恐ろしのディナータイム
**************************
夕方。チームは、ブルックリンのウィリアムズバーグにある、洗練されたフレンチレストラン『ル・ベルナルディン』に集まった。
最上階の窓からは、マンハッタンの夜景が一望できる。金融時代に一度だけ、仕事終わりにライリーと来た事がある此処は、俺の原点でもあった。
あの時、仕事に向いていないかもしれない……と、病みそうな俺を、ライリーが根気強く励ましてくれたものだ。
全員が、ここ数日の疲れを癒し、上質なワインと料理を囲んで何気ない話をしている。
「だけど、約束を破って日本に侵入してきたのはロシアだろ!」
「おい、ロシアと呼ぶな。ソ連と呼べ。しかも、約束を破棄されることを前提として考えていないお前達が悪いんだ。あんな、時代にバカ正直に人を信じやがって…」
「なッ、お前こらドミトリ!表出ろ!」
半分冗談だが、半分本気のこの会話。俺がわざとそんな事を言うと、呆れたキムがハイハイと言いながら俺とドミトリの肩を離した。
そんな俺達三人の姿を見て爆笑しているファイサルとライリー。
あとから合流した理星は、微笑むサラの横で、俺のこの姿を見慣れているからか、特に大きく笑う事もなく淡々と目の前のご飯を食べ続けていた。
「何だか兄弟みたいだな、あの三人」
「確かに。そう見えてくるな」
俺達にとって、この食事は「自分達が人間であること」を再確認する儀式だった。
AIの様に動き続けれない俺達人間は、こうやって休息の時間をとても大切にする。
それは効率的に【休息】として考えると一人で寝る事が大切なのかもしれない。
でも、言葉には言い表せない人間の性というもので、たまにはこうやって仲間同士でバカを言い合う時間の方が睡眠よりも大切だったりするわけだ。
だけど、こういった情緒が分からないのだろう。俺達に牙を剥いて来たAIとやらは──。




