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第十九話 無敵なコンビは大暴れし弟は語るようです

命SIDE



数分かけて連れて来られたのは、町外れにある廃工場だった。数年前に閉鎖されたその場所は、すっかり変わり果てた姿になっていた。誰も立ち寄らないので、連中が溜まり場に使うにはピッタリだ。


その廃工場でアタシを待ち受けていたのは、全部で二十人ほどの男達だった。例外なく、そいつら全員の顔に見覚えがあった。


「よお、待ってたぜ」


その男達の中心に、こいつらとのいざこざの原因になった男が立っていた。数日前、後輩の子に絡んでいたあの男だ。


「俺達の溜まり場にようこそ。どうだ、いい場所だろ?」


「ふん。ゴキブリでも潜んでそうな所だな。お前らみたいな連中には相応しいぜ」


「おいおい。それじゃ、俺達はゴキブリと同格ってわけか?」


「おい。アタシはお前とくだらねえ事を話しに来たわけじゃない。アイツは・・・広人はどこだ?」


「広人? 誰だそれ?」


「とぼけんな! お前らが拉致った男の事だ!」


「・・・ああ! そいつなら今他のやつらがここに連れて来てる最中だ。もう少ししたら会えるぞ。それまで俺と楽しくおしゃべりでもしようや」


馴れ馴れしい態度でそういう男。アタシは殴るかかりそうになる自分を抑えながら男を睨みつけた。


「いいねえ。そんなに見つめられるとゾクゾクするぜ。やっぱたまんねえな。今まで色んな女を見てきたが、お前みたいな上玉は数えるくらいしかお目にかかった事がねえや」


「お前の目的は何だ? 何でアタシを狙う?」


ずっと疑問に思っていた事を口にする。


「男だったら、イイ女とヤりたくなるのは当然だろ?」


その答えに唖然とする。そして、この男と初めて会った時の事を思い出してハッとなった。


「じゃあお前、まさかあの時も・・・!」


「おう。見た感じ中々の女だったから声をかけたんだが、断られちまってな。めんどくせえから無理矢理ヤっちまおうかと思ったその時だよ。お前と出会ったのは」


やっぱり! こいつ、あの子に乱暴しようとしてたんだ! やっぱりボコって正解だったな。


「お前を一目見た時から、俺はお前に惚れちまったんだよ。だからなんとかしてお前を手に入れようと、ほかの連中にお前を連れて来るよう言ったんだよ」


「お前。下半身でしか物を考えられないのか。女一人捕まえるのにこんな大人数使うなんて」


「俺は欲しい物を手に入れるためなら手段は選ばねえ。そのかいあって、ようやく今日、こうしてお前を連れて来る事が出来た。へへへ、今から勃って来たぜ」


ズボンの前を盛り上がらせる男に吐き捨てるように言う。


「頭涌いてんのか? アタシが素直に言う事聞くとでも?」


「なら仕方ねえ。このムラムラを別の形で発散するか」


「別だと?」


男の顔が喜悦に歪む。


「もうすぐサンドバッグが届くからな。それをスッキリするまで殴るまくってやろうかな」


もうすぐ届く? サンドバッグ? そんな物一体・・・。


「人形のサンドバッグなんて初めてだからな。楽しみだぜ」


「人形・・・。・・・ッ! お前、まさか・・・!!」


いま全てを理解した。広人に手を出したのは、アタシをここに連れてくるためだけじゃない。アタシが言う事を聞かなかったら広人を痛めつける気だ!


「下衆野郎! そんなくだらない事のためにアイツを巻き込んだのか!」


「アイツ? サンドバッグをアイツ呼ばわりなんて。変な女だな」


「どの口が言って・・・!」


「お前が俺に従えば、サンドバッグの必要性も無いんだがなぁ」


「どうする?」と、男はアタシの顔を見ていやらしくニヤついた。アタシが拳を握ったのを見て、男が忠告するように言って来た。


「下手な真似は考えるなよ。こんだけの人数ならいくらなんでもお前一人相手に後れ取りはしねえ。それに、この廃工場の魔制装置はまだ生きてるから魔法を使おうとしても無駄だぜ」


「・・・」


「よく考えるんだな」


正直言って、こいつら全員の実力は知っているので、この人数でも負ける気はしない。魔法が使えないのも問題じゃない。けど・・・。


「(こいつらが広人に何するかわからない以上、アタシに選択の余地は無い)」


アタシは拳を解き、男に尋ねた。


「・・・どうすればいい?」


「とりあえず、服でも脱いでもらおうか」


「・・・わかった」


アタシは制服のボタンに手を伸ばした。一つ一つ外すたびに、男達に耳障りな口笛が廃工場に木霊した。


「おほ、ピンクだぜピンク」


「さすが、お嬢様は下着もお上品ですねぇ」


「へー、結構巨乳じゃねえか」


「いや、あれは美乳だ」


そして、上下下着一枚になったアタシに、男達のギラついた視線がいくつも突き刺さる。不快感で背中がゾッとした。


「おい。マット持って来い」


「はい」


アタシを犯す準備を始める男達。その時、廃工場の入口の方から何やら声が聞こえて来た。


「おっと。どうやらもう一人のゲストが到着したようだな」


「広人・・・」


男達が視線を向ける。アタシも振り返る。すると、そこには予想外の光景が広がっていた。


「命さん!」


広人がアタシの名前を呼ぶ。ここまでは予想していた。ただ、広人の両隣にそれぞれ女が並んでいた事。その片方の女に見覚えがある事。その女に首根っこを掴まれている男については、全く予想していなかった。


「広人。それに・・・まさか、今日子?」


「久しぶりだな命。またずいぶんと扇情的な格好だが。・・・お前に露出趣味があったとはな」


「んなわけないだろ!」


間違いない。今日子だ。再会して早々あんなアホな発言するのはアイツ以外の何者でもない。


「あの中に広人を殴ってくれた張本人がいるのね。・・・ふふ、どうしてあげようかしら」


もう一人は知らない。名前を呼ぶって事は、広人の知り合いのようだけど・・・。


「仙波とやらはどこにいる」


今日子が男達を見据える。すると、あの男が答えた。今更だが、この男の名前は初めて聞いた。


「俺が仙波だ。で、お前らは?」


「私は石田 今日子。そこにいる神代 命の友人だ。私達がここに来た理由は一つ。貴様らが命に手を出すのを止めさせるためだ」


「な、何でそれを・・・!」


こいつらとの事は今日子は知らないはずだ。なのにどうして・・・。


「すみません、俺が話しました」


広人が申し訳なさそうに答えた。コイツ、今日子と知り合いだったのか。


「ふうん。お友達の為にわざわざやって来たってわけか。・・・いいぜ。その勇気に免じて、手を出すのは止めてやるよ」


「そうか。感謝する」


今日子達がアタシに近づいて来た。そして、アタシ達が纏まると、仙波達は一斉に囲んできた。


「なんのつもりだ?」


「まさか本気にしたのか? やっとヤれる手前まできたのに、手放すわけないだろうが。よくみりゃあ残りの二人もイイ女だしな。三人纏めて可愛がってやるよ」


仙波が今日子に手を伸ばす。その瞬間―――。


グチャ!


「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」


今日子の爪先が仙波の股間に食い込んだ。硬い革靴の先が直撃し、仙波が悲鳴を上げる。・・・多分、潰れただろう。


「せ、仙波さん!?」


「テメエ、何を・・・!」


「こんな男の胤など、無くなった方が世のためになる」


今日子の発言は、周りの温度を大きく下げた。何人かが手でズボンの前を被った。


「うう・・・」


広人も同じような格好になっていた。


「仏心で穏便に済ませてやろうと思ったが。・・・仕方無い。志乃、やるぞ」


「了解。さあて、広人。あなたを傷つけた罪人はどこにいるかしら?」


志乃と呼ばれた女が広人に尋ねる。


「え、えっと・・・アイツ」


広人が一人の男を指差す。すると、女の雰囲気が変わった。手のひらを突き出すと、その上に炎の塊が出現した。


「ま、魔法!? おい、魔制装置はどうした!?」


「魔制装置? 何それ、美味しいの?」


「いい事を教えてやろう。その女こそが『スペルクイーン』だ」


男達に恐怖と動揺が浮かぶ。『スペルクイーン』といえば、あのテロ事件で有名になった『豪炎の勇者』と『風刃の魔女』の娘に与えられた二つ名だ。とてつもなく膨大な魔力を持ち、四属性の魔法を自由自在に操る天才で、星神市に住んでいるとは聞いていたが、まさか本人をこの目で見られるとは・・・。


「もう一つ教えてやろう。広人君はな、スペルクイーンの弟だ。それに手を出す事がどういう事か・・・身を以て知るがいい」


「炎よ! 我が身に宿れ! フレイムエンチャント!」


スペルクイーンが詠唱すると同時に、その右手が激しい炎に包まれる。


「風よ! 汝が恩恵を我に与えよ! ゲイルムーヴ!」


スペルクイーンの姿が消える。刹那、広人が指差した男が火だるまになった。


「熱っちぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」


「に、二属性同時発動!?」


誰かが叫ぶ。今、スペルクイーンは、自身の動きを爆発的に速める『ゲイルムーヴ』と、炎を宿らせる『フレイムエンチャント』を同時に発動させたのだ。


「本当は骨まで燃やしてあげたいけど、広人の前だから許してあげるわ」


再び広人の隣に戻って冷笑するスペルクイーン。


「ふっ!」


「ひぎぃぃぃぃぃぃぃ!」


別の悲鳴が響く。見ると、またしても今日子の蹴りが男の股間に突き刺さっていた。


「・・・さて、次に胤無しになりたいのは誰だ?」


恐怖を煽るように残りの男達に言い放つ今日子。その姿に、戦意を喪失した男達が背を向ける。


「や、やべえよこいつら!」


「に、逃げるぞ!」


「逃さないわよ」


スペルクイーンが三度目の詠唱を終える。床に出現した魔法陣から、太い蔦が何百本も湧き出てきた。その蔦が何重にも絡み合い巨大な檻となり、男達を一人残らず閉じ込めた。


「見事なプリズンプラントだな。こんな巨大な物は初めて見たぞ」


プリズンプラント・・・昔は犯罪者を捕まえるのに、この魔法をよく使っていたらしい。現代でも、地属性の警察官はこれを使えるのが必須なのだとか。


・・・などとどうでもいい事を考えていると、今日子とスペルクイーンが檻の前に立った。


「この状態でさっきみたいにフレイムエンチャントを使ったらどうなるかしら」


「これだけの蔦だ。よく燃えるだろうな」


「ば、化物!」


一人の男がスペルクイーンに雑言を浴びせる。だが、当の本人は涼しい顔で流した。


「あら、ありがとう。その言葉は今の私にとっては最高の褒め言葉だわ」


「お前達に選択肢をやる。ここで仲良く黒焦げになるか。もしくは、二度と命や広人君に手を出さないと約束し、去るか」


「約束だけでいいの?」


「問題無い。・・・この約束がどれほど重いものか理解出来ない愚か者はここにはいないだろうからな」


今日子のこの一言に異議を唱えるものは存在しなかった。男達は震えながら約束する事を誓い、気絶していた仙波を連れて逃げて行った。


「やる事無かったな・・・」


広人の呟きがやけに大きく聞こえた。



命SIDE OUT



IN SIDE



不良グループがいなくなり、場には俺と姉さんに今日子先輩。そして命さんだけが残された。


「今日子・・・」


命さんが何か言いたげに今日子先輩を見つめる。


「命。話をする前に、まずは服を着たらどうだ」


「え? ・・・ああ!」


自分がどういう格好をしているのか思い出したのか、慌てて落ちていた服を拾う命さん。


「見るな広人! 見たら殴る!」


「見てません! 見てませんよ!」


数秒で服を着終えた命さんが疑わしげに睨んで来たが。俺は見てないの一点張りで通した。


・・・本当はしっかり見ましたけどね。


「そ、それより、ちゃんと話してもらうぞ。何で今日子が広人と一緒にここに来たんだ?」


「ちょっと、私もいるんですけど」


「はいはい。姉さんはちょっと黙っとこうね」


「ぷ~~」


「広人君から全てを聞いた。お前が先ほどの連中とトラブルを起こしていた事も。お前が家族に対してつまらない不安を抱いている事も」


「ッ! 広人! お前あの事・・・!」


命さんが愕然とした顔で俺を見つめる。俺は目を逸らしたくなる気持ちを抑えながら頷いた。


「はい。全部話しました」


「命。広人君はな、お前の事を心配して私に相談してきたんだ。おじさま達にちゃんと自分の気持ちを話すべきだと。だが、知り合って間も無い自分が言っても聞いてくれないだろう。だから昔からの友人である私から言ってくれとな」


「この・・・お節介野郎が!」


命さんが初めて敵意の篭った目で俺を睨んで来た。覚悟していたとはいえ、やっぱり辛い。


「ああ、あなただったのね。前に広人が話してた大馬鹿者の友達って」


姉さんが呑気そうにそう言った。


「・・・何の話だよ」


「あなたの事よ。家族と他人を一緒くたにして、周りの気持ちを考えようともしない馬鹿な友達さん」


馬鹿にするように答える姉さんに、命さんが掴みかかった。


「なんだと! アタシがいつ家族と他人を一緒にしたって言うんだよ!」


「他人に迷惑をかけるのは悪い事よ。けど、家族って迷惑かけてなんぼじゃない。家族に迷惑かけたくないって事は、家族も他人ですって言ってるようなものだと思うけど」


「違う! アタシは・・・!」


「それともう一つ。あなた、見捨てられるのが嫌とか言ってるらしいけど、今までそういう言葉を受けた事があるの?」


「それは・・・」


「無いのでしょう? それなのに一人で勝手に騒いじゃって。これが勘違いだったら、傷つくのはあなたじゃなくてあなたの家族よ? 自分だけで結論づけちゃって・・・馬鹿みたい」


命さんが俯く。きっと、今の姉さんの言葉で何か感じてくれたはずだ。あともう一押しでいけるかもしれない。


「命さん。聞いてください」


「・・・」


命さんは無言だ。けど構わない。聞いてくれるだけでいい。


「俺の親は、俺が小さい頃に死にました」


「え・・・?」


命さんが顔を上げた。


「一人になった俺を、両親の友人だった黒川家が引き取ってくれました。今の父さんと母さんは、俺を本当の子どものように愛し、育ててくれました」


「私もたくさんの愛情を注いだわ!」


「う、うん。姉さんも俺を可愛がってくれたよね。・・・ええっと、つまり、見捨てるとか見捨てないとか、家族ってそんな生半可な物じゃないと思うんですよ。世の中には友達とか恋人とか色々な関係がありますけど、家族っていうのはそんなのよりずっと深い関係じゃないですか。友達や恋人には見捨てられる事もあるだろうけど、家族の繋がりは友達や恋人よりずっと固い。だから、見捨てられるなんてありえないし、見捨てるなんて許されないです。俺は、たとえこの先どんな事があろうと、家族を見捨てるような真似は絶対にしません」


あー、自分でも何が言いたのかわからなくなって来た・・・。


「広人・・・」


命さんが俺の顔を見つめる。さっきとは違い、辛そうな、切なそうな顔をしていた。


「・・・帰りましょう、広人」


姉さんが俺の手を取った。


「え、でも・・・」


「今日子がいれば大丈夫よ。それに、今の広人の言葉でも考えを変えないようならもうどうしようもないわ」


「そうだな。広人君、後は私に任せてくれ」


「は、はい」


今日子先輩と命さんをその場に残し、俺と姉さんは帰宅の途についた。



翌日。通学路で合流した今日子先輩に事の顛末を聞いてみた。


「心配無い。昨日、実家に戻るのを見届けた。志乃とキミの言葉が堪えたようだな。ちゃんと話すと言っていたぞ」


「そうですか・・・」


「ありがとう、広人君。命の友人として、深く感謝する」


「い、いえ。今回の事は本当に俺のお節介の所為ですから」


「そのお節介な所が広人のいい所じゃない」


「その通り。気に病む事は無いさ」


二人の言葉は嬉しかったが・・・やっぱりちょっと自重した方がいいかもな。



そして放課後、日課の練習は今日は中止して帰ろうと下駄箱を出た所で、校門前がやけに騒がしいのが目に付いた。


「おい、あれって聖クロイスじゃん!」


「お嬢様学校の生徒がウチに何の用だ?」


校門に近づくにつれ、そんな会話が耳に届いてきた。そして、校門を出た所で俺の目に映ったのは・・・。


「み、命さん!?」


「よ、よお」


制服姿の命さんが、片手を上げて挨拶してきた。


「ど、どうしたんですか。こんな所で」


「ちょっとお前に話があってな」


話? もしかして、昨日の事だろうか。


「アイツは、黒川弟! おのれ、志乃先輩という最高の姉を持ちながら、聖クロイスのお嬢様とも知り合いだと!」


「やっぱり生かしておけん! おい、グラウンドに戻せ! ここじゃ魔法が使えん!」


周りからの殺気に、とっさに命さんの手を取って走る。


「な、何だよ!?」


「ここは危険です! とりあえず公園に!」


しばらくして、例の公園に辿りついた。何だか最近、この公園を使用する機会が増えた気がする。


「はあっ・・・ここまでくれば」


「・・・いつまで握ってるつもりだよ」


「え? あ、ああ、すみません」


慌てて手を離す。命さんの頬がやけに赤いが・・・まあ走ったから当然か。


「そ、それで、話っていうのは?」


「昨日の夜、話したよ。お父様達に全部」


「ど、どうでした?」


「そうだな。とりあえず・・・叩かれたよ」


「え?」


「お兄様に思いっきりな。お母様も泣かせてしまった。お父様も・・・あんなに怒られたのは生まれて初めてだった」


怒られたというのに、命さんは嬉しそうに話していた。


「それからすぐに抱きしめられた。それで、ハッキリ言われた。「愛するお前を見捨てるなど、例え神に命じられようとありえん!」ってさ。はは、スペルクイーンの言うとおりだったな。結局、全部アタシが先走って勘違いしてただけだったんだ。お父様もお母様もお兄様も、アタシが思っていた以上にアタシを愛してくれてたんだ・・・」


「そうですか」


よかった。これで命さんの悩みも解決だな。


「とまあ、この話はこれで終いだ。次は広人に対する処遇だな」


「え!?」


「お前、アタシが信頼して話した内容を今日子に話しただろ。それに、スペルクイーンにも」


「う・・・」


「ショックだったぞー。裏切られた気分だったぞー。どう詫びてくれるんだー?」


「す、すみません。殴られても文句言えませんよね」


「そうだな。・・・よし、ちょっと目を瞑れ」


「はい?」


「いいから!」


「わ、わかりました」


命じられるままに目を瞑る。うう、何されるんだろう・・・。


「うりゃ!」


「痛っ!」


おでこに走る激痛に思わず目を開けると、命さんが満足気な笑みを浮かべていた。


「どうだった? アタシのデコピンは」


「めっちゃ痛かったです」


「そうだろ。何せ、前にお前よりずっと大きい相手を一撃で気絶させた事があるからな」


「なんてものを放ってくれるんですか!」


「あはははは!」


大笑いする命さん。その顔は、どこか憑き物が落ちたように晴れ晴れとしていた。


「(・・・まあ、この笑顔が見れたからいいか)」


命さんにつられるように、いつしか俺も笑っていた・・・。

本当は頬にキスでもさせようかと思いましたが、まだ早いかと思ったので、デコピンにしました(キスとデコピンじゃ全然違いますけど)。


さて、とりあえず、今回で命編とでも言うべき話は完結しました。次回からはまたのんびりとした日常を書いていこうと思います。

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