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うどん屋ホステス。  作者: 桃色 ぴんく。
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プロローグ。

 ※この物語は、限りなくノンフィクションに近い感じです。



=============================================


 ある日曜日、私、北村桃子きたむらももこは、新聞の折り込みに入っていた求人情報を見ていた。少し前に3年ほど勤めた『スーパーでお寿司を作る』パートを辞めたばかりだった。

 12月の中旬だったので、年内はゆっくりして、年明けからまた仕事探せばいいかな、なんて思っていたのだが、暇つぶしも兼ねて、一応は求人情報を見ていた。すると、気になる募集情報があった。



 セルフうどんK オープニングスタップ募集


 

「あ、家から近い」

 近所にうどん屋さんが出来るみたいだ。セルフってセルフサービスよね。そんなの聞いたこともないわ。でも、家から近いのはとても魅力に感じた。雨の日も楽々通えるし。私は、前回のパート先に雨の日に通ってる姿を思い出していた。雨の日に歩いて行くと結構時間がかかって大変だった記憶がある。やっぱり家から近いって絶対条件かも。

「うーん」

 年内はゆっくりするつもりだったけど、こういうのってオープニングスタッフで入った方がいいかも知れない。よし、受かるかどうかわからないけど面接してもらおっかな。私は早速電話をかけた。



 数日後。面接の日取りが決まった。まだ、店舗は建設中らしく、完成間近だったが、面接をする場所がないということで、近くの公民館で行われていた。

「失礼します」

 面接会場に入ると、スーツ姿の男の人が2人座っていた。二人とも30代後半~40代前半というところか。私も同じ年代だったので、特に緊張感はなかった。

 履歴書は必要なく、渡された用紙に必要事項を記入する形だった。用紙に記入を終えると、2人の自己紹介が始まった。

「この度はご応募いただきありがとうございます。私は今回募集している店舗のエリア課長の松川まつかわです。こちらが、店長の城井しろいです。よろしくお願いします」

 なるほど、こっちの人が店長か。顔つきはボーッとした感じがするけど・・・

「北村さんは、セルフうどんKの店をご存じですか?」

「いえ、知らないんです。すいません」

「じゃあ、我々の親会社Tといううどん屋をご存じですか?」

「あ、いえ、そちらも知らないんです」

 どうやら、他県でチェーン店を繰り広げているらしく、今回この地域に初めて進出してきたようだった。そりゃあ知らないわけだ。知らない知らないばっかりで、もしかしたら不採用かもなぁ・・・

「お客様を相手にするお仕事とかは、どうですか?」

「今まで事務職も居酒屋などの飲食店も経験していますが、接客業の方が向いていると思っています」

「飲食店はホールスタッフですか?」

「ホールもキッチンも両方です」

 私が答えると、2人は顔を見合わせて、うなずきあった。そして、面接は終了。店の雰囲気もまだ全然知らない中での面接だったので、まぁダメならダメでいいし、と思っていた。



 その日の夕方、早速面接の結果の電話がかかってきた。採用決定のお知らせだった。とりあえず受かった。オープンまで2週間ほどしかないらしく、まずは、ここの店から一番近いチェーン店で、研修を行います、とのことだった。

 私は言われた2週間の中で3日ほどしか参加出来ない予定だったが、まぁ、1回も行かないよりはマシかな、と思っていた。




 =研修初日=


「わ、広い・・・」

 研修先の店はかなり大規模で、駐車場も広かった。掃除している人がいる。駐車場に落ちているタバコの吸い殻をせっせと拾い集めている姿を見て、こんな広い駐車場じゃ掃除も大変だなぁ・・・などと考えながら、中に案内され、入った。

「おはようございます」

「おはようごさいま~す」

 ここのスタッフの皆さんがにこやかな顔を向けてくれる。4人ほどいたが、年代はバラバラのようだ。

「北村さん、これに着替えてね」

と、松川課長に渡されたのは制服だった。

「着替えるならこっちおいで」

と、私に声をかけてくれたのは、ここのお店のパートさんみたいだった。

「ああ、案内して着替えしてもらって」

と、松川課長もその人に任せる。私はその人について行った。



「なんか変・・・」

真っ白な制服に身を包んだ私は、鏡の前で冴えない顔をしていた。頭にはバンダナを巻いている。前髪を見えないようにバンダナを巻くので、なんとも言えない変な顔に見える。

「着替えたら、課長のとこ行ってね」

と、お世話してくれたパートさんが声をかけてくれる。

「はい、ありがとうございます」

 私は松川課長の元に行った。今日は研修初日で、『まずはお店の雰囲気に慣れて下さい』と言われただけ、ただの見学って感じかな?などと思っていたら・・・



「じゃ、天ぷら揚げてもらいましょうか」

と、いきなり言われたのだった。ええっ?と思いながらも油の前に連れて行かれ、

「とりあえず一通り揚げてもらって」

と、この店のフライヤー担当のパートさんに声をかける。言われたパートさんも

「はい。じゃあ、揚げてって」

と、丸投げ。そんな~~~、揚げ方も知らないのに。

「あの、全く初めてなので、見本見せていただいていいですか」

と、私が言って、その人に教えてもらいながら揚げていくことになった。



 研修初日のこの日は日曜日だった。お昼にもなるとすごいお客様が押し寄せる。

揚げても揚げても目の前の天ぷらがなくなっていく。きっと、すごい形相で天ぷら揚げていたのかも知れないけど、とりあえず私は必死だった。いつの間にか、隣にいたフライヤーのパートさんも、どこかに行ってしまって、気付けば油の前に私一人ポツン。相変わらず途切れないお客様。息つく暇もなく、なくなりかける天ぷらを揚げまくっていた。こんなに大変なの、なにこれ?これって研修なの~~~~?という思いがよぎる。

「うん。北村さん、いけるな」

「そうですね」

背後で松川課長と城井店長の会話が聞こえる。ちょっと!立ち話してるなら手伝ってよ!忙しいんだから!!!

 こんな感じで研修初日は終了。どっと疲れた・・・。




=研修2日目=


「今日はレジを練習しましょう」

と、言われ、研修先の福田ふくだ店長と私はレジの横に二人で立っていた。

セルフ式のうどん屋なので、お客様が注文したうどんや天ぷらをお盆に乗せて、レジまで移動してくる。

それを見ながらレジの画面を打つのだが、なんせ商品を覚えてないのでなんかよくわからない。

 その日は横に立っている福田店長が

「ぶっかけの大とかしわ天とイナリな」

と、お盆に乗っている商品を教えてくれながらのレジだったので、なんとか出来た。お客様が途切れると、レジの入力キーを動かして『練習モード』にして、私にレジ練習をさせてくれた。福田店長は短時間だったが、取りやすいつり銭の取り方とか、打ち方のワンポイントアドバイスとか、結構いろんなことを教えてくれた。




=研修3日目=


 この日は、オープン前の作業、フロア掃除を教えてもらった。お店の開店時間は11時。各店舗によって違うが、研修先の店は10時からフロア掃除を始める。この店はかなり大きいので一人で床を掃くのも結構大変だった。ほうきを持つことがあんまりないのですぐに腰がダルくなる。キッチン内ではここのパートさんたちが仕込みをしていた。そうか、朝の時間は、フロアを掃除する人と、キッチンの準備をする人が必要なんだ。キッチンのことはまだ教わってないから私は当分掃除でいいや、などと思いながら掃除をしていた。

 この日は、お店が開店すると私はまたフライヤーに入らされて、天ぷらを揚げることになった。2回目だったし、もう揚げ方は覚えていた。後はうまく揚げれるか、切らさずに揚げれるか、ということだった。この日は平日だったので、問題なく終了して、私の研修期間は終わった。



 次回からはいよいよ、自分たちの店で仕事が出来る。研修で『お邪魔』していた気分だったので、なんだかとても嬉しく感じる。オープンまであと5日。


 

 

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