人間やめますか?AIをやめますか?
薬物中毒だって簡単に言えばハイになっているときは本能のまま生きる動物みたいだ。だが、抜けた時は廃人になる。
(これは嫌、あれも嫌。ただただボーッとしておきたい。)その姿を上手に描いた言葉が『人間やめますか?』に違いない。
だとするならば、今目の前で見ている写真に映る犯人たちの様子も、その姿と同じだと俺は直感した。
「だけど、どういうこと?じゃあ……」
「例えば、俺の勘だとこいつらは人間じゃない何か、例えば❝AI(人工知能)❞に支配されてるとか?」
「いや、九条、それは漫画の見すぎだろ」
間髪入れずに否定してきた部長に思わずムッとしたが、大人なので即座に言い返すことを我慢した俺は、二本目のエナジードリンクを一気に飲み干した。
……そういや、これ賞味期限は大丈夫なのかな。
「でも、部長。現にこいつら人間じゃないって証明しないと何も進みませんよ。」
「じゃあ、逆に聞くが、人間じゃないっていう証明はどうやってするんだ? 今から頭蓋骨にドリルで穴をあけて、脳みそにチップ入れられてないか確認でもするか?」
「……」
「そんなこと、この国で出来るわけがないだろう。そんなの、ロシアじゃあるま「待て! それだ! それだ、部長!」
そうだ、日本はそんな捜査は出来ない──。
だが、ロシアなら? ドバイなら? フランスなら?もしかすると極秘で捜査を進めているかもしれない。
「確か部長、日本のこの犯人って全員前科持ちでしたよね?」
「ああ、今回の犯人も務所と外を言ったり来たりだ。全て婦女暴行絡みでな。」
それを片耳で聞きながら、俺は資料の山を漁る。ただでさえ汚い机がさらに汚くなるけれど、そんなの気にしている余裕はなかった。
「……これだ、これだ! これ!」
「桜子、ちょっと訳してくれ!」
バサッと資料の束を桜子に渡した。一番上にあるフランスの資料を桜子に指差す。
「え? ここには……えーと『犯人は虐待加害者や性犯罪者である』って書いてるわよ」
「それは各国一緒だ!それ以外だよ!例えば『取り調べ時にCTを撮った』とかそういうことは書いてないか?!」
「いや、それは書いてないでしょ……さすがに犯人が前科持ちの大悪党でも、取り調べでそんな事したら大問題になるじゃない」
「お願いだ! 頼むよ! 隅々まで見てくれ!」
そうだ、この感覚、久しぶりだ。
まるでファンダメンタル分析で「これは絶対に上がる」という株が見つかった時の、あの衝動的な確信。
この感覚の時の俺は基本的に外さない。これは過去の経験から自分で知っている。
「待って、九条くん何が言いたいの?」
「おい、落ち着けよ九条」
「……はあ、つまり、あれっすよ!」
「犯人は人間で、それも欠陥のある人間。例えば目の前に金や薬や女を積まれたら、それについていくような人間。」
「そんな人間を黒いコートの人物が選別していて、そして、頭か脳か体か何かしらないけれど、どこかにチップとかを埋め込んで遠隔コントロールしているとしたら? あり得ないけれど、それなら全て説明つくだろ?!」




