気づいてすぐに訂正しようとした。
「違います!」
「あ?」
「あ、いえ……その」
「便所だろ? なんだよ大かよ」
「ちっが――――うぅ!」
ウメの大声で周囲の寝静まった空気が震えた。
「そうじゃなくって、刀です。クウが使う刀が無くなっちゃいますよね」
「あ、あぁ。そっちか。見てろ」
「?」
立ち上がるとクウは両手をかざす、一瞬の光のあとに何もなかった空間からいきなり黒い鞘の刀が現れた。
「どぉよ? ウメ」
「え、え、なんで」
「ふふ、こいつぁー魔気の具現化つってな。お前にはまずこの魔気の使い方を学んでもらうぜ」
「は、はぁ……」
黒い鞘の刀を消すと、クウは座り込む。
まるでマジックでも見たようにウメは呆けた顔をしていた。
あの雲の海を太陽が泳いでいた景色を見たときから、クウはウメのことを姫とは呼ばなくなっていた。
ウメはそのことについて直接クウに聞くことはなかったが、自分のことを認めてくれたのではないかと嬉しい気持ちもあり、寂しい気持ちもあり、複雑な気持ちだった。
「んじゃま、能力は徐々に慣れるとして、戦闘の基礎を教える」
クウは焚火に木の枝を追加しながら語り始めた。
「まず、この世界には魔気というものがある」
聞きながら頷くウメ。
「魔法の気、と書いて魔気な。この魔気ってのは攻撃にも防御にも大事なもので、武器や拳に魔気を込めて攻撃力を上げたり、身体の表面をバリアのよう覆って防御力を上げたりするわけだ。戦闘において絶対に必要になるのと、鍛錬するほど強化が出来るのが特徴だ。俺がクマを一撃で倒してたのも魔気を込めてたってわけだ」
淡々と説明しながら、
「ここまでいいかなウメ君?」とウメに確認を入れる。
額に汗を浮かべながら、
「は、はい」と返事をしたウメを見たクウは真顔になって言い放つ。
「わからないならわからない、わかるならわかる、だ。わからないのにわかるって言うのが一番ダメだからな」
「ごめんなさい。よくわかりませんでした……」
ウメビクっとなって小声で言いながらシュンとした。
「よろしい。んーそうだなぁ……」
頬をポリポリかきながら、クウは思案した。
「んじゃ、言葉より目で見たほうがはえーかな」
言いながら人差し指を立てた。
「ウメ、俺の人差し指をよく見てろ」
涙目になりながらも、ウメはクウの人差し指を見ると、その瞬間クウの人差し指の表面が光に覆われた。
指の周りを光の幕が包んでいるような感じだ。
夜なので余計に光って見える。
「わぁ……綺麗」
素直な気持ちを声にだすとウメは目を輝かせた。




