第六章【静寂と報復】
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かなり爆睡してしまったのか、俺は……。
会議室の直ぐ隣の部屋に用意された四畳一間程度のコンパクトな部屋にあるベッドと灰皿一つ程度しか置けない大きさのサイドテーブル。
これはUSAが俺達に用意してくれた簡易的な就寝スペースだった。
──時計を見ると、午前6時。
外はまだ夜明け前で、連邦裁判所の周辺は、昨日の喧騒が嘘のように静まり返っている。
48時間のタイムリミットまで既に残り4時間を切っていた。イラン救出作戦❝エラーコード作戦❞を無事に終えてから、軽く話し合いをし、そのまま解散した俺達。
少しだけ寝よう…なんていうつもりだったけど、キッカリと8時間も爆睡していた様だ。
ベッドの上でまだ疲れが完全には取れていない体を起こし、共有洗面台で歯磨きをして、顔を冷水で洗ってから、スウェット姿のまま会議室へ向かった。
「あら、意外に早いわね。」
サラは優雅にデリンギの珈琲マシンでエスプレッソを淹れている。
他のメンバーも既に起きていた様で、みんなキリッとした顔で暖かい飲み物を飲んでいた。
貴方もいる?と聞いてくれたサラの好意に素直に甘えると、ある程度俺のプロファイルしている彼女はミニ冷蔵庫からミルクを取り出しカフェラテを作ってくれた。
受け取ったカップから白い湯気が立ち上る。
デリンギのコーヒーメーカーは使った事が無かったが……中々、豆の香りを壊さずに丁寧に作るマシンの様だ。手で淹れた時と、香りの差がそこまで無い様に思えた。
「サラ、何かあったか?変わった事」
「いや、まったくないわ。この4時間、AIからの通信も、世界的なインシデントの報告も、ゼロ。この静寂こそが、一番不気味ね」




