表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うどん屋ホステス。  作者: 桃色 ぴんく。
15/25

ナルシストとヤンデル君。

 元気な東MAXの後に来たマネージャーは、後藤ごとうさんという、とてもナルシストな人だった。ブサイクではないし、とびきりイケメンていうわけでもない。ただ、自分の見た目をかなり気にするタイプで、前髪の少しの乱れも許さない、という感じだった。

 仕事中は、男の人は帽子をかぶり、前髪も上げているので、後藤さんもきちんと上げているのだが、私服の時の名残があるのか、動作がどうにもナルシストなのだ。そして、妙に自信家で、やっていることはそれほどでもないのだが、『どうだ、すごいだろう』というアピールをするのだ。それでも、東MAXの時のようなテンションがうざかったり、仕事する上で特に困ることはなかったので、私たちも普通に接していた。




 

 この頃から、私たち昼のパートをメインとしたメンバーたちが、定期的に夜に女子会を開くようになった。これまでも何回か送別会などで飲み会があったが、こんなふうに定着するとは思っていなかった。それだけ、みんなが仲良しだからだ。曜日によってはなかなか一緒にシフトに入れないとかもあるので、そういう話せる機会があればいいな、と思っていたから、みんな、この女子会が本当に楽しみなのだ。仕事中にはなかなか話せない、それぞれの人生相談とか、暴走する下ネタトーク、若い女子たちのコイバナ、本当に話題はいろいろだ。





 そして、川西店長が来て、2か月ぐらいたった頃、女子高生だった林田さんと岸田川さんは、進学して女子大生になった。

 アイドルの林田さんは、高校生の時は素直な感じの可愛らしさがあったが、大学生になった途端、大人の女子に変貌した。髪は茶髪のロング、眉毛を描き、リップを塗り、へそ出しルックで出勤してきたりするようになった。いきなりの変わり様に私たちもビックリして、『前の方が清純そうで良かった』などと言いながらも、『やっぱり可愛い子は何しても可愛いのね』という結論に達したのだった。そして、そんな林田さんに、川西店長もますますメロメロになっていくのだった。

 一方の岸田川さんも、顔が整った美人だった。この子は、自分のことを「彩音ねー」と話す、今時の若い子で、それでも、お昼のパートのオバチャンやオネエサマたちにとてもなついていて、可愛がられている存在だった。





 ナルシストで『俺って何してもイケてる』というタイプの後藤マネージャーは、しばらくして他の店舗の店長になるべく、うちの店を去って行った。

「今度、僕の代わりに北宮きたみやって奴が来るんで。僕の同期なんで、よろしく!』と、言い残して。最後の最後まで自信家で、『同期の中で僕が一番店長になるの早かったんでビックリしてます』と、さらっと自慢していたのを思い出す。でも、今までの経験上わかってきたのは、仕事が多少出来なくても、こういう自信家タイプの方が出世が早いということだ。

 後藤マネージャーの後に、うちの店に来た北宮マネージャーは、病んでいた。『どうもうつっぽいらしい』と、噂になっていて以前から聞いていたが、本当の話だったようだ。

 まず、顔に生気がない。あんまり声をあげて笑わない。何か話しかけても、クスッとした顔を少し見せるだけ。お客様を相手にしても、声のトーンも上がらず。なんか暗い。

 東MAXにしても、後藤さんにしても、彼女がいた。東MAXの彼女は同じチェーン店で働いていて、うちの店にも数回お手伝いに来てくれたが、ウサギのような可愛い顔立ちの明るい子で、気配りも出来るいい子だ。後藤さんの彼女は、見たことはないが、同棲中らしく、近々結婚を考えてるとかだった。それに比べて、北宮さんは、そういう浮いた話がなく、とにかく暗かったのだ。





 ある日、仕事中に、北宮さんと話したことがあった。私がセンターにいて、北宮さんが隣のポジションのフライヤーで天ぷらを揚げていた時だった。

「はぁ・・・」

と、ため息が聞こえたので

「なに?病んでるの?」

と、声をかけたら、人生相談が始まったのだ。

 どうやら、北宮さんは、自分の周りの友達と、自分を比べて悩んでる様子だった。

「周りの同級生とかは、普通に会社に勤めてるんですよ~」

「うん、それで?」

「なんかね~やっぱりそういうのが良かったな~なんて思うんですよ~」

「そっか。でも、ここに就職を選んだのは北宮さんだよね」

「そうなんですけどね~」

「自分で選んだのに、周りと比べるなんてねぇ。それよりこの仕事のここが楽しいとか、ないの?」

「ないですね~」

「ないんかいっ。私なんかこの仕事めっちゃ楽しいけどね」

「いいですね」

「この仕事に遣り甲斐感じないなら、転職もありじゃないの」

「どこ行っても同じや~って友達に言われるんですけどね~」

「じゃあどこ行っても同じじゃないの。でも、楽しめたり誇りが持てる仕事の方がいいだろうね」

 北宮さんのあまりの生気のなさに、そんな顔して働くぐらいなら、仕事変われば?とアドバイスしてしまう私なのだった。





 そして・・・この店に強烈キャラのパートさんがやってきた!中田店長が面接してたらきっと採用されてないはず・・・というキャラの持ち主だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ