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うどん屋ホステス。  作者: 桃色 ぴんく。
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ヤル気スイッチ。

 マニュアルロボット店長の呪縛から解かれ、うちの店にも平和が訪れた・・・そして、中田店長の後にやってきたのが川西店長だった。

 実は、川西店長は初対面ではなかった。うちの店がオープンしたての頃、一度だけ手伝いに来てくれたことがあったのだ。だから、私は川西店長のことを覚えていた。

 特に悪い印象もなく、ごく普通な感じかな・・・と安心していたのだが、だんだん日が経つにつれて、川西店長の特徴が見えてきたのだ。




「帰る!」

 これが、川西店長の口癖だった。朝、店に来ていきなりの第一声がこれなのだ。ウケ狙いなのか、本当に帰りたいのかよくわからないが、とにかく川西店長の「帰る」「帰っていい?」という言葉をよく聞く。私たちも毎朝、万全の体調じゃない時もある。人手不足だし、多少の無理をしながら働いている時もある。そんな中で、川西店長の「しんどい、帰りたい、ここが痛い、昨日寝てない」などの【負の発言】を聞かされると、こっちのテンションまで下がってしまう。

 




 もう一つ、川西店長の特徴は、前店長の中田店長のことを目一杯嫌っていることだった。同期ではなく、中田店長の方が3歳ぐらい年下のようだが、なんせ、気に入らないらしい。中田店長のことを『人間性を疑う』とか『あいつだけには負けたくない』とか言っているのだが、私たちにはそこまで目の敵にする理由が本当にわからない。なので、そういう話題になる度に、聞きたくないな・・・と思うのだった。

 




 川西店長はサボリ癖はあるが、仕事が出来ないわけではなかった。新人さんが思うようにポジションの仕事をこなせない時や、団体客がドヤドヤと現れてどうにも対応出来ない時など、いざという時には、川西店長の動きが機敏になるのだ。この変わりようにはみんなビックリだった。なんだ、やれば出来るんじゃない。思わずYDKの歌を歌ってしまいそうだが、本当は動けるのに、普段は必要以上に動かない、そんな川西店長だった。





 そして、川西店長に代わってから、中田店長の時のようなピリピリした空気はすっかり消え去り、アットホームな雰囲気が店の中に漂ってきた。ただ、一部の夜のクルーたちは、中田店長から川西店長に代わったことで、気が緩み、少しだらけモードになっている気がした。

 そんな中、また新しいクルーが増えた。女子高生の岸田川彩音きしだがわあやねさん、同じく高校生の猪上いのうえくんだ。増えるのは夜のバイトの子の友達とかが多く、なかなか一般の女性が新しくメンバーに加わることが難しくなってきたようだった。

 それでも随時、募集はしているので、たまに応募の電話が入ったりして、面接を数人してみたが、なかなかいい人に恵まれず、メンバーは現状のままだった。





 そして、歴代店長同様、川西店長も、アイドル女子高生の林田さんの虜になってしまったようだった。

中田店長を毛嫌いしている川西店長は、最初は中田店長と噂のある林田さんのことを良く思っていないようだったのだが、林田さんのあまりの可愛さに、『こんな可愛い子が中田を相手にするわけがない』と思うようになったらしく、林田さんに話を聞いてみたらしいのだ。

 すると、あの疑惑のデートの話の真相がわかったのだ。店長クラス数人と、林田さんとその友達数人、と聞いていた話が、実は違うものだった。

 その日、林田さんは、『他の店舗からも女の子が来るから』と言われ、一人で待ち合わせ場所に向かったらしいのだ。そして、いざ、着いてみると、ヤローばっかりで女の子が自分以外にいなかった、と。怖いし嫌だから帰ろうと思ったけど、帰れなかったらしい。今後の仕事のこともあるし、とりあえず我慢して付き合ったそうだ。さすがに、集団で林田さんに手を出すとかそういうことはなかったようだが、林田さんにとっては気分の乗らない苦痛の数時間だったようだ。

 もちろん、この話は林田さん一人の言い分であって、本当のところはわからない。が、川西店長は林田さんの言うことを信じ、

「ほら~。やっぱりあいつが悪いだけなんや」

と、そこからは林田さんを特別に可愛がるようになったのだ。





 そして、平日は川西店長はフレッシュのポジションについて、暇があればクルーに話しかけてダラダラと仕事をして、土日などで、林田さんがいる場合は、店長が釜、林田さんをセンターに付けて、仕事の合間には林田さんと楽しくお喋りしてはデレデレした顔をしているのが日常になった。

 そんな川西店長の様子を見て、私たちは彼の『ヤル気スイッチ』を探すのであった。ダベダベしないで仕事に集中しろ!ってんだ。というのが私たちの本音だった。





 その後、またマネージャーが代わった。今度は中途半端なイケメンの佐島さとうさんだ。顔はそんなに悪くないが、ナルシストっぽい感じで、髪型がちょっと乱れるだけでも気にする、そんなタイプだった。

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