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うどん屋ホステス。  作者: 桃色 ぴんく。
16/25

強烈キャラ登場!

 ある日、川西店長が

「今度な、面接くる人おるねんけど、電話の感じやと明るくて元気でええ感じやわ」

と、話しだした。

「へえ、面接、久々ですね。何歳ぐらいの人ですか?」

「50代の主婦やで」

と、いうことは昼間のパートさんの仲間が増えるかも知れない。

「なんかな、スナックで働いてはったみたいで、お客さんにも慣れてそうやで」

「へええ~」

 私の頭の中に、50代の綺麗なオネエサマが浮かんだ。ちょっと小柄で細身で、だけどしっかりしてそうで、髪は長くてゆるやかなウェーブで・・・

『またこの店に新たなホステスが来るのかしら』

などとすごく期待してしまっていた。





 数日後、面接に現れたのは・・・プロレスラーかと思うほどの大柄な体格の、よく太ったオバチャンだった。

「え・・・」

 失礼ながら、みんなそんな反応だった。スナック勤め=夜の蝶みたいなイメージを誰もがしていたようだ。大柄で太っていて、顔は面長で、化粧が・・・印象的だった。黒いペンシルで、眉頭から眉尻までが尻上がりに一直線なのだ。しかも線が長い!一般的な眉毛の長さの2倍ぐらいはあるだろうか。私たちは、初対面から「どうしてそのようなメイクなのですか」とも聞けないし、ただただビックリだった。

「あの人が水商売やってた・・・てのは信じられへんな」

と、面接の様子を遠目で見ながら、かずちゃんが言った。確かに、そうは見えない。






 後日、川西店長が

「ちょっと怪しい感じの人やけど、元気はいいから・・・採用したで」

と、言ったので、その人は新しく仲間に加わった。






「おっはようございます!!!!馬屋谷うまやたにと申します!今日からよろしくです!!!」

・・・確かに、元気のいい人だ。クールな久保さんが後ずさりしてしまうほどの大声だった。

「よろしくお願いします」

こうして、馬屋谷さんが昼のメンバーに加わることになった。

 この馬屋谷さんは、キャラがとても濃く、ガハガハ系のノリをしていた。面接をして、働き出して、初日から見事に馬屋谷ワールドを築き上げていた。

「うまやたに、って呼びにくいでしょお???うまちゃん、ってどうぞ呼んでくださいな!!!」

と、あちこちのクルーさんに話しかける馬屋谷さん。

「は、はあ・・・」

早く馴染もうとしているのだろうけど、周りのクルーさんは結構引いていた。それでも、仕事面では特にどんくさいわけでもなく、ごくごく普通の新人さんのような感じだったので、私たちはまたいつものように仕事をしていた。





 そんな馬屋谷さんが、仲間に入って2日目のことだった。私がセンターで、馬屋谷さんが隣のポジションのフライヤーに立っていて、川西店長に天ぷらの揚げ方を教わっている時だった。馬屋谷さんの天ぷらの揚げ方に変なクセがあるらしく、店長がそれを指摘して、直させようとしているのだが、クセになっているので、馬屋谷さんもそれを繰り返す。指摘されてはまたクセが・・・の繰り返しだった。その時だった。

「オーマイガッ!!!!!!」

と、馬屋谷さんが大きな声で叫んだのだ。

 思わず、目が点になる私。この人は一体どういうキャラなのか・・・仕事を教えてもらっていて、うまく行かない、また失敗したからって、そこで『オーマイガッ』になるのが不思議だった。元気で声が大きい分、馬屋谷さんの叫び声は客席まで届いたことだろう・・・それ以来、昼のパートさんの間では『あのテンションちょっと付いていけない』『あんまり深く関わらない方がいいのかもね』というような話が飛び交った。






 そんなある日、来るはずの時間に馬屋谷さんが来なかった。川西店長に聞いたら、糖尿病の持病があるらしく、体調がとても悪いとのことだった。やっぱり、あれだけ太ってると何かしらの体調不良があるんだろうなぁ、と私は思った。

 その日から、馬屋谷さんは、もう店に来なくなった。まだ働きだして数日のことだった。川西店長も

「先に病気を治してから、また戻ってきたらええし」

と、一応言っていたが、糖尿病はなかなか難しいんじゃないかなぁ・・・とにかく、仕事よりも先に体に気をつけてください・・・という感じで、馬屋谷さんはこのお店を去って行った。






 後日、うどん屋の近くの公園で、黒ずくめの服を着て、朝っぱらからベンチに座って、タバコを吸いながら一点を見つめている馬屋谷さんの姿を、出勤途中の平塚さんが見たらしい。

「めっちゃ怖いもんみました」

と、平塚さんが言っていた。馬屋谷さんの濃~いキャラは健在のようだ。






 その後もまた、面接で誰か入ってきても、数日で辞めて行くというパターンが続き、なかなかメンバーが増えない状況が続いた。

 そんな中、夜のメンバーの梅垣さんが、知り合いを呼んでくると言い出した。梅垣さんが以前働いていたコンビニで一緒に仕事をしていた仲間らしい。誰かの知り合いなら、そんなに簡単に辞めていくこともないし、と、私たちはまた期待したのだった。


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