表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
呪いの島  作者: 桐生初
5/18

ウロボロスの真の目的

行きの空で、イリイにアンソニーを乗せたアレックスは、暗い顔で聞いた。


「兄上はどうされている?」


「ーはい…。以前にも増して冷酷になられ、エリザベス様とも仲違いされ、エリザベス様は東の塔に引き篭もってしまわれ、側室を3人も…。」


「3人…。随分と多いな…。」


すると、横を飛んでいたダリルが不機嫌そうに口を挟んできた。


「3人もお持ちになっても、どなたもご懐妊致しません!御心掛けが表れているのでしょう!」


「確かに兄上がお辛いのも分かるが、産んだ母親の方が子供を失うのは辛いものであろう。姉上を支えられるのは兄上だけだとは思うが…。」


「そうです!」


「兄上は昔から直視出来ない事からは逃げてしまう所がおありだ。姉上と居ると、フィリップを思い出してお辛いので、遠ざかったのかもしれないな…。」


「それではいかんのではないでしょうか!」


「そう。それではいけない。兄上の悪い癖だ。」



獅子国に到着すると、リチャードは手放しで喜んだ。

つまり、マリアンヌの予想通り、ピンピンしている。


「マリー、元気にしておったか。不足は無いか。」


「はい。お陰様で。」


「うんうん。見違える様に元気になって、幸せそうだ。アレックス、有難う。」


今度は、マリアンヌを小脇に抱えたまま、アレックスの手を取った。


「いえ。こちらこそ色々と有難うございます。早速ですが義父上、フィリップは、封印されし闇の魔法により亡くなったと判明致しました。義父上も、十二分にご注意を。」


「おお、あれか。」


「は…?。」


「あの箱であろう。私の所にも、やたらと美しい箱が届いたわ。」


「それで…?」


「うちの聖魔導士のウィルが、世界聖魔導士会議で留守にしておる時でな。持ってきたのは、出入りの商人なんだが、なんだか目つきがおかしい。何かに囚われておる様な目をしておったので、そのまま開けずに、ウィルの部屋に放り込んでおいたら、ウィルが帰ってきたら、ぎゃあ!だと。なんだか、大変な物だった様だ。」


マリアンヌの言う通り、リチャードは、呪いよりも強い策略家だったようだ。

策略家というのは、鋭い洞察力と、勘が冴えわたっていなければ、務まらないものである。


「ご無事で何よりです。」


「有難う。それで心配してきてくれるとは、頼もしい婿殿だ。」


「やはり、箱を持って来た商人は、義父上に献上と頭に浮かんで届けたと言っていますか。」


「うん。そう言っていた。ウィルが今、箱にかけられた呪いを調べておる。アンソニー、良かったら、行ってきなさい。」


「そうさせて頂きます。」



リチャードは、アンソニーが行くと、暗い顔をして、ため息をついた。


「フィリップはそれで命を奪われたのか。可哀想にな。そんな幼い子を…。エミールも手紙を寄越したが、酷く塞ぎ込んでおったわ。」


「全くです。まだ1歳だったのに…。」


「うーん。許し難いな…。して、何か分かったかね?」


「賊は状況から見て、ウロボロス島に潜み、魔法で霧を出し、ウロボロスの入り組んだ岬から船を出して、霧に紛れて接舷し、宝石産出国の船からは、封印されし闇の黒魔法に使う、呪われた宝石を集める為に、金銀宝石を奪い、竜国、獅子国の船には、国主を狙う呪いの箱を入れた様です。今の所、その目的や、ウロボロス島の人々がどう関わっているのかは分かりません。」


「うーん。ウロボロスな。あそこはエミールが近付くなと言うし、属国にしても、こちらの財政負担が増えるだけのようなので、手つかずで来たのだが。」


「やはり貧しい国なのですね。」


「そうだな。岩盤の上の土地だから、作物もあまり育たぬし、産業といえば、漁業位。海軍の要所にするにも、その入り組んだ入り江がかえって悪いのだ。出る所が、そこだけ。他は断崖絶壁で、船など着けられない。しかも、入り江の幅は船1隻分しかない。出口で待ち伏せされたら、一巻の終わりだ。」


「なるほど。でも、なんでそんな所に人が住んでいるのでしょうか。」


「実は私もよく知らないのだ。牢獄だった所だというのは聞いた事があるが、タブーらしくてな。誰も触れないので、教えても貰ってない。」


「父上が近付くなと言っていたのと関係があるのでしょうか。」


「お主も近付くなと言われているのか。」


「はい。仮にイリイに乗っていても、上は通るなと言われました。では、ご無事も確認できた事ですし、私は父に話を聞いて参ります。」


「いやいや、待ちなさい。それならエミールを呼んだ方が早い。もうピンピンしているのだし。」


エミール元国王は、あれ以来、ボルケーノに居ついてしまい、温泉治療とボルケーノ王の癒しの魔法ですっかり体の具合も良くなり、輿要らずになっていた。


「しかし、私はまだ調べを進めなくてはなりません。オルトロスに行ってくれたカールも手伝わねばなりませんし、麒麟国の仲間に明日情報を持ち寄って落ちあう約束をしています。」


アンソニーとウィルが出て来て、リチャードに告げた。


「アンソニーにも見てもらいましたが、やはり封印されし闇の黒魔法です。これが分かるのは、もうアンソニーのお父上位しか居られません。」


アンソニーの父は、エミールと行動を共にしている聖魔導士のハッセルである。


「ほらあ。ハッセル共々、ここへ呼んだ方が早かろう?」


「いや、しかし。」


言いながら、アレックスは何の気なしに窓の外を見た。


エミールの大鷹、エディが飛んで来るのが見える。


「ん!?父上!?」


「アレックスー!何故、ここに居るー!リチャードの心配なんぞしておる場合かあー!」


叫びながら、エディに乗ったまま窓から突入。

でも、アレックスは、あまり驚かない。

昔からエミールは神出鬼没なのだ。


「父上こそ、どうされたのです。」


「今度はそなたが危ないのじゃ!」


それを聞くなり、リチャードも顔色を変えた。


「そうだ!アデルに嫡男が産まれなければ、王位継承権はそなたにあり、そしてこの獅子国の王位継承権もそなたにある!敵の目的が竜国と獅子国の弱体化ならば、確かに次に狙われるのは、そなただ!」


「いや、結構です。」


「結構だろうが、是非にだろうが、事実そうなのだ!アレックス!」


そして、劇的な登場の仕方をしたエミールは、既にテーブルに着いて、マリアンヌの頭を撫でながら、お茶とお菓子を貰っていた。


「エ、エミール…。」


「なんじゃ、リチャード。」


「ところで、何故アレックスがここに居ると分かった…?」


「エディにイリイの居る所へ行けと言うたら、獅子国に入ったのじゃ。エディはイリイの父親だからな。そして、アレックスが獅子国に居るという事は、リチャードを心配しての事だろうと思った。まあ、とはいえ、リチャードは、呪いに引っかかるタマではないし、アレックスも呪いにはかからん。マリーちゃんもな。」


と、突然、ニヤニヤとアレックスを見つめる。


「なんですか、父上。」


「毎日飽きもせずイチャイチャしておるか?羨ましいのおー。」


「父上!」


ガタッと椅子を蹴って立ち上がり、もう大剣は抜かれている。


「一度真っ二つにして差し上げる!」


「一度真っ二つになってしまったら、もう生きてはおらんぞ、アレックス。全くもう、どうしてこう喧嘩っ早いのか。」


「無駄口は宜しいから、ウロボロスについてお話し下さい!」


エミールは、おちゃらけた顔から、急に深刻な顔になった。


「ウロボロス…。ウロボロスが絡んでおるのか。だとしたら、奴らの目的は、大陸の滅亡であろう。」


「大陸の滅亡?」


「そう。そして、アレックス、お主への復讐じゃ。」


「復讐って、俺は…。」


「そう、直接は関係無い。だから、復讐というよりも、脅威かもしれんがな。」



オルトロス島へ行ったカールは、アレックスがしていた様に、被害に遭った船員達に話を聞いたが、やはり聞けた話は、ペガサスのものと同じだった。

だが、皆、同じ場所で霧に包まれ、気を失っており、賊はアレックスの読み通り、ウロボロスの入り組んだ入り江に潜んでいると考えるのが妥当な様だった。


カールはそのまま、ウロボロスの研究をしている学者に会いに行き、話を聞き、本を買い、急いで獅子国に向かっていた。


もう真夜中だったが、急いで知らせねばならないと、カールは急いていた。


事は、海賊事件などという小さな事では無い。


ー竜国や獅子国だけじゃない、この大陸が無くなってしまう!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ