悲喜交々
悲しい色の泥沼に 嬉しい色のはす一輪
沼の真ん中 咲いていた
僕は泳いでそこまで行く。よじ登って、はすの葉に背を預けて下からピンクを見上げてる。
「ああ、これだから僕はカエルをやめられない」
ちょっと体が乾いてきたので、また沼に入る。
――― ――― ―――
山手線の電車の中で僕は一人うつむいている どこか遠くに行きたくて
いろいろ社会が嫌いになって、いろいろ皆が嫌いになって
新宿、渋谷、まだまだだ。もっと遠くもっと遠く…
「次は池袋、池袋」
僕はその声にハッとする。
どうしてだ、どうして、もとに戻っている?
僕は一瞬パニックだったが、すぐに分かった、理解した。
理解すると同時に思わず車内で吹きだした。周りの視線は冷たかったが全くもってお構いなしだ。
「ああ、これだから僕は人間をやめられない」
観念と満足を同時にして、僕は池袋で降りた。
短いですがお読みいただきありがとうございました。