事件の関連性
「大阪で起きたのはこれで二度目だな。」
沢田部長がそう確認すると、買ってきたエナジードリンクを一口飲んでから、俺は資料を見ながら答える。
「はい、これで二度目です。一度目は……ああ、これだ。半年前に梅田にあるパチンコ屋で起きた無差別殺害事件です。」
「被害者数は?」
「被害者数は……死者5人、重傷者1人、軽症者2人です。現場の写真がありますよ。ここに」
「……相変わらず、この事件すべての写真は血祭りだな」
明らかに眉間に皺を寄せて不服そうな顔をしている沢田部長。
そりゃあそうだ。こんな写真、何回見ても慣れないし、慣れて良いものではない。
これを見て平然とデータの様に処理出来るのは、俺達と脳みそから違うと思われる、天才の理星くらいだろう。
「パチンコ屋の次に精神科、か。なんだかな。」
部長は小さくそんな言葉を吐きながら、モニターを見据える。
──俺も「なんだかな」と言いたい気分だ。
まるで、犯人は、人種を見極めてる様な……そんなことを捜査関係者が想像してしまう様な場所でしか、事件は起きていない。
俺もその言葉を聞いてそう思った。
「この事件の三週間前には、川崎の風俗店でも‥」
「報道規制がされていますので、まさか国民はこの事件全てに関連性が有るなんて思っても無いでしょうけど…」
桜子がカフェラテを飲みながら付け加えた。
「ああ。それで良いよ。関連性が有るなんてバレたらみんな怖くて日常生活すらままならなくなる。風俗店の事件は、確か全滅だったな?」
モニターには、嫌という程に見た、ソープランドの現場写真が映し出される。
「はい、全滅です。」
あっけなく口にできるのが、理星の凄いところだ。
何度もいうが、彼はこの悲惨なデータを、感情を一切込めずただの事実として処理できる。
が、やはり俺は……こういう写真には弱い。
元金融エリートとして冷徹な判断はできたが、それでも人の情は捨てられなかった。




