大阪からの血のプレゼント
「今回の事件現場の写真と、逮捕時の犯人の様子が映った映像です。」
俺達の会話を聞いていたのは、東大理工学部主席卒の超インテリ、内情庁の解析班エース、理星始だ。
彼は、椅子をクルッとこちらに回転させながら、リモコンでモニターを操作する。
すると画面に、血が滲む犯行現場の写真数枚がスライドショーの様に流れた。
──そして、ほんの一瞬、まるでバグのように画面に砂嵐が表示される。
「なんだ、理星。珍しいな。」
「あ、すみません。電波障害だと思います」
「始くん、これは大阪府警から?」
三好桜子がピンク色のマグカップを両手で持ちながら、眉を潜め、そう聞いた。
「ええ、一連の犯行が起きた際は、現場が分かる物全てが先ずは警視庁公安部に回されます。そして、公安のある人物を通してこちらに来ます。」
「ああ、沢田部長の……」
俺が気を使ってわざと濁そうとしたのに、沢田部長本人が、何事もないように言葉を被せた。
「俺の元嫁の、田中杏からだな。」
沢田賢治という名に負けない、かなりの美形である部長。
彼が昔に結婚したのは警視庁長官を父に持つエリート中のエリート、田中杏警部だった。
数回見たことがあるが、とても美人で気立てが良く、最高の女性だと俺も思う。
──が、二人の夫婦生活は二年であっけなく終わったらしい。
俺は離婚理由なんて野暮なことは本人たちに聞かないが、離婚後もそれなりに連絡を取っている彼らの関係性を見る限り、嫌い合っていがみ合って別れたわけではないのだろう。




