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うどん屋ホステス。  作者: 桃色 ぴんく。
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エピローグ。

 伊藤さんのようなハチャメチャな仕事をするクルーもいるうちの店だが、そもそもはチェーン店の中でも、試験的に建てられた店舗だった。コンビニの跡地で、他のチェーン店よりもかなり小さく、客席数も少ない。正直、最初はどうでも良かった店舗だったらしい。それが、オープンして1年ぐらい経った頃には、25店舗ほどあるチェーン店の中で上位3位以内をいつもキープしている繁盛店になったのだった。







 人気の秘訣は、何を隠そう、やはり私たちホステスがいるからだと思う。確かに、値段の割にはうどんも美味しい。有名な似たような感じのセルフうどんのお店よりも、マイナーだがうちのうどんの方が美味しいと思えるのだ。実際、偵察を兼ねて、ライバル店に食べに行ったのだが、まぁ不味くはなかったが、『ここのうどんを毎日食べるのは、ないかな』という印象だったのだ。仕事をした日は、ほぼ毎日うどんを食べて帰るのだが、うちの店のうどんなら毎日食べれる。それは、うちの店で働いているクルーのほとんどが同じ気持ちだった。きっと、うちの店の味が舌に合う仲間が集結しているんだろう。やっぱり、自分の働くお店のうどんが美味しいと思えないと、お客様に自信を持ってすすめられない。ここで働きだした頃の私は、研修先の大学生のバイトが適当に作ったうどんを食べたおかげで、うどんを美味しく感じなかったことで、どこか自信が持てなかったものだ。しかし、中田店長のおかげで、作る人によって味が変わること、本来はこんなにも美味しく作れることを学んでからは、本当にこのお店に来るお客様がとても愛しく感じ、美味しいうどんを食べてもらいたい、という気持ちで接するようになれたのだった。

 そんな私たちの気持ちが通じているのか、お客様も常連様やリピーターがほとんどなのだ。ご新規様が来た時には、いかにまた来てもらえるようにおもてなしするのかが私たちの最大の課題となる。そして、お客様のことをしっかりと見て、覚えること。それと同時に、笑顔を向けてしっかりとおもてなしをすること。それがリピーターを増やすきっかけになると私は考えている。







 うちの店の代表的なホステスには、いろいろ特技がある。例えば、平塚さん。お客様との会話に慣れていて、ノリもいいのですぐに明るい雰囲気を作り出せる。もちろん、仕事ぶりは完璧で、特にアイドル時間などの複数ポジションを1人でこなせる、スーパーウーマンだ。

 久保さんは、物静かな印象のクールビューティーで、ファンになるお客様もかなり多い。仕事は丁寧かつスピードもあるので、とても頼りになる存在だ。

 かずちゃんは、還暦には見えない若々しい雰囲気で、天ぷらを揚げさせたらピカイチだ。うちの店の代表で、チェーン店内の天ぷら大会に出場した実力の持ち主だ。難しいと言われる、エビの天ぷらに細かい衣の花が咲く、見た目にも美しい天ぷらを揚げれるすごい人なのだ。

 エキゾチック美人の藤岡さんは、まだ高校生だ。愛想はそんなに良くないが、そのせいでたまに見せる笑顔がとても可愛らしい。仕事ぶりは大人顔負けのしっかり者で、学生の中ではトップクラスだ。

 女子大生アイドルの林田さんは、愛くるしい顔立ちはもちろん人気の素なのだが、ニコッと笑顔でお客様をキュン死させるホステスなのだ。得意とするのはセンターポジションで、お客様とのふれあいを楽しみながらしている。

 最後に、私はというと、自分で言うのもなんだけど、笑顔が売りのホステスだ。平塚さんが、初めてこの店を訪れた時の私に対しての印象が「すごい笑顔で出迎えてくれた」というものだった。それが、仕事に慣れた今でも、変わらず私がその笑顔を見せるので「笑顔と言えば北村さん」というイメージがついたようなのだ。自分自身、仕事をしている時は笑顔を絶やさないことを心がけているので、笑顔というイメージが付いて回っているのだと思う。

 今のところ、私がホステスと認めているのはこの数人だけなのだが、今後もいろんなことを乗り越えて、また一人新たなホステスが誕生することを私は願っている。






 こんな素敵なホステスたちが働く、セルフうどんのお店は今日も賑わっている。一人でも多くのお客様に満足して帰っていただけるように、私たちは出来る限りのおもてなしをするのだ。

「いらっしゃいませ、こんにちは!」

「お待たせしました。ごゆっくりどうぞ」

「ありがとうございました!またお越し下さいませ!」

今日もホステスたちの元気な声が響き渡る店内だった。




               ~うどん屋ホステス。(完)~

 


とあるセルフうどんのお店のかなりリアルに近いお話、いかがだったでしょうか。ネタはまだまだ尽きませんが、ここらで一度完結とさせていただきます。

読んで下さり、ありがとうございました。

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