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うどん屋ホステス。  作者: 桃色 ぴんく。
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お客様との会話。

 新しく店にやってきた西口店長は、とにかくバタバタと動いて、気持ちに余裕がないような印象だった。そんなに混んでない時間帯も、1人せわしく動き回り、端から見ていると

「なんであんなに忙しそうなの?」

という感じになっていたのだ。






 私たちは、どんなに仕事が忙しくても、お客様とのコミュニケーションを大事にしている。

「いつもの!」を頼むお客様はもちろん、注文を聞いて、うどんを作るそのわずかな時間でも、お客様とお話するチャンスがあるのだ。

 こちらから話しかけることもある。例えばいつも来る時間帯がだいたい決まっているお客様がいつもより早い時間帯に来られたら

「今日はお早いんですね」

と、声をかけたりする。もちろん、そのお客様のうどんを作りながら話しかけている。話していても、手元はちゃんと動いている。

 お客様の方から「今日も暑いなぁ!」とか「いつも元気そうやな!」とか声をかけていただく場合も多い。






 つい先日、少し嬉しいことがあった。その日は私はオープンからフライヤーのポジションにいて、ひたすら天ぷらを揚げていた。お客様とやりとりをするセンターのポジションとは違って、フライヤーのポジションはかなり1人の空間なのだ。前に並べている天ぷらの減り具合と格闘しながらひたすら揚げていく。お客様が入ってくるのが見えると「いらっしゃいませ」、出て行かれる時には「ありがとうございました」と声かけはするが、それ以外はほとんど喋らないのがフライヤーのポジションだ。

「お待ち出ます」

 細麺の釜揚げなどが通ると、少しお待たせする場合がある。その場合は、伝票をお渡しして先に会計を済まされているので、うどんが出来上がったら客席まで運ぶことになっている。

「あ、私行くわ」

お待ちのうどんを運んで行くのは、その時手が空いているクルー。ちょうど、天ぷらは一段落していたので、この日は私がうどんを客席まで運んで行った。

「お待たせしました~」

と、私がお客様に声をかけると、そのお客様が喜んでくれたのだ。

「あ!一番来てほしい人が来てくれたわ!」

そう言って満面の笑みでこちらを向いてくれた。

「ありがとうございます~」

私もニッコリ笑って、お客様のお盆の上にうどんを置く。

「この人のね、この笑顔がもうサイコーでね!」

と、一緒にテーブルに座られているお友達に私のことを紹介してくれた。

「ごゆっくりどうぞ」

頭を下げ、フライヤーのポジションへと戻った私だったが、なんだかとても嬉しかった。年配のご夫婦を交えた4人でいらしたお客様だったが、お客様にそういう風に思ってもらえて、とても励みになった。






 またある時は、ご夫婦で来られたお客様に、こんなことを言われた。旦那様が先に並んでいらしたので、旦那様のうどんから作り出したのだが、注文されたうどんが【つけ麺】で、ダシとセットの生卵を出して、その後お肉を乗せたうどんが出すのに、隣にいた平塚さんと私が慣れた感じでやりとりをし、旦那様にうどんを出し、奥様のうどんを作っている時に、奥様が声をかけてくれたのだ。

「あなたたち、すごいナイスな感じでいいコンビね!」

 平塚さんと一緒に組むのは私もやりやすく、平塚さんも私と組むのが一番やりやすいと言ってくれているので、きっと波長が合って、スムーズにこなせるのだろう。

「はい。そうなんです。私の相方なんです!」

と、私もそのお客様に答える。

「すごく息が合って、すごいな~と思ったわ。他の人じゃズレがあるんでしょうね」

と、そのお客様もなかなか奥深い見方をされていたので、私もビックリしたが、ただうどんを食べに来られるだけじゃなく、クルーの働きぶりもこうして見られているのだな、と改めて実感した出来事だった。






 

 そして、ダンシング店長がこの店に来て、約1か月が過ぎた。クルーから見た店長の印象は『仕事が出来ない』、『動きが変』、『忙しそうにしすぎ』などと、かなり辛口の意見が多かったが、私は西口店長のことは嫌いではなかった。小刻みに揺れる動きさえ気にしなければ、優しい感じだし、こちらが言ったこともメモに取ってちゃんと対策を考えてくれるからだ。

 確かに、仕事面では少し頼りないが、この店にはたくさんのホステスがいるのだ。店長は、そのホステスたちに店を任せてどーんと構えてくれた方が、うまく行くのだ。






店長やエリア課長などは度々変わるが、クルー同士の仲はいいし、本当に働きやすい職場だと私はつくづく感じている。

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