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第二十二話 黄金週間

志乃視点オンリーです。久しぶりなので思いっきり暴走させます。

五月一日、土曜日。ついに、ついに、ついにこの時が来たわ!


「ゴオォォォォォォルデンッッッウィィィィィィィィック!!!」


とと、いけない。私とした事が朝からこんな大声を出したらご近所の皆さんに迷惑だわ。でも仕方ないの。この湧き上がるテンションは抑える事が出来ないわ。


一日と二日が土日だから、今年のゴールデンウィークは合計で何と五日も連休が続く。つまりその五日間、愛しの広人とイチャつき放題なんですもの!


命編では出番も少なかったから、今回は自重する気はゼロよ。メタ発言? 何それ美味しいの?


ああ、広人とのめくるめく時間。それを想像しただけで私は・・・ふふ、ふふふ、ふふふのふ・・・あ、鼻血が。


ウォーターヒールで鼻血を止める。さて、気を取り直して、まだ寝ているだろう可愛い可愛い弟を起こしに行こうかしら。


「ふんふんふ~ん♪」


鼻歌を歌いつつ、広人の部屋に向かう。もちろん、ただ起こすつもりはない。その前に可愛い寝顔をたっぷり鑑賞しておかないとね。


音を立てないように扉を開け、体を滑らせるようにして部屋に侵入・・・お邪魔する。ベッドの上には・・・ふふ、いたいた。こっちに顔を向けて幸せそうな顔して眠ってる。


そっとベッドの傍に移動して、広人の顔をじっくりと眺める。頬を突っつけば顔を顰めて、優しく頭を撫でればフニャっと顔を緩ませる。


(はう~~! 何て可愛い反応するのよ! 見てるだけで体が疼いちゃうじゃない!)


たっぷりと広人を弄って満足した私は、次の行動に移った。起こさないようにベッドに上がり、広人の横に密着するようにして寝そべった。


「ほ~ら、お姉ちゃん抱き枕ですよ~」


「ん・・・」


そっと囁きかけると、広人が私の背中に手を伸ばし、私を抱き締めてきた。


(ああ、私、今広人に抱き締められてるのね!)


気分は正にヘブン状態! 愛しい人に抱き締められると、こんなにも幸せに気持ちになれるのね。それに、本人、枕、布団、あらゆる所から広人の香りが漂ってきて、私の鼻腔に届く。あ、ヤバ、また鼻血出そう。


(ダメよ、鼻血なんかで広人の布団を汚しちゃ。汚すなら私の純潔の証で・・・)


けどまあ、結ばれるのなら私の部屋でもこの部屋でもどっちでもいいけどね。シチュエーションとしては広人から襲ってくれるのが望ましいけど、この子奥手だし、やっぱり私から行った方がいいのかしら。


「ふわあ・・・。ん、何だ・・・」


なんて、将来設計に思いを馳せている間に、広人が目を覚ました。寝ぼけ眼で私の顔をジッと見つめると、次の瞬間にはその目が全開になった。


「ね、ねねねね、ねねねね姉さん!?」


「お・は・よ・う♪ ふふ、今日もいい天気よ」


「ちょ、ま、何で姉さんが、え、は、これってどういう状況!?」


あらら、すっかりパニックになっちゃって。でもまあ、それだけ私の事を意識してくれてるって事でいいのよね、広人。


「お寝坊さんを起こしに来てあげたのよ。優しいお姉ちゃんに感謝してよね」


「起こしに来たならどうして横で寝てるのさ! てか、起こすなら普通に起こすって約束しただろ!」


「それは・・・」


「それは?」


「ムラムラしてやった。反省も後悔もしていない」


「しろよ!」


恥ずかしいのか怒ってるのか、広人の顔は真っ赤になっている。そういう反応が見たいからやってるって気づいてないんでしょうね。


「さ、起きたんなら早く顔を洗って歯磨きしてきなさい。それから朝ご飯もね」


「今日から連休だろ。もう少し寝させてくれよ」


「何を言うの! 連休だからこそ、弟は早起きしてお姉ちゃんと仲良く過ごさないといけないじゃない!」


「弟にそんな義務は無いと思うんだけど・・・」


「さあ、早く早く!」


「わ、わかったよ」


渋々部屋を出て洗面台へ向かう広人。さてと、私も朝食の準備をしないとね。・・・トーストセットするくらいしか出来ないけど。


「うふふ」


フライパンを振るう広人と、その背中を見つめる私・・・。結婚したらずっと、こんな風にこの子の背中を眺めているのかしらね。


もちろん、広人が外に出て働きたいのならその意志は尊重するけど、もしそうじゃないのなら、私が働いて、広人には主夫として家を守ってもらうつもり。だって、広人くらいカッコイイと、絶対職場の女達に狙われちゃうもの。



『志乃、朝ご飯出来たよ』


『あん、あなた。今日も美味しそうね』


『当然さ。たくさん食べて、志乃には頑張ってもらわないといけないからな』


『もちろんよ。でも、私は子作りも頑張りたいんだけどな~』


『ははっ、仕方のないヤツだなぁ。それなら・・・俺も頑張らないとな!』


『きゃっ!? あ、あなた、会社に遅れちゃうわ!』


『休め休め! 今日は一日使って仕込んでやるからな!』


『や~ん! あなたのエッチ♪』



「でへ、でへへ・・・」


「出来たよ姉さ・・・うおっ!? 凄い涎。そんなにお腹空いてたのか?」





朝食を済ませた私達は。仲良くソファに座ってテレビを見ていた。もちろん、密着する事を忘れずにね。


「うーん、この時間だと面白そうな番組は無いわね~」


「ね、姉さん。ちょっと近すぎな気がするんだけど」


「なあに? 広人は私とくっつくのが嫌なの? 朝はあんなにも情熱的に抱き締めてくれたのに」


「あれは・・・! い、いや、とにかく離れてくれよ!」


広人の目が私の胸元へチラチラと向けられる。今私が着ているのは、胸元が少し大きめに開かれたシャツだった。少し顔の位置を変えれば、ブラまで見えてしまうでしょうけど、私の狙いはそれだった。


(見てる見てる)


本人はさりげなくなつもりなんでしょうけど、女っていうのはそういう視線には敏感なのよ。


「ね、姉さん。上に何か羽織った方がいいんじゃないのか」


「どうして?」


「い、いや、その格好じゃ寒いと思ったから」


「もう五月よ。これでも少し暑いくらいなんだから。胸の谷間に汗が溜まって気持ち悪いわ」


服を摘んでパタパタと空気を入れる。完全にブラは見えていた。広人の顔はもうトマトみたいに真っ赤だ。


「あらあら、顔が赤いわよ広人。何か興奮するような物でも見ちゃったのかしら?」


「ッ~~~! 暑いからだよ!」


そう言って広人は強引に立ち上がると、冷蔵庫からペットボトルのジュースを取り出すと、そのまま一気に流し込んだ。


上々な反応ね。このままもっともっと意識させていけば、いつか広人は私を“姉”じゃなく“女”として見るようになるはずだわ。ああ、今から待ち遠しい。


もう一押しくらいしておこうと広人に近づこうとしたその時、家の電話が大きく鳴り響いた。もう、いい所だったのに無粋なんだから。


「もしもし」


私の方が近かったので受話器を取った。受話器の向こうから聞こえて来たのは、久しぶりに聞く声だった。


『よお、志乃。元気にしてるか?』


「え、お父さん!?」


電話の相手はお父さんだった。


「どうしたの、急に電話してくるなんて」


『いや、仕事の合間にかけてみたんだが。どうだ、広人との二人暮らしは順調か?』


「最高よ。お父さん達には一年といわず五、六年は海外で過ごしていて欲しいくらいだわ」


『おいおい、ヒドイ娘だなお前は! まあ、元気に暮らしてるならそれでいいんだけどよ』


そこでお父さんは言葉を切った。そして、次に発せられた声は先ほどまでとは違う固いものだった。


『・・・“アイツ”は?』


「大丈夫。兆候も無いし、当分心配する必要は無いでしょうね」


『そうか。だが、気は抜くなよ。少しでも異変を感じたらすぐに連絡しろ。そして、もし“アイツ”が出て来たら・・・』


「うん。その時は私が止めるわ」


『頼んだぞ、志乃。“広人”を守ってやってくれ』


「当たり前じゃない。私はあの子のお姉ちゃんなんだから」


『ははっ! 頼もしいな! それじゃ、俺は仕事に戻る。また暇を見つけたら電話するからな』


「ええ、それじゃ」


向こうが切ったのを確認し、私は受話器を置いた。


「父さん、何て?」


「広人が私に手を出してないか心配してたわ」


「あの親父、息子をどんな目で見てたんだ・・・!」


「それより広人ぉ。せっかくのお休みに家でジッとしてるのも暇でしょ。今からどこか行きましょうよ」


「どこかって・・・どこ?」


「どこでもいいわよ。公園でも、デパートでも、遊園地でも、ラブなホテルでも」


「ちょっと待て! 最後の選択肢おかしいだろ!」


「さて、お出かけの準備しないとね」


広人をリビングに残し、私は自室へ向かった。そうして数分後、私と広人は腕を組みながら玄関を出た。


「さあ、今日は遊ぶわよ!」


雲一つ無い快晴の下、私達はそろって歩き始めた・・・。

今回は地の文で志乃の心情を表してみました。中々難しかったですけど、これはこれで満足です。・・・今回もはっちゃけたな。


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