大蛇の神殿にて
薄暗い地下神殿の中に、黒魔道士が1人、座っていた。
身体中に黒い霧の様な物がまとわりついて、その魔導士を守っているかの様だ。
この黒い霧は、黄泉の国という地獄の亡者で出来ている。
黒魔道そのものが、妖怪の様な、人間に悪さをする者たちの力を借りているが、闇の黒魔道は、それに加えて、地獄の亡者を使う。
寄って、辺りには腐臭が立ち込め、ひんやりと冷たい風が吹いている。
その闇魔導士が座っている前には、祭壇が設けられていた。
人間や牛の頭蓋骨に加え、鶏や豚の心臓が捧げられている。
その後ろには、背もたれの無い、大きな玉座が2つ並べられている。
闇魔導士が祈りを
捧げていると、ズルズルと大きなものが這う音がし、闇魔導士は頭を下げた。
音を立てながら祭壇の向こう側の玉座に、とぐろを巻いて座った2匹の大蛇は、神殿に響き渡る様な低い声で闇魔導士に言った。
「獅子王はどうした…。」
「失敗致しました。まだ生きております。」
「早く始末せぬか…。あの狡猾さは邪魔だ…。」
「は。次の手を打ってございます。」
「アレキサンダーはどうした…。」
「それが、獅子国にいる様でして、聖魔導士の結界も強く、なかなか…。」
「ならぬぞ。あやつは憎きアレキサンダーの生まれ変わりぞ。あやつが生きておっては、目的は果たせぬ。早急に始末致せ。」
「し、しかし、あの男には、闇魔法が効きませぬゆえ…。」
「ならばあぶり出して、直接殺せば良かろう。人質を取れば、どうとでも出来るバカではないか。その手は得意であろう?ジュノー。」
闇魔導士はニヤリと不気味に笑い、一礼して退出した。