人間と人間の戦いなのか、それとも。
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メンバーたちと、NYPDから用意されたバンの中で会話を聞いていた俺は、正直なところ、聞けば聞くほど何が正解か分からなくなっていた。
──もし、俺があの時無理を言い中に入り、ライリーと同じ場所に立っていても……AIに言い返せる言葉は浮かばないだろう。
きっとメンバーも同じく複雑な感情を抱いているに違いない。その証拠に、今このAIからのメッセージを聞いて誰一人、何も言葉を発さなかった。
「………ッ」
命の選別、なのかもしれない。
不要分子が不要分子を殺して何が悪いんだ、というのがAIの意見ならば、俺もこの世に不要分子等居ないと声を大にして叫びたいものだ。
だけど、実際世界には論理感の狂った人間が山盛りいて、毎日飽きる事なく犯罪が増え続けている。
弱い者を守れ、と教えるわりに今も尚、戦争は起き続けている──
「怜、しっかりして」
「あっ、ああ」
俺のこの蜷局の様なグルグルとした思いを読み取ったかの様に、サラは俺の肩を三度優しく叩いた。
『ちょっと待て!黒いコートの男は!?あの男は何者なんだ!?』
ヘッドセットの中からひねり出した様なライリーの声が聞こえる。
すると間もなくして、あたかも盗聴している事が織り込み済みな様にAIは次、俺達に向けてこう言った。
『CPO6の皆さん。この『不要分子』は、私が最後に提供する情報媒体です。』
『あなた方が探していた『黒いコートの男』の正体、それは、全世界に存在する同一規格のAIロボットです。彼らには個性も意識もありません。単なる情報収集端末であり、私の分身でした。』
『あなた方にヒントを差し上げましょう』
『この世にも❝命の選別をする人間❞は腐るほど居るのです。私たちAIが主導権を握った戦争なのか、それとも人間が主導権を握った人間と人間の戦争なのか──あなたがたの発想力が試されます』




