第7話 始まりの使者
中1女子と登校する高2男子ってやばい感じがしますね。
う、眠い。
朝のようだ。
今日からは、AAに通わなければならないため早く起きないとならない。
が、遊び疲れか眠い。
しかし、愛に迷惑はかけられない。
あ、顔を洗おう。
よし、すっきりした。
支度をして、宿の前で待つ。
今の時間に便利箱を使ってみるか。
どうやって発動すればいいんだ?
意識すると頭の中に思い浮かんだ。
「ロストアーク」と言えばいいようだ。
詠唱扱いではないらしい。
まぁ、俺の中二心をくすぐるからいいけど。
うん。
ただのアイテムボックスだわ。
便利だけどね。入るのは、100種類×100個みたいだ。
とりあえず、木刀と昨日ドロップした水の素18個をしまっておく。
そこで、愛が出てくる。
「お待たせしましたー」
「じゃあ、行こうか」
一緒に学園へ行き、それぞれのクラスへと向かう。
後輩と2人で登校とか幸せだわ。
座席が決められて、そこに座る。
とりあえず、前後の男子くらいとは喋れるようになっておきたい。
まずは、前の男子から。
「俺はかなんっていうんだ。名前教えてもらってもいいか?」
「お前さー⤴何言ってんの?」
いやいやいや。
おかしいだろ。
何言ってんの?こいつは。
あ、もしかして、もしかしなくてもやばいやつだ。
「名前聞いたんだけど」
「はぁあー?⤴分かってるし。赤ん坊でもわかるだろ。そんなの」
え、分かってんの?
驚きなんだけど。
というか赤ん坊はわかんないだろ。
関わらない方が良いと思ったけどおもしろいなこいつ。
だんだんおもしろくなってきた。
おもしろついでに突っ込んでみるか。
「赤ん坊はさすがにわかんないだろ」
「はぁあー?⤴死んどけっ」
はい!2度目の「はぁあー?↑」いただきましたー↑
あー、テンション移ってきた。
ちなみに彼は首ひねりながらブツブツ言って教室から出て行きましたよ。
もうすぐホームルーム始まるんだけどな☆
担任が教室に入ってくる。
「お前」
「きりーつ、礼」
あてられた生徒が突然号令をかけた。
そういう仕組みなのだろうか?
こわっ。
出欠の確認になる。
さっきのやつはまだ帰ってきていない。
「えー、半澤か。どうなってんだよ」
「さっきまで教室にいましたよ」
クラスの誰かが答える。
あいつ半澤っていうんだ。
「あいつ何しに来たんだ?はっはっはっ」
クラスに笑いが起きる。
「それじゃあ、今日の課題を発表するぞー。他学年と2人1組になり、明日までに依頼を達成してこい。できなかったら除名だからなー。気をつけろよー。ふっふっふ」
そのため、愛と一緒にクエストに行くことになった。
ラウンジに行き、受けるクエストを選ぶ。
受けたのは、平原の調査依頼だ。
報酬は6800ヴェル。
金額はまあまあといったところだろう。
初めてのクエストで失敗するのも印象が悪いだろうし、この依頼に決める。
「あい、この調査依頼でいいか?」
「了解です!」
そして、目的地の平原へと向かう。
アングィス平原というらしい。
アングィス平原は、アイシクルの正門である北門からでて、2時間ほど歩いた場所にある。
このクエストは、エルフの国との間にある大きな川にかかる橋の近くで嫌な気配を感じたので、調査して欲しいとのことだった。
橋のあたりに着き、しばらく調査するが、何も異変は感じられない。
愛と話し合い異変なしという調査報告をする方向で意見がまとまり、橋を渡る。
この橋は竜王橋というらしい。もともとは、竜大橋だったそうなのだが、いつの間にか変わっていたそうだ。
橋のいたる所に竜のモチーフがある。
愛と話しながら、橋をちょうど半分まで渡ったとき、突如、魔法陣が現れた。
「あい!下がれ!」
「は、はいっ。」
緊迫した空気が流れる。
俺はとっさに便利箱を出現させる。
「ロストアーク!」
中から木刀を取出し、構える。
そこで、魔法陣が消え何者かが切りかかってくる。
すぐに対応するが、鍔迫り合いになる。
力が強い。
なんとか、押し返す。
その何者かが言葉を発する。
「我は、竜人の騎士なり。主の命に従い、お前を討つ」
唐突の名乗りに少々うろたえる。
しかしすぐに持ち直し、意識を集中する。
敵が動く。
剣道の時のことを生かし、はじいていくが、こちらの刃こぼれがひどい。
さすがに木刀じゃ無理か…
一撃で決めなければこちらがやられる。そして、長くはもたないだろう。
思考しろ。
考えろ。
考えろ。
考えろ。
頭をフルスピードで回転させる。
「先輩っ」
愛の声で活路を見出す。
だが、おれにできるだろうか?
いや、できるかじゃない、やらなければ愛を守れない。
やれる。やつが切りかかってくる。
俺は、体制を崩す。
竜人騎士が不敵な笑いをこぼす。
そこで、初めて竜人騎士に一瞬の致命的な隙ができる。
そこを逃さずに一閃する。
竜人騎士が吹き飛び、川に落ちる。
竜人騎士が流されていく。
深追いは危険だろうと判断しそこで、一息つく
「ふぅ、あい大丈夫か?」
「あ、大丈夫です」
「あいのおかげで助かった。ありがとう」
「私はなんにもしてないですっ!」
俺はそこで、意識を失った。
「んっ」
俺は…そうか竜人騎士と戦って意識を失ったのか。
やわらかい感触を感じる。
光がまぶしく焦点が合わない。
「あのっ、そのっ、先輩、あんまり動かないでください」
なぜか顔の赤い愛の顔が至近距離にある。
シキンキョリ?
これはっ!!
伝説の膝枕というやつではないのだろうかぁぁぁああ!!?
横に転がり膝枕から脱出する。
脱出?
おれは本当にこれでよかったのか?
とんでもない損失だったのでは?
思考がまとまらない。
「先輩、動けそうなら街に戻りましょうか」
「あ、ああ。そうだな」
そのあと、2人でまともな会話もできずに、街まで戻った。
街に着き、愛はラウンジに報告に行った。
俺は商店街をふらふらしている。
この街は半分が水に浸かっていて、残り半分は普通の街とさほど変わらない。
水に浸かっているほうは、船で移動する。
俺は今水に浸かっていないほうにいる。
そろそろ真剣を持っていたほうがいいと考え、武器屋を探している。
なにやら街の正門のほうが騒がしい。
どうしたのだろうか。
近くの店の店主に聞いてみる。
「あぁ、ドラゴンが出たらしいんだよ。どうせ騎士団の連中が倒すだろうがドラゴンを倒せれば一人前の魔法使いとして認められるからな。そういうやつらと野次馬が集まってこの騒ぎだろう。よくあることさ」
「そうか。ありがとう」
「いいってことよ」
「また今度よらせてもらう」
「まいど」
正門のほうに向かう。
人混みを進むと数人が戦っているようだ。
ドラゴンは魔法を受け続けていて、動かない。
もう倒せるのだろうか。
突然後ろから押され地面に激突する。
なんなんだ、一体?
すさまじい轟雷の音が鳴り響く。
「早く逃げろ!門を閉めて防護障壁を発動させろー!!」
野次馬たちが一斉に町の中に駆け込んでいく。
どうやら先ほどのパーティーがやられてしまったようだ。
逃げていく人の話が耳に入る。
「さっきのパーティーは竜殺しの奴らじゃないのかよ!?」
「どうやら、メローペ・ドラゴンらしい。雷属性の魔法を使っていたしな。見た目にあまり違いがないので誰も気づいていなかったんだ」
「あの伝説のドラゴンか!?なんでなんだ!?」
そこで凄まじい音とともに防護障壁なるものが発動する。
俺は防護障壁の外にいる。
くそ、ついてないな。
龍からどうやって逃げるか。
考えていると違和感を覚える。
あれは、愛とことねちゃん?
なんでこんなところに。
龍がこちらを見て不敵に笑う。
まるで嘲笑っているかのように。
そして、龍は愛を載せて飛び上がった。
「あいっ!」
必死に追いかけようとすると、不意に頭の中に何かが流れ込んでくる。
「It's not worth trying.」(無駄な努力だ。)
「うるせぇっ!」
龍が飛び去るが全く追い付けない。
突然、雷が地面を穿つ。
何とか身をよじり回避するが、完全にはかわしきれない。
俺は、無力感に捉われながらまたも意識を失った。
この学校は大丈夫なんでしょうか。やばい人が多い気がします。
あ、ちなみに半澤君はAA1年(小5)の女の子をしっかり捕まえて、課題を達成したので除名にはなりませんでした。