序章
空のパンドラのリメイク作品となります。
改稿というよりは全書き直しですね。より面白く、細かくしました。
ストーリーの本筋は変わりませんが、描写されていなかった部分やエピソードが追加されていたり、一部変えてたりはします。
よろしくお願いします。この作品はノベルアッププラスで先行して投稿されています。
その世界の名は――スフィーレア。
そこに住む住人は空から落ちてくる『落ち人』を恐れた。
落ち人とは、空から落ちて来る異世界の侵入者。
ほとんどの落ち人はそのまま落下して死んでしまうのだが――
稀に能力に目覚め――生き残る落ち人がいるのだ。
能力――
スフィーレアの住人には無い力。
落ち人によって、その能力は様々で恐ろしいものとされていた。
もっと恐ろしいのは落ち人は落ち人を殺すことで――
その能力を自分のものにできる――
故に落ち人は戦乱を巻き起こす危険な存在なのだ。
住人達は落ち人を恐れ、忌み嫌い、迫害する。
落ち人のほとんどが自身が落ち人というのは隠して、その世界では生きていた。
そして――
二人の落ち人が出会うところから
この物語は始まる。
夜の寂れた公園のベンチ、よれたスーツを着たサラリーマン風な男がくたびれた様子で座っている。暗闇を照らすはずの外灯は寿命がきているのか点滅を繰り返していた。
「毎日、残業残業……なにが楽しいのやら……」
誰に聞こえるでもなく呟き、胸ポケットから煙草の箱をとりだすと、残り一本の煙草を口に咥える。その煙草に火がつけられることはなく、ぽとりと公園の地面に落とした。疲れてしまってそのまま男は眠ってしまったようだ。
(誰かが呼ぶ声がする……風を……感じる)
ゆっくりと男が目を開けると――。
「な、なんだこりゃああああ――」
見渡す限りの空、空、空。地面には広大な大地が広がっていた。いきなり高所からのロープ無しバンジージャンプに男はパニックになる。落下の風圧で顔が歪む。さらに異変に気付く。スーツ姿だったはずなのに、上半身には何も着ておらず、下には袴のようなものを履いていた。
「どうなってんだこりゃ――てか、死ぬ死ぬ、これ死ぬだろ――夢か、そうか落ちる夢か……ハハ……」
地面が近づく。死を覚悟して男は目をつぶる。
その直後、ふわっと何かに抱きかかえられて着地すると、地面に下ろされて男は尻もちをつく。
「やぁ、一応、聞くけど何度目だい?」
手を差し伸べながら凛とした声で尋ねる少女の笑顔が、いつまでも男の記憶に残った。
それから数ヶ月――――。