ウソかマコトか
フィクションです。R-15で性描写があります。
「あっ……」
「やばぃ……」
2人の声が重なった。
満足げに笑うマコトに、ウソは優しく頬を撫でた。
果てたあとも静かに身体を触れ合わせていた。
ただ隣にいるだけで満たされるような、穏やかな夜だった。
ウソとマコト。
それは、ここ最近で一番上手くいった情事だった。
普段はマンネリ化していた。
というか、もう上手くいくなんてことは一度もないんじゃないかとすら思っていた。
マコトがパニック障害を発祥して以来、彼女はウソの誘いを拒絶することが極端に増えた。
2人のルールとして、いつの間にかあった"週1回"ができなくなっていた。
ウソはそれでも一緒にいると言った。でもそんなのは建前だよなと、マコトは思った。
マコトは「抜くだけならいいよ」と言った。
マコトはもともと濡れにくく、不感症気味だった。
それでもウソとのセックスは嫌いではなかった。
愛されていると感じられたからだ。
ウソは彼女を欲しがった。
そのことが嬉しかった。
だから二人のセックスは自然と、マコトが奉仕する形になることが多かった。
それが二人にとって心地よい距離感だった。
けれど今は違う。
自分のことで精一杯だった。
心も身体も、誰かを受け入れる余裕を失っていた。
なぜパニック障害になったのか。
理由は一つではない。
マコトとウソは同じ会社に勤めていた。
同じ新卒入社だった。
ウソは順調に評価されていた。
一方でマコトは失敗を繰り返した。
たかが、一年。されど一年。
なぜこんなに差がついてしまったのだろう。
その焦りは少しずつ彼女を追い詰めていった。
マコトはウソと仕事の話をするのを避けるようになっていった。
それだけじゃない。
ウソの母親はマコトを嫌っていた。
そしてウソは、そのたびに彼女を守ってくれなかった。
⸻
「母さんとマコトに板挟みでさ。俺も辛いんだ」
ある日、ウソはそう言った。
「私は、もっと辛いよ」
マコトは正直に答えた。
その言葉が届いたのかどうかは、わからなかった。
しばらく沈黙が続いたあと、彼女は言った。
「ウソ。あなたが選べるのは二つに一つだよ」
「……」
「お母さんか、私か」
ウソは苦しそうな顔をした。
「無理だよ」
そして首を振る。
「母さんも守りたい。でもマコトのことも愛してる」
その瞬間だった。
マコトは、自分の気持ちが静かに冷えていくのを感じた。
愛情が冷めるとは、こういうことなのかもしれない。
妙に冷静だった。
⸻
「じゃあ、別れようか」
そう言ったのはマコトだった。
ウソは泣いた。
マコトも泣いた。
別れたいわけではなかった。
ただ、これ以上続ける未来が見えなかった。
⸻
「少し外に行ってくる」
時計は午前一時を回っていた。
「心配だよ」
「大丈夫。すぐ戻るから」
そう言ってウソは部屋を出た。
マコトが睡眠薬を飲んだ後のことだった。
気づけば眠ってしまっていた。
⸻
翌朝。
目を覚ますと、隣でウソが眠っていた。
昨夜と同じ顔で。
台所を見る。
空き缶が一つ増えていた。
ストゼロだった。
最近飲んでなかったのに。
泣きながら飲んだのだろうか。
マコトはそう思った。
そして理解する。
二人の関係は、昨夜で終わったのだと。




