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決着への方程式

更新遅くなってしまい申し訳ございません。

用事が次から次へと立て込んでおり、貯めていました。

これからはこのようなことはないようにしていきますのでどうぞよろしくお願いします。


ではどうぞ!

 六月の強烈な右ストレートにより吹き飛ばされた鴻上は貯蔵庫におり、その瞬間を見ていた周りの人間たちは驚愕していた。さっきまで死にかけていた人間が立ち上がりそして、鴻上をそこそこ遠い貯蔵庫まで殴り飛ばしたのだ。

 普通ならばありえない。それが能力保有者アビリティホルダーならばまた話が別だが……。だが今日実施された測定では六月はステージ0の凡人であった。クラスが違っても一学年一斉に行われたことなので、知っている人間もいるはずだ。

 だからこそ、このありえない状況を説明できる人間なんて誰もいない。本人でなければ…………。



「あいつ、どうなってんだよ!?さっきまで死にかけていただろ!?」


「私だって知らないわよ!?意味がわからないもん!」


「もしかして、能力保有者アビリティホルダーじゃないのか!?」


「確か、あいつステージ0だって言ってたぞ?」



 周りの人間たちからは様々な憶測が飛び交っていた。しかしどれも説明がつかない。それどころか謎が深まっていくばかりだ。

 桜の木の下に座っていたシルフィはさっきまでとは明らかに違う六月に戸惑いを感じた。そして恐る恐る本人の名前を呼んだ。



「む、六月?だ、大丈夫?怪我とか…?」


 友人であるシルフィに名前を呼ばれた六月は凛々しくも険しい顔から穏やか笑顔を見せてシルフィを安心させた。

 ただ、さっきまで受けていた傷がなくなっていることだけが不自然ではあったが…。


「あぁ、大丈夫だ。安心しろ。お前のことは俺が絶対に守るから。」


 にっこりと優しい笑みをシルフィに見せた。その笑顔に彼女の頬が紅く染まり照れていた。

 男の人が自分を守ると言ってくれるなど、女子たちにとって羨ましいシチュエーションであろう。そして彼の言葉にドキッとさせられた。

 六月は穏やか顔からまた凛々しい顔つきに変わり、再び鴻上のいる貯蔵庫を見て一歩一歩足を進めていた。




「ぐぅぅ……いっってぇ!!!一体どうなってるだよ!?どうしてあいつが!?」



 鴻上からしてみれば何が何だか全くわからない。さっきまで、光の剣で斬られたりあれだけ蹴りつけたりしたにも関わらず、あそこまでの力がどこに残っているんだ。そう思っていた。

 殴り飛ばされた、鴻上は棚に叩きつけられて、患部を抑えていた。


「鴻上……。お前を許さない。覚悟しろよ?」


 貯蔵庫のドアは鴻上がぶつかった衝撃で破損しており、ドアのない入り口から六月が現れた。


「なんで…?お前…傷が治ってるだよ!?俺は確かに斬った筈だぞ!?」


「あぁ、なんでかってか?それは喰った(・・・)からだよ。」



 喰った?全く意味がわからない…。何故六月は傷が治ったと表現しなかったのか?比喩のようなものであるのか、なんにせよ鴻上は不可解な出来事が起こり理解が追いつかなかった。


「くそ、まだ…これからだ…。これでもくらいやがれ!」


 ゆらゆらと傷ついた身体を起こして六月を見た鴻上は痛みに耐えながら大きな光玉を手のひらに生成し六月へと投げ飛ばした。

 しかし、その光は六月のとこへくるや否や、瞬く間に消滅をした。


「な、なぜだ…。なぜだ!!?お前に確かに飛ばしたはずだぞ!?」


 普通ならありえないような事態に鴻上は理解がおいついてはいなかった。

 逆に六月の方は、鴻上のようには驚きせずに真顔で鴻上を見つめていた。


「あぁ、それならお前のうってきた光の弾は俺が喰った(・・・)よ。」


喰った(・・・)…だと…?」


「ただの独り言だ。気にするな。」


 六月の言葉の意味と現象の辻褄つじつまが合わない。鴻上は頭の中で思考を巡らした。

 一体、どのような方法で光の弾を消滅させたのか。もしそのようなことをできるとするならば、そいつは能力保有者アビリティホルダーくらいである。

 だが、六月は能力保有者アビリティホルダーではない。だとすると一体……。

 すでに、戦闘から時間は経ち、日は西へと沈みかけていた。


「そろそろ、決着をつけようか鴻上。」


「なに…?」


 六月からの思わぬ言葉に、しかめた表情をした。決着をつけようかということは、勝てる切り札をもっているのか?それとも万策尽きて負けようとしているのか?だが、六月の顔を見る限り後者はない。

 どちらかと言うと、自信ありげで勝ち誇った顔のようにも見えた。

 薄暗い貯蔵庫の中では、光の力を操れる鴻上の方が上であろう。それにもかかわらず六月の表情は変わらない。


「ふん…すぐに終わらせてやるよ。こいつでな!!」


「っっっ!!!!」


 鴻上の背後に先ほどとは比べ物にないほど無数の光の弾が現れた。その数に六月は冷や汗を思わずこぼした。


「しねぇぇぇ!!!!」


 四方八方に飛び交う弾。交わした先にまた光の弾が現れ限りがない。飛び交う弾左へ避けると、偶然鉄パイプが置いてあり、それを掴み鴻上の方へと向かって走った。

 そしてある程度の距離思いっきり振り下ろした。


 ガキン!!!!!


「ほぉ…。やるじゃねぇか。だがその程度では俺には勝てねぇよ!!」


「そんなのやって見なければ、わからねぇだろ!?」


 光の剣と鉄パイプによる幾度もの鍔迫り合い。どちらも隙を見せずに互角の戦いが続いていた。

 鍔迫り合いにより扉よりさらに奥へと進んでいくと、いよいよ、周りは光が一切なく目視では確認しにくい状況となった。

 見えにくい状況から手元が見えずに六月の握っていた鉄パイプは吹き飛ばされてしまった。


「しまった!」


「終わりだ!!」


 トドメとばかりに光の弾を打とうと手のひらを六月へと向けた。

 流石にこの距離では為す術もない。そう思ったのだが…。

 手のひらからは光は一切現れなかった。


「な、なに!?なぜ現れないのだ!?」


 トドメをさせたはずの鴻上が光を出さなかったことに疑問をもった。いや、出さなかったのではない。出せなかった(・・・・・・)のだ。

 そして六月は頭の中でこのことについては考えた結果、ある一つの仮定へと行き着いた。


「もしかしたら……あいつの能力アビリティ光がある場所(・・・・・・)でなければ使えない?」




 六月は戦闘中に野次馬の中にいた男子生徒の話を思い出した。

 あの時男子生徒は、11人の天才(イレブンジーニアス)に匹敵する能力の持ち主と鴻上のことを評価していた。

 しかし、逆にいえば鴻上は、あれほどの能力アビリティを持っていながら11人の天才(イレブンジーニアス)の1人ではないということである。

 11人の天才(イレブンジーニアス)は11人しかいないステージ4の能力保有者アビリティホルダーのことである。

 彼らは桁違いの強さと能力を持つことから他の人間から畏怖と尊敬の眼差しで見られる。

 彼らの能力アビリティには殆ど欠点が存在しない、まさに完璧な存在なのだ。鴻上の光子集束フォトンフォーカスは強力な能力だが、ステージ4ではない。

 つまり、何かしらの欠点があることを意味しているのだ。おそらく、欠点というのは六月が言ったようなことであろう。


「な、なぜ光が現れない!?」


 しかし、鴻上の方は事情が理解しておらず、焦りの表情が見えていた。

 ただ今の状況を見逃すほど、六月は甘くなかった。光が現れず焦って注意力が散漫になっている鴻上へ思いっきり右ストレートを食らわせた。


「うらぁ!!!!」


 ゴキ!!


「ごは!!!!?」


 六月の渾身右ストレートは鴻上の左頬を歪ませた。あまりの衝撃に切ったのだろうか、赤い血が少々口から飛び出た。


「まだまだ!!うおりゃあぁ!!!!」


 今度は左で回し蹴りをして追い打ちをかけていった。体制が崩れてしまった鴻上に今までやられた鬱憤を晴らすが如く強烈なラッシュを食らわせた。


「ぐはぁっ……!!ごほ!ごほ!てめぇ…。」


「やられたぶんは…きっちり返すぜ。」


 あっちこっちアザだらけになった顔で六月を睨みつけた。痛みにより、少し苦痛に歪んだ顔には、先ほどの能力の無作動ついての理解不能を示しているようであった。


「鴻上。お前の能力アビリティ確かに、強力だ。だがな、光がないところでは、お前その能力も無意味なんだよ。」


「っっっっ!!!?ばかな…。」


 六月は膝まづいていた鴻上を見つめ、鴻上の能力アビリティの欠点を伝えた。

 当然、能力を今まで使っていた鴻上からしてみれば、六月のいうことなど信用ができなかった。しかし、今までを思い返してみれば、夜でも光のある所では能力アビリティを使ってはいたが、全く明かりのない暗闇では使ったことがないことを思い出した。


「まさかそんなはず…。でも…もしそうだとしたら……ま、まずい!!」



 鴻上は今更ながら気がついた。もう西の空へと太陽は沈みかけていた。

 つまり、光のあるものである光源こうげんがなくなるということだった。六月の言っていることが本当ならば、能力を使うための重要な光がなくなり、能力が全く使えなくなってしまう。

 そうなってしまえば、ステージ0の一般人同然である。


「くそ!!!負けてたまるかよ!!」



 鴻上は慌てて入口の扉の方へと、猛スピードで駆け出した。彼のその行動を止めようと六月も走り出すものの、間に合いそうにはない。

 そこで先ほど鍔迫り合いの際に飛ばされた鉄パイプが転がっていた。それを拾い上げ鴻上へと振りかぶって投げつけた。


 ゴス!!


 そして回転する鉄パイプは六月の思い通りに鴻上の足付近へと見事にあたり、鈍い音が鳴った。

 あまりの痛みに倒れ足を抱えながら悶絶していた。



「ぐぁぁぁ!!!てめぇ!鉄パイプを足に…!!ぐっ…うぅ!」


「これ以上戦いは長引かせられないんだよ!」


 鴻上は痛む足をおさえて怒り叫ぶが、大きな声を出せば傷へと響き更なる激痛をうんだ。

 そして六月は足に鉄パイプがあたり怯んでいる鴻上に、ここぞとばかりに拳を掲げて襲いかかった。


 バキ!


 先程同様の鈍い音が貯蔵庫内に響き渡った。六月の猛攻にただ受けることしかできない鴻上は防戦一方となり、もはや勝敗は喫したかと思われた。

 しかし、いつまでも攻撃を受けるだけの鴻上ではない。

 彼はステージ3であり、11人の天才(イレブンジーニアス)に近い男であるのだ。


「調子に乗りあがって……。うらぁ!!」


「ぐはぁぁ!!」


 拳の雨に打たれていた鴻上は隙を見つけ、六月の腹を思いっきり蹴り飛ばした。

 そして、それを確認すると先程負傷した足を引きずりながら、貯蔵庫を出ていった。


「六月大丈夫かな…」


 鴻上と六月が戦闘を続けている貯蔵庫を木の影から見ている銀色の髪の女性シルフィはポツリと六月を心配する言葉を呟いた。

 もうかなりの時間が経過しており、日はほとんど沈みかけていた。そのためか、今までいたギャラリーは消え去っていた。彼らにとっては所詮、他人事なのだろう。

 そんな中、貯蔵庫から誰かが足を引きずりつつ出てきた。


「あ!むつ……き……。」


 彼女が見たのは、先程襲われそうになっていたところを助けてもらった者ではなかった。

 自分に光の刃を向けてきた男 鴻上達央こうがみたつひさであった。

 足を引きずり、いくつかの傷のある鴻上を見て中での戦闘がいかに激しかったかが理解出来た。それと同時に、不安にもなった。

 六月はどうなったのか?ということだ。


「六月は…六月はとうなったの?」


 彼女は目から薄らと涙がこぼれていた。自分を庇ったばっかりにこのような事態を招いたことに責任を感じていたのだ。

 彼女は力が抜けたようにその場に座り込みポツポツと地面に涙を落としていた。


「こうなったら……。あいつを…。」


 足を引きずりながら貯蔵庫から出てきた鴻上は、木の影で座り込み泣いているシルフィに目をつけた。

 もはや手負いの自分にはこの道しかないと確認した鴻上は、僅かに沈んでいない太陽の光を頼りに、光で縄上の物質を作り出した。

 そして、それをシルフィにめがけて投げ飛ばし、彼女の身体を拘束した。


「い、いや!離して!!うぅ!」


「てめぇは人質だよ。あいつが攻撃してきた時の盾にしてやるよ。」


「ふ、ふざけないで!!どうしてこんなことをするのよ!?」



 拘束されたシルフィは必死に解こうとするものの、普通の縄と違い、びくともしなかった。

 そして、自分を拘束してきた鴻上に対し、怒りを込めた眼差しで睨みそして一連の行動について問いかけた。

 その言葉に鴻上は少し間をおき口を開いた。


「俺は俺を見下しているあいつら(・・・・)を見返すために負けられない。

 誰が相手だろうと、どんな手を使っても負けるわけにはいかないんだよ!!!」


 彼の瞳は、怒りや悔しさ、妬みの混ざったような瞳をしていた。

 そして彼の光の縄を握っていた手がさらに強くなった。そこから伝わってくる、彼の感情がなんとなくではあるが、シルフィに伝わってきた。


あいつら(・・・・)って誰…?」


 恐る恐る、シルフィは鴻上に聞いた。彼の感情を刺激しないように慎重に。

 その言葉を受けた鴻上は未だに怒りや悔しさなどを詰まらせた瞳をしていたが、少し穏やかな口調シルフィに言った。


11人の天才(イレブンジーニアス)だ。」


11人の天才(イレブンジーニアス)…。」


 この異能都市エデンで生活をしているものならば誰でも知っている言葉であった。

 エデンにおいて、天才という言葉は彼らを意味する。読んで字のごとく11人の天才と言われる能力保有者アビリティホルダー

 彼らは、1人1人が化物じみた強さを持っており、畏怖と尊敬の眼差しで見られている。


「俺は、あいつら初めて会ったとき言われた。 クズならクズらしくしてろってな…。」


 シルフィは鴻上にの言葉に衝撃が走った。ステージ3である鴻上がクズ扱いされるとは、一体11人の天才(イレブンジーニアス)とは何者なのであろうか…。

 同時に彼に対して同情のようなものを感じた。

 彼の気持ちは彼にしかわからないが、誰だってあのような言葉を言われれば悔しいはずだ。見返したくなるはずだ。

 だがしかし、今現在の行動を肯定することはできない。


「あなたの気持ちわからないでもないわ…。でも、今はそれとこれとは話は別よ!!あなたがやっていることは間違ってる!!」


「うるせぇ!!てめぇに俺の気持ちがわかるわけねぇだろ!?あいつらの見下した眼差しを知らないだろ!?俺はあいつらを殺したいほど憎い!!」



 縄の縛りがどんどん強くなっていく。身体にくい込んでいき、痛みを伴ってきた。

 それでも、シルフィは発言をやめることはしなかった。


「確かに私は貴方じゃない…でも、同じ人間よ!!だから悔しさや妬み、憎しみだってわかる!!」


「おい、調子に乗ってんじゃねぇぞ?お前は人質なんだよ。俺に対してそんな口を聞いてんじゃねぇよ!?」


 鴻上は怒りを込め思いっきり光の縄を引っ張りシルフィをこちらの方へと引き寄せた。そして、勢いについていけず、シルフィは地面に這いつくばった。


「うっっ!もうやめましょうよ?こんなことしても意味はないわ。」


「もう後戻りなんてできねぇよ。」



「あぁ…そうだな…。」


 シルフィが鴻上を説得しようと試みた時に、先程まで激闘が繰り広げられていた貯蔵庫の方から声がした。

 そして、ゆっくりとこちらへと歩いている男。戦闘によりボロボロになった制服。

 しかし、そこには傷は一つもなく綺麗な肌をしていた。


「鴻上…。お前の気持ちはなんとなくだが、分かった。だから俺はお前に敬意を表して、俺の能力ちからを見せよう。」


「えっ?能力ちからって何よ?六月はステージ0でしょ?」


「なんだと…?」


 その瞬間、空気が変わった。なんとも言えない禍々しさが3人の周りを多い尽くした。


「あ、あれ?縄がなくなってる…。」


 シルフィは今まで自分の身体に巻きついていた。光の縄が消えていることを確認した。

 しかし、何故このようなことになったのか全く理解ができなかった。

 だが、それは鴻上も同じである。先程の戦闘において六月の放った言葉に何か違和感を感じていた。

喰った(・・・)」一体何を喰ったのだろうか。それだけが疑問として頭に残っていた。

 そして、六月はそんな理解が追いついていない2人に自分の能力ちからについて重々しく述べた。


「俺の能力アビリティは…現実を喰らい…無にする能力…。」


現実喰者リアルイーターだ。」

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