第4話 湧水の洞窟
レべリングです。戦闘ペースを速くするために戦闘システムが簡単になっています。次回少し詳しく説明します。途中のみ愛視点です。
ここは、湧水の洞窟という名前らしい。
いわゆる初心者向けのダンジョンだ。
異世界ならあるんじゃないかと思ったんだ。
強くなるために、30分ほど前からモンスターを探し始めたが、一向に出会わない。
この世界ではモンスターの絶対数がとてつもなく少ないと注意されたが、これほどとは。
根気よくダンジョンを探索しているとついに壁掛け松明のある道に出る。
一本道を進むと今までよりすこし薄暗く、広い部屋に出る。
獣の気配がする。
「「ぐるうぅぅぅぅっ」」
「複数体いるようだな。ウォーターウルフか。雑魚だな」
聞こえた威嚇の声で敵を予想する。
俺はバイオリンで、ジプリの名曲「風の通る道」を弾く。
この世界の属性は5つあり、水は火に強く、火は風に強く、風は水に強い。光と闇は相反する。
よって水属性のウォーターウルフには、風属性の魔法を使えばよい。
案の定、風が発生し、狼たちを切り刻む。
「「「ぐるうぅぁぁあ」」」
「3体か。うまくいったな」キリッ
もう息使いが聞こえなくなった。
どうやら倒したようだ。
広い部屋の奥にある小部屋が最後のようだった。
中には台座の上に木刀が刺さっている。
「なぜこんなところに?でも街を回ったときにも、売ってなかったしな。生産されていなのだろうか。だとしたら、拾い得みたいなところあるなー。」
木刀を引き抜く。
すると、青緑の光に包まれる。
気付くとさっきの部屋よりも広い部屋にいる。
その中央に先程戦ったウォーターウルフのような狼がいる。
ただし、サイズが違う。
ウォーターウルフ5匹分くらいの大きさがある。
頭の中に重々しい声が響く。
「ん、挑戦者か。汝の名は?」
「かなんだっ!」
「賢者と言われている小僧にこの空間に囚われ暇なのでな。せいぜいたのしませてくれ」
「ちょっと待て。賢者と言ったか!?そいつとはどこであったんだ!」
「お前が転移してきた湧水の洞窟じゃ。これから火の国に向かうといっておったな。だが、死にゆくお前には関係のないことよ。ではいくぞ!」
「くっっ!」
重い衝撃が体を襲う。
鉤爪での一撃を木刀で受ける。
なんとか攻撃をいなし、巨狼の懐に入り込み切りつける。
すかさず回避する。
巨狼は回避を見越して、鉤爪を振ってくる。
今度は切りつける余裕もなく必死に回避する。
連続で爪が襲う。
木刀で受け続ける。
このままじゃやばい。
鍔競り合いの要領で間合いを取ろうとする。
しかし横から反対の爪が襲う。
「うわぁぁぁっ」
大きく吹き飛ばされる。
まずい、このままは本当にまずい。
一撃離脱での攻撃に切り替える。
もう一度懐へ入り込む。
懐は巨狼の死角になるため、攻撃を受ける心配がない。
しかし、巨狼が後ろに大きく跳ぶ。
「そんなのありかよっ!!」
大きく距離を開けられる。
巨狼が息を吸い込む。
やばい、巨狼に叫ばれたらまずい!
距離を詰める。
速く、もっと速く。
「うぉぉぉおお!!」
跳躍し、額に木刀を刺す。
巨狼は大きくのけ反り、動かなくなる。
「倒せたのか?」
「見事だ」
「なっ!まだ、生きて…」
「案ずるな。もうあと数秒で消える。最後に思い出したことがあったのでな。賢者のことを気にしておったな?奴の名はショーゴというらしい…ぞ」
巨狼の体が徐々に空中に消えていった。
悪い奴じゃなかったのかな。賢者にとらわれたって言ってたし。
ショーゴか。
同じだな。
もし本当ならあいつは悪い。
だが理由があるなら善い。
うーん。
ステータス確認するか。
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名前:かなん Lv.2 学生
HP:13/28
MP:8/95
精神安定度 :B
魔法適正値 :C―
聴音可能度 :S+
音楽理論初 :D―
楽器技巧力 :B
物理防御力 :F―
属性耐性 総合評価 E
火:2 水:6 風:3 光:2 闇:2
アビリティ
《剣術(中)》《魔法》《分析(中)》《言語処理(大)》《適応力》《幸運》
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結構上がってるな。
レベルも上がったし。
「【EXアビリティ:処理速度向上】を入手しますか?」Yesと。
どんなアビリティなんだろう?
この世界のアビリティは説明がないから分かりづらいよな。
まあ、そのうちわかるだろ。
で、どうやって帰ればいいんだ?
かなん先輩と宿で別れた後、愛はベッドに横たわり、今までの出来事を思い返していた。
「異世界かぁ…」
やはり、異世界に来てしまったというのは今でも実感が薄いですけど、それを受け入れてしまうと感情の制御が出来なくなってしまいそうだったんです。
今日は少しやってしまいましたが。
仲良くなったみんなや両親に会えないことがこんなにつらいだなんて思わなかった。
しかも、管弦楽部に入って部活がすごく楽しかったんです。
最初は高校生の先輩とか怖いだけだと思ってました。
でも実際にはそんなことなくて、みんな優しくて、親身に教えてくれて……涙が。
こんな姿先輩には見せられません。
かなん先輩は、いつも一緒に帰ってくれて、おもしろくて。
朝も先輩の練習時間使って教えてくれて。
今も、私のためにいろいろ考えてくれてます。
本当はかなん先輩のこと好きだったりします。
絶対に言えませんが。
6年生になると引退してしまうし、大学受験もあるので忙しいだろうし。
だからこの気持ちは秘密なんです。
整理したら少しすっきりしてきました。
外の空気に触れたくなってきました。
顔が火照っている気がします。
制服の上着を羽織って外に出ようとすると、右のポケットに重みがあります。
なんでしょう?これは私のスマホ?あ!ポケットに入れっぱなしでした!
電波は…だめですね。
そんな都合よくはないですよね。
とりあえずバルコニーに出て、外の新鮮な空気をすいます。
弦楽器の美しい音色が聞こえてきます。
今日はまだ練習してませんでした。
部屋に戻ってバイオリンを少し弾いて眠りましょう。
スマホを机の上に置き、練習します。
するとスマホが光ました。
どういうこと?
画面を見ると私のステータスが。
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名前:塩沢 愛 Lv.1 学生
HP:20/20
MP:232/237(790)
精神安定度 :D
魔法適正値 :A—
聴音可能度 :C+
音楽理論初 :C
楽器技巧力 :D+
物理防御力 :E+
属性耐性 総合評価 E-
火:3 水:3 風:1 光:2 闇:1
アビリティ
《魔力開放(1)》《??》《会話》《言語処理(中)》
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いいのか、悪いのかわかりません。
《??》ってなんでしょうか。
とにかく、ラインできるのでしょうか?
かなん先輩にラインします。
[いまからバイオリン練習しまーす]
すると、目の前に青緑の光柱が立ちます。
視界が青緑の光に包まれる。
次には、地面にたたきつけられる。
痛い。
「え?え?かなん先輩!?」
「あれ?あいだよね。なんでこんなところに…え?」
「先輩ここ私の部屋ですっ。どこから入ってきたんですか?ていうか出て行ってくださいー」
「わっ!ごめんごめんマジで」
「もう。なんなんですか。びっくりしました。」
「なんか気づいたらあいの部屋に」
「はい(笑)、分かりました」
「くっ、信じられていない。あ、それとちょうどよかった。あいに渡そうと思ってたんだ」
俺は買っておいた妖精の髪留めを渡す。
「これ私にですか?悪いです。もらえませんよ」
「いいんだよ。もらってくれよ」
「…はい。ありがとうございます。大事にしますねっ!」
「ああ。それじゃあ、おやすみ」
「おやすみなさーい」
別れて部屋に向かう。
喜んでくれたぜ!
幸せ。
ふぅ。落ち着かないな。
喜んでたよな?
逆効果とかじゃないよな。
自分の部屋のベッドに横になる。
モンスターでのレべリングは危険だな。
何が起こるか予想しきれない。
しっかりと考えないと今日みたいのは悪いな。
というか悪だな。
まぁ、あいに髪留めを渡せたし、喜んでくれたし、今日はすごくいい日だったな!
明日は、AAにも早めにいかなければならないし寝るか。
疲れていたのか、俺はすぐに眠りに落ちてしまった。
やっと戦闘できました。。