第2話 ナナ×情報収集
異世界2日目です。
全然眠れなかった。
だってだって後輩と2人きりの部屋だよ?
同じ屋根の下に可愛い女の子二人とだよ?
健全な男子高校生ですよ?
耐え抜いた俺を賞賛して欲しいねっ‼
でも、後輩に手を出すのはよくないからな。よくないっ!!キリッ
大事なことなので二度。
「あれ、かなん先輩?」
「おはよう、あい。どこか痛かったりしない?」
「え、あ、おはようございます。大丈夫です」
よかったと心の中で安堵しつつここまでの経緯をあいにも話す。
話し終わると愛は、
「異世界なんて楽しそうですね、先輩!」
と無邪気に笑う。
あー、可愛い。
「あの、先輩、えと…助けてくれましたよね?ありがとうございます。あんまりはっきりとは覚えてないんですけど…」
愛が頬を赤らめている。
だからかわいいって。
「ま、まあ、そういうことになるのかな?そ、そんなたいしたことじゃないから!」
としどろもどろになって言うと、愛が、
「先輩かっこいいです」
と囃し立ててくる。
1年くらい前から夜に毎日筋トレしといてよかったと勝利のテーマを脳内に流しながらいるとそこにナナさんが朝ごはんができたことを伝えにきた。
とりあえず顔を洗い席に座る。
この世界のものらしい木の実を頂いた。
食事が終わり、今日の行動計画を立てる。
ナナさんが言うには
「この近くに泉があって、そこにいる精霊様に会った方が良いと思います」
「精霊様ですか?精霊様ってどんな風ですかね?かなん先輩」
「うーん。本物は見たことないからなぁ」
「あなたたち精霊様を知らないんですか!?」
「元の世界にはいなかったからなぁ」
「あ、そうでしたね。精霊様は5属性に分かれていて、それぞれにいます。神の使いだとも言われています。だから粗相がないようにして下さいね。私も行きますけど」
という訳で、愛とナナさんと三人で向かうこととなった。
支度をして向かう、と言ってもたいした支度はないのだが。
「自然が豊かでいいな」
「北にあるエルフの国シルヴィア・アルフではもっとすごいらしいですけど、私はこの国の自然が好きです」
「故郷だからかな?」
「そうかもしれません」
そう言ってナナさんはどこかさみしそうに微笑んだ。
この世界では、特定の場所以外ではモンスターにはエンカウントしないらしく、街の外を出歩いても大丈夫らしい。
そのため雑談を交わしながら泉に向かう。
1時間ほど歩くと、泉のある少しだけ開けた場所にでる。
泉の水に触れると水面が急激に揺れ水が宙を踊り、精霊が現れる。
「私の名前はウンディーネ。水を操る者。異世界の者よ。あなたのことは分かりました。これを
持って行きなさい。この紙は私の力が宿っています。この紙を持ってそこの少女たちとともにアクア・アカデミーに行くのです。それにこれも持って行くといいでしょう。そなたたちの役に立つでしょう」
紙と水の球体が一つずつ俺とあいの前に浮遊してくる。
それに触れると、精霊、ウンディーネは跡形もなく消えた。
静寂があたりを包む。そこで、ナナさんが、
「アクア・アカデミーに通うんですか?」
「そうみたいだ」
「私、実はアクア・アカデミーの生徒なんですよ。じゃあ、かなんさんは今日からあたしの先輩ですね。よろしくお願いします。かなん先輩!ふふっ」
と笑いかけられ可愛いと思ってしまう俺だった。
どうやら、精霊―ウンディーネにもらったもののうち紙の方は身分証明書のようになっているらしい。
もう一方はなんとバイオリンだった。念じるだけでバイオリンと球体のモードを切り替えられるのだ。
腰に付けて携帯できる。
うーん、やっぱり魔法ってすごいな。
毎日部活のために混んでいる電車の中を背負っていたのが馬鹿みたいじゃないか。
心の中で悪態をつく。
愛も同じものをもらったようだ。
俺たちは、状況を整理するのとお昼を済ませるためにナナさんに促されナナさんの家に戻ることにした。
「ナナさん、あの…」
「ナナでいいです。ナナって呼んで下さい。私、後輩なんですから、かなん先輩」
「え、その…ナナさん?」
「…」
「恥ずかしいんだけど…」
「………」
そっぽを向かれてしまった。
「じゃあ、俺にも敬語なしでなら」
「そ、それはちょっと…善処します」
仕方なく、
「じゃあ、えと、ナナ、アクア・アカデミーって?それと、どこにあるの?」
「アクア・アカデミー、略してAAと呼ばれることが多いですが、初等部2学年、中等部3学年高等部、3学年の計8学年からできています。水の国唯一の魔法学校で生徒数は、960人ほどだったと思います。AAは、この国の首都にあります。ここから西にいったところに洞窟があって、そこを抜けた先の水の都アイシクルってところですっ!
3時間はかからないと思います。なのでお昼を食べたらアイシクルに向かいましょう!」
と嬉々として言われた。
名前を呼び捨てするのやっぱり恥ずかしいなと思うが、思いついた疑問にかき消される。
「あれ、でもあの家は?」
「それなら大丈夫ですよ。あの家はもともと父と母と一緒に住んでいたんですけど事故で2人とも亡くなってしまって、たまに遊びに来てるだけですから」
「そうなんだ」
まずいことを聞いてしまったと後悔していると顔に出ていたようで
「全然気にしないで下さいね。私がうーんと小さい時の話なので」
と言われさらに後悔する俺だった。そこでちょうどナナの家に着いた。ナナの手作り料理を美味しく頂いた。これぞ和という感じの栄養バランスが取れたものだった。ナナはいいお嫁さんになるな、うん。
アイシクルに行くための準備をした俺たちは洞窟へと向かった。
洞窟には30分ほど歩くとたどり着いた。
「この洞窟には少しだけモンスターにエンカウントする可能性があるので私たちを守って下さいねっ。かなん先輩!」
「任せろ!」
「わー♪かなん先輩イケメン‼」
内心で少し不安に駆られながらも洞窟の中へと進む。そういえば、愛の口数が少ないような…
「先輩!ウォーターウルフです!」
ナナの声でで思考を中断し、一気に意識を入れ換える。地面に落ちていた長めの木の棒を拾い気合いとともに一閃する。
「はあああぁぁぁぁ!!」
どうやら核の部分に当たったらしくウォーターウルフは派手な音を立て消える。
「よし」
これならどうにかなりそうだと思っていると愛が
「ふわぁ!先輩!すごいです!かっこいいです‼」
「まあ、少しだけ剣道やってたからね」
「けんどう?魔力を感じないし、すごい魔法ですねっ!」
「剣道は魔法じゃない」
最早聞こえていないようだった。
すると、すぐに別のモンスターに遭遇する。
「あ!今度はメタルハムスターですよ!メタルハムスターはおとなしいのでペットとして需要が高いんですけど希少で、高値で取り引きされます。エンカウント率1パーセント以下なんて言われているんですよ。私が捕獲の魔法を吹くので先輩も似たような音で合わせて下さい。効果が高まるので」
するとナナは水の球体をフルートへと変える。
澄んだ綺麗なフルートの音色が響き渡る。
一瞬聞き入ってしまうが、急いでバイオリンにする。
そしてナナに合わせて全く同じメロディーを演奏する。
ナナが驚いた様子でこちらを見るが、すぐにメタルハムスターのまわりに水でできた檻が発生し捕獲に成功する。
「やりましたね、先輩!とういか、どうやって私のメロディーと全く同じものが弾けたんですか?」
「え、ああ、一フレーズ聞いて覚えたから。」
ナナは絶句している。
よく部活のみんなにもうらやましがられたけどそんなか?
「かなん先輩、耳いいですもんね!」
「うーん。ま、大したことないな」
「くぅ。。。すごい…先輩すごいです。…ズルいです」
ナナが誰にも聞こえないように小さな声で言った。
俺にだけは聞こえたが。
ふっ、うれしいな(照)惚れちゃうだろ。
ハムスターを回収し洞窟を進んで行ったが、幸いその後にモンスターに遭遇することはなかった。
そのまま洞窟を抜けると石畳の道があり、その先に大きな街が見える。
ついにアイシクルにたどり着いた。
その頃には、もう日が傾き始めていた。
フルートを吹ける方はすごいと思います。私も練習を時たましていますが、まったくできるようになりません。
ハムスター飼いたいです。