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呪いの島  作者: 桐生初
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宝石を奪う理由

アレックス達は、店を出て、王宮の牧場へ向かっていた。


「そうだ。」


アレックスが何か思い出した様だ。


「どうしたの?」


カールが聞くと、笑って答えた。


「父上が昔、釣りだかなんだかに出て、大雨で帰れなくなり、ウロボロスに保護されたという事があったと言っていた。でも、親切にされたのに、何故かウロボロス島には近付くなと言っていたのは少々不思議ではあるが…。父上に聞けば、多少は分かるかもしれない。」



話している間に、王宮の牧場に着いた。


「あの馬だよ。」


カールが指差した馬は、アレックスを警戒するように見ていたが、暫くすると寄って来て、たてがみや頬を撫でさせ、餌を食べ始めた。


アレックスは馬が餌を食べ終えるまで側にいてやり、戻って来ると、カレンに言った。


「アンソニーを呼んできてくれ。馬が呪いに当てられ、病気だと。」


「はっ。」


カレンが王宮の庭に待機していた大フクロウに乗って行くと、カールに説明する。


「太股の内側に、大きな腫れ物が出来て、それが痛むらしい。残念ながら、賊に関しては、恐ろしさのあまり、全て忘れてしまった様で、何も聞き出せなかった。」


「そう…。可哀想に…。医者じゃダメなのか?呪いってどういう事?」


「古本屋のオヤジの読みは多分正しい。とすれば、賊が入ってきた時に唱えていた呪文は、気を失わせておくための呪文だ。船員達に異常は無いからな。ただ、それは黒魔道士の呪文だ。しかも、あんな格好をしてやるのは、俺も聞いた事が無い。もしかしたら、アンソニーが昔言っていた、封印された呪いの闇魔法かもしれない。あの馬は神聖性が高い。その毒気に当てられてしまったんだと思う。」


「そうなんだ。本当、調べれば調べる程、何がしたいんだか、さっぱり分からないね。」


「餅は餅屋。アンソニーに聞いてみよう。」


もう少し待つかと思ったアンソニーが、ダリルの大鷹に乗ってカレンより先に来た。


「アレックス様!」


2人共嬉しそうに飛び降り、ダリルの大鷹はイソイソとイリイの元へ行った。

イリイの旦那はダリルの大鷹。つまり、ミリイのお父さんである。


「ダリルまで来なくていいぜ?」


「何を仰います!どうせまた厄介事に首を突っ込まれているのでしょう!?私が居たほうがいいに決まっております!」


アレックスは苦笑すると、アンソニーに、馬の腫れ物を見せた。


「これは痛むであろう…。アレックス様のお見立て通りですな。どれ、治してやろう。じっとしておるのだぞ?」


アンソニーは懐から出した小瓶の蓋を開けると、水のような物を手に付け、呪文を唱えながら、馬の腫れ物に触れた。


「水の精霊よ、悪しき力によりし傷を治せ、クーラーティオー。」


腫れ物は嘘の様に無くなり、馬は、礼のように、アンソニーにゴシゴシと頬ずりをした。


「悪かったな、アンソニー。ありがとう。」


「いえ。朝飯前にございます。しかし、何をお調べで?」


「海賊だ。」


「おや。それなら我らも調べております。」


「ー何故。竜国は被害には遭っていないと聞いているが。」


「はい。金品は奪われて居りませぬが、金品より貴重な物を奪われました。」


「まさか…。フィリップは…。」


「はい。調べた所、呪いでございました。」


フィリップは、アレックスの甥、つまりアデルの嫡男であり、初めて出来た一人息子だった。

ボルケーノの一件の直後、王妃エリザベスとの間に産まれ、あのアデルが温厚になったという噂が出るほど幸せそうであったが、1歳を迎えたフィリップはアデルが遠方の領地に視察に行っている間に、突然亡くなってしまった。


葬式にはマリアンヌと共に駆けつけたが、アデルもエリザベスも見る影も無く憔悴し、悲嘆にくれていた。

流行病かもしれないという事だったが、まさか呪いとは思わなかった。


「我々も皆、出払っている日でございました。出入りの商人がアーヴァンクから戻った所、荷の中に美しい装飾の小箱があったからと、フィリップ様に献上したそうです。

王妃様や侍従の話ですと、それは本当に美しい箱だったそうです。金で出来ており、多種多様な世界中の宝石が散りばめられていたとか。

しかも誰が開けようとしても開かず、フィリップ様がお手に取った途端開いたのだそうです。

中には7色の宝玉が入っており、それをお手に取った途端、お倒れになり、そのまま…。

宝玉に毒でも塗られていたのではと、宝玉を調べ、箱を持って来た商人も捕らえたそうですが、宝玉には、何も怪しい所も無く、出入りの商人も、積荷に無い筈のその箱を見た時、フィリップ様に献上と、頭に浮かんだだけだと申し、嘘をついているようには思えず、直ぐには呪いと分からなかったのですが、調べてみると、その箱の出処も分からないのです。誰も輸入していないと。」


「それで?」


「はい。運んできた船を調べました所、アーヴァンクから戻る途中で、深い霧に覆われ、立ち往生をし、船員全員が気を失ったそうです。

その時、何も奪わない代わりに、箱を入れたのではないかと。

私はもう一度箱と宝玉を調べました。

毒はありませんでしたが、使われている宝石、金、その宝玉、全てが呪われた土地で出来た、良くないものでした。

この様な石を使う魔法は、封印されし闇の黒魔法でございます。」


宝石は、地中から取れるものであるが、そこが戦場であったり、不浄な物を吸い込んだ土地だと、石はその不浄を吸い込んで大きくなる為、見た目は美しくても、それそのものが呪いを纏った、良くないものとなる。


「ー繋がったな。こっちの調べでも、どうもそれらしい事が分かった。賊は、人間や牛の頭蓋骨を被り、古代語の呪文を唱えていたそうだ。」


「やはりですな。」


「その商人がフィリップにと思ったのも呪いか?」


「はい。恐らく、箱を一番初めに手にした者が、そう思うよう、箱にまとわせていたものかと。目的を達すると、魔法の痕跡すら消えてしまう様なので、はっきりとは申せませぬが。」


「ペガサス、麒麟国、オルトロスから金銀宝石を奪っていたのは、

フィリップを殺した呪いの箱を作る材料の、呪われた宝石を集める為という訳か…。」


「恐らくは。」


「海賊は、ペガサス船にするのと同様のことをしながら、何も盗まず、箱を入れて立ち去った。金銀宝石の産出国の船からはそれらの品だけを奪い取り、竜国からは、物資は奪わず、嫡男を奪ったか…。つまり大国に関しては…。マリー!」


急に呼ばれ、マリアンヌは飛び上がりながら返事をした。


「義父上が危ない!」


血相を変えて動こうとするアレックスに、マリアンヌは落ち着いた様子で言った。


「父は呪いに勝てる位の策略家な気が致しますので、多分大丈夫かと思いますけれど?」


呆気にとられるアレックスを尻目に、アンソニーとダリルが吹き出した。


「まあ、そうは仰られましても、確かに危険には変わりございませんでしょうな。急ぎ向かわれますか。」


「そうしよう。ええー、カール。海賊はこんな訳で、かなり複雑怪奇な物になってきた。城に居てくれ。」


「いや。僕は、オルトロスに行って来る。」


「ーん?」


「話の聞き方や調べ方は分かった。オルトロスの被害状況と、ウロボロスの研究をしているという人に会って、話を聞いて来るよ。」


「大丈夫か。」


「馬鹿にするな。これでも、一国の王だ。」


「だから心配しているんだ。そんななりでも、要人には変わらない。」


「失礼な男だなあっ!」


丁度、カレンが大フクロウで戻って来たのを見たアレックスは、続けて言った。


「カレン、どっちみち、カールには足が無い。大フクロウで、オルトロスまで連れて行き、ついでに護衛も頼む。」


「えっ、私がですか。」


「うん。頼んだ。じゃあ行こう。カール、気を付けてな。」


「うん。」


アレックスは慌ただしく、大丈夫だと思うと言い続けているマリアンヌを急かして、イリイで飛び立って行った。



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