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第十話 彼女と彼の関係

生徒会長の登場で、講堂内が大きくざわめいた。


「か、神代先輩よ!」


「え!? どこどこ!?」


「神代先輩だけじゃないわ! 黒川さんもいる!」


「今日子お姉様もよ! あの三人ってどんな関係なの!?」


「はあ・・・画になるわ・・・・」


姉さんと先輩にも多くの視線が注がれる。・・・てか、今日子“お姉様”って何だよ。


「騒がしくなって来たわね」


「そうだな。おい亮介、何とかしろ」


「僕が? けど、どうすれば」


「お前が一言何か言えばみんな大人しくなるさ」


「じゃあ・・・」


神代先輩が大きめに声を張り上げた。


「みんな、僕達の事は気にしなくていいから練習を続けてくれ」


「「「「は~い!」」」」


たったそれだけで元の場所に戻って行く生徒達。・・・これがイケメンの力か。


「私達も隅の方へ移動しよう」


また騒がしくなっても困るので、四人で講堂の隅に移動した。


「それで、今日子ちゃん。僕をここに呼んだ理由は何なんだい?」


「ああ、それはだな・・・」


「ちょ、ちょっといいですか?」


どうしても気になる事があったので思わず挙手する。


「どうした広人君?」


「先輩と会長って、もしかして知り合いなんですか? さっきから聞いてたら凄く親しげですけど」


「おや? 広人君には教えてなかったかな?」


「覚えは無いですけど」


「そうか。それはすまなかったな。では改めて教えよう。私と亮介は所謂幼馴染というヤツなんだ」


「幼馴染?」


って待てよ。御曹司の会長と幼馴染って事は・・・。


「もしかして、先輩ってお嬢様?」


「一応、石田グループトップの一人娘だ」


ここに来て驚愕の事実が発覚してしまった。石田グループといえば、神代財閥に並ぶ知名度を誇る会社じゃないか。確か、お互いに業務提携も結んでいるはずだ。


「けど、なんて言うかその、先輩って・・・」


「お嬢様に見えないか?」


「い、いや、そういうわけじゃ」


「ふふ、いいんだよ。私自身、そういう風に見られるのが好きじゃないんでな。だから家の事についてはあまり言わないようにしているんだ。だから、志乃や広人君と遊ぶ時はいつもそちらの家に行ったり街に出かけたりしてたろ?」


「あ、言われてみれば・・・」


前に先輩の家に行ってみたいって言った時に苦笑いされたのはそのせいだったのか。


「姉さんは知ってたの?」


「ええ。けど、私が話す内容じゃないし、ずっと秘密にしてたの。ゴメンね広人」


「謝る事じゃないよ。そっちの方が正しかったと思うし」


「ありがと、広人」


「広人? そうか、キミがあの広人君なんだな」


会長が俺の顔をしげしげと見つめる。そして、一言小さく呟いた。


「・・・なるほど。似ているな」


「え?」


「いや、何でもないよ。それより、改めて自己紹介を。僕は神代 亮介。三年生で、この星神高校の生徒会長をやらせてもらっている。属性は光だ。よろしく」


「黒川 広人です。隣にいる黒川 志乃の弟で、今年入学した一年生です。属性は会長と同じ光です。よろしくお願いします」


「お、キミも光属性なのか。思わぬ共通点だね」


そう言って、会長は女子なら百パーセント落ちるであろう素敵スマイルを見せた。現に、後ろの方から何かが倒れる音が聞こえる。おそらく会長の顔を見てしまった女子が気絶でもしたのだろう。


「相変わらずの天然ジゴロね」


「自覚がないから余計に質が悪い」


姉さんと先輩はいつも通りだ。これはちょっと意外だった。


「姉さん達は会長の笑顔を見ても反応しないんだな」


「あれぐらいで落ちるほど私は安くはないわよ」


「私は子どもの頃から見ているからな」


「ふうん」


「「(というか、広人(君)以外の男の笑顔に興味無いもの)」」


「ひどいな。今日子ちゃんなんか、子どもの頃はよく「亮介お兄ちゃんが笑うと私も嬉しいな」なんて言ってたのに」


「なっ!? 何年前の話を持ち出す気だお前は!」


「それに、結婚の約束だって・・・」


「それ以上言えば命はないと思え!」


先輩が魔法の準備を始める。・・・まずい、目が本気だ。


「あはは! すまない。からかい過ぎたな」


会長が降参するように両手をあげると、先輩は忌々しそうに手を下ろした。


「くそ、私とした事が、亮介ごときに煽られて広人君の前でつい声を荒げてしまった」


「なんか意外ですね。先輩っていつもクールなイメージがありましたから」


「げ、幻滅したか?」


「いえ、むしろ先輩の違う一面が見れてよかったです」


「ッ・・・! そ、そうか。・・・亮介」


「何だ?」


「G・J」


今日子先輩が親指を立てる。会長は何だかよくわかってない様子で同じように親指を立てた。


「む~~」


「どうしたんだ姉さん。リスみたいに頬を膨らませて」


「何でもありませ~ん。別に今日子フラグが立った事なんて気にしてませ~ん」


「フラグて・・・、何でそんな単語知ってんの。というか、今の会話でフラグ立つ要素がどこにある」


「そうだぞ志乃。それにフラグならずっと前から立ちっぱなしだ」


「なあ、広人君。あ、名前で呼んでよかったかな?」


「はい」


「ありがとう。それで、フラグってどういう意味なんだ? 僕、流行とかに疎くて」


「知らない方がいいです。会長はそういうのに染まったらダメな気がしますから」


「そうかい? なら聞かないでおくよ。それと、僕の事も名前で呼んでくれて構わないよ」


「なら亮介先輩でいいですか?」


「う~ん。もうちょっと柔らかくてもいいんだけど」


「でも、先輩ですし」


「それだったら、さん付けならどうだい」


「わかりました。なら亮介さんって呼ばせてもらいます」


「ありがとう。いやあ、嬉しいな。僕、男の後輩に名前を呼んでもらうのって初めてなんだ」


「そうなんですか?」


「いつも『神代先輩』や『会長』ばかりでね。もっと気安く呼んでくれて構わないんだけど、『女子に殺されます!』って言って断られちゃって。・・・なんでだろう?」


男にすら嫉妬するとは。この学校の女子って思ったより怖いな。


「話がだいぶ逸れてしまったな。そろそろ本題に入ろう」


今日子先輩が話を切り替える。すっかり話し込んでしまったが、ここに来たのはそのためじゃない。


「亮介、お前を呼んだのはだな。広人君の魔法の練習に付き合って欲しいからだ」


「魔法の練習?」


「実は・・・」


俺は魔法について悩んでいる事を亮介さんに伝えた。亮介さんは真面目な顔をして聞き続けてくれた。


「・・・なるほど。わかった。僕も協力するよ」


「ありがとうございます」


「なに、僕は会長で先輩だからね。生徒で後輩のキミが困っているなら協力するのは当然さ」


・・・やべ、今一瞬惚れそうになった。


「(男すら狂わすとは、恐ろしい人だな)」


「それじゃあ座ってくれ」


その場に腰を下ろすと、亮介さんが一呼吸おいて話し始めた。


「まずは復習してみようか。この世界に存在する魔法には六つの属性がある。詳しくは省略するけど、その六つは四大属性と二極属性にわけられている。光は二極属性の一つである。・・・ここまではいいね?」


「はい」


「では、何故わざわざ光と闇だけ二極属性などと名づけて分けたのか。理由はわかるかい?」


「ええっと・・・。四大属性のように弱点がなくて強力だから・・・ですか?」


「正解。その強大さ故に、二“極”なんてつけられてるわけだね。知ってるかな。歴史上で名前を残して来たほとんどの人物が二極属性のどちらかだった事は」


「信長とかですか?」


「そう。織田信長は闇の魔法の使い手だった。信長は本能寺で明智光秀の謀反によってこの世を去ったけど、普通に考えて、火属性だった光秀相手に信長が負けるはずがなかった。そこらへんの事は未だに議論が続いているみたいだけどね」


「へえ・・・」


「他には豊臣秀吉や徳川家康。二人とも光属性だったらしいけど、よく考えると、そんな偉人達と同じ属性なんて凄い事だよね」


秀吉や家康もシャインやライトニングウォールを使って戦っていたんだろうか。そう考えると凄いな。


「おっと、また話が逸れちゃったな。そんな強力な二極属性だけど、その分四大属性に比べて扱いがとても難しいんだ。かくいう僕も、まだ九つくらいしか覚えてないんだけどね」


「充分凄いですよ。俺なんてまだ二つですし」


「悲観することはないよ。僕も中学二年生までは三つしか覚えてなかったけど、それから今までで六つ使えるようになったんだから。キミもある日がきっかけで一気に使えるようになるかもしれないよ」


「そうだといいんですけど・・・」


「さて、話はこれくらいにして、今度は実際に魔法を使う所を見せてくれないかな。気づく所があったらすぐに教えるから」


「わかりました」


とりあえず、まずはシャインを唱えた。現れた光の球を亮介さんはジッと見つめていた。


「・・・相当な魔力が込められてるな。広人君。次はもう少し抑え目でやってみてくれるか」


「わかりました」


再びシャインを唱える。


「さっきと同じだよ。もっと抑えてくれないと」


「抑えてるつもりなんですけど・・・」


「意識はしてるのに変わらない・・・。なるほど、魔力のコントロールが上手くいってないようだな」


「コントロール・・・ですか?」


「ああ。どうやらキミは一度の魔法にありったけの魔力を消費して発動させているようだけど、それじゃあ数回使っただけで魔力が尽きてしまうのも仕方がないよ。ちゃんと魔力の量を調節して発動させればもっと回数を増やせるはずさ」


「え? そんな簡単な理由だったんですか?」


「でもキミは気づかなかっただろう?」


確かに、知ってしまえば簡単だが、こうして亮介さんに言われるまでまったく気づかなかった。


「けど、それなら解決策も簡単さ。魔力のコントロールを意識して魔法を使う練習を繰り返せば、その内意識しなくても魔力量を調節する事が出来るようになるさ」


そう言って亮介さんがシャインを発動させた。俺が出したのよりもかなり小さい光球が亮介さんの手のひらに現れる。


「これが最小魔力を込めたシャインだ」


次に手のひらに現れたのは、サッカーボールほどの大きさをしていた。まばゆい光が講堂内を照らしている。


「で、これが少しだけ魔力を増やしたシャインだ。どうだい? コントロールさえ出来ればこんな事も可能なんだよ」


涼しげに微笑む亮介さん。・・・なんか、凄すぎて逆に何も言えない。


「そういえば、広人君はライトニングウォールが使えるんだよね。なら、次はそれを応用した魔法を見せてあげるよ」


亮介さんが両手をかざして詠唱を開始しようとした・・・その時だった。


「た、大変だー! 魔導科学部の作った魔導人形が暴走したーーー!」


外から男子生徒の声が響く。魔導人形といえば、魔力をエネルギーにした機械仕掛けのロボットの呼び名だ。それが暴走したって・・・。


「はあ・・・またなの?」


「懲りないなあそこは」


「またって・・・、前もあったのか?」


「魔導人形の暴走はこれが初めてじゃない。広人君が入学する以前から度々起こってるんだ」


そんな事を話していると、その魔導人形が講堂の入口に姿を現わした。全長は二メートルくらいだろうか。ドラム缶みたいな体に、三角形の頭とパイプみたいな細い四肢がくっついている。


「・・・魔導人形ってあんな形だったっけ」


「所詮学生の作った物だからね。プロが作った物と比べたら雲泥の差よ」


「だが、放っておくわけにもいくまい」


「そうね。ちゃちゃっと片付けちゃいましょうか」


姉さんが意気揚々と前に出ようとした。すると、亮介さんがそれを止めた。


「それは僕の役目だよ黒川さん。ちょうどいい機会だ。広人君、さっき話した応用魔法を見せてあげるよ」


魔導人形がゆっくりと近付いてくる。そんな中、亮介さんはさっきと同じように両手をかざして詠唱を開始した。


「光よ! 聖なる壁へと姿を変え、彼の者を永久の牢獄へ閉じ込めよ!」


詠唱終了と同時に、四つのライトニングウォールが魔導人形を取り囲んだ。そして、それは少しずつ魔導人形に向かって迫り始めた。


壁を破壊しようと、魔導人形が中から壁を殴る。だが、絶対的な硬さを持つ壁はビクともしない。その内、何かが軋む音が聞こえて来た。そして・・・。


「押しつぶせ! ライトニングプレッシャー!」


亮介さんが叫んだ刹那。迫り来る壁によって、魔導人形は破壊音と共にあっけなく圧壊した。


数秒してライトニングウォールが消滅し、中から潰れた魔導人形の残骸が出て来た。その様子から物凄い圧力がかけられたのが容易に想像出来る。


「どうだい広人君? 今のがライトニングウォールの応用魔法、ライトニングプレッシャーだよ」


「何ものをも受け付けない無敵の壁。それを使って対象を取り囲み、何も抵抗させないまま押しつぶすとは」


「いつ見てもエグい魔法よね~」


「ちょっと違うな。この魔法は相手を傷つけずに捕まえるために編み出された魔法なんだよ」


「お前、今、押しつぶしただろ」


「暴走した魔導人形は破壊しないと止まらないからね」


魔導人形の残骸を見つめながら俺は思った。


ひょっとして、俺はとんでもない人物と知り合ってしまったのではないだろうか・・・と。

少し前に「魔法って蛇足じゃないですか」という感じの感想をいただいてしまったので、今回から少しづつ混ぜていきたいと思います。

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