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異常鬼象 「三足と百足と無足」  作者: 溝中海市
第一章
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11話 貼り紙

備考

勅使……帝(天皇)の使者。

「何か貼ってある!」


 集落の門に何か貼り紙があるのが見えて、私は一心不乱に駆け寄った。

 私は(すが)りつくような思いで、食い入るようにそれを見た。


 *

 

  名取の生き残りへこれを残す。

 私は名取とともに盗賊の鵜合(うごう)の衆を討伐の計画をしていた者だ。

 我々の名をここに書けば、あいつらの次の標的にされる可能性があるため残せない。

 もっとも、内通者が居れば我々が誰なのか筒抜けだろうが、念のためだ。


 約束の日時に誰も我々のところに来なかったので、ここを訪れた。村の中の様子は見させてもらった。

 鵜合の衆に襲われたと推し量る。

 この上なく残念だ。

 友たちの死を哀悼(あいとう)する。


 皆を葬っていることから、生き残りがいると思い、一日ここで待った。

 しかし、その日は誰も現れなかったので、我々は戻ることにする。 


 あいつらは我々が思っていたよりもは遙かに強大だった。

 そしていろんな組織に潜り込んでいる。

 とても厄介だ。

 鵜合に加えて、最近はこの熊野で幽鬼の出没までしているとのことだ。

 その二つの嵐に巻き込まれては、新宮の町だったとしても、ひとたまりもないだろう。


 名取衆が亡き今、我々では盗賊の牽制(けんせい)はできても壊滅は不可能だ。

 すでに京都に使者を遣わしているので、勅使(ちょくし)が来てくださるだろう。

 しかし祭りには間に合わない。

 我々は祭りは延期するように町の連中を説得する。


 最後に一つ。

 身を寄せるならば、古き友を。


 *


 その内容は私が期待した物ではなかった。名取の生き残りが残した物ではなかった。


 友を頼れと言われても、余所に友などいない。


 それよりも問題は、勅使が来ることだ。

 そんなのが来たら、私が仇を討つ前に、あいつらを殲滅(せんめつ)してしまう。

 せめて盗賊の頭とあの百足女だけでも私の手で討ちたい。


 だけど、みんなが束になって(かな)わなかった相手に、私一人でどうすれば良いのか分からない。

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