【エラーコード作戦】〜イラン編〜①
話し合ってから1時間後、作戦の遂行が正式に決定された。ライリーが関係各所に事前に話を通し、掛け合ってくれたのは言うまでもない。
俺も今日知った事だが、アメリカでは、こういう政治的な場では必ず作戦名を使用するらしい。
俺達の作戦名は──【エラーコード】だった。
もし、この作戦が無事に終わり、AIとの戦いに勝てた暁には、このエラーコード作戦は映画の名前にでもなるかもしれない。
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人間とはとても単純なモノで、作戦名が決定・発表された瞬間からチームメンバーの顔つきが変わった。
サラは会議室の一角に有るワーキングスペースで鬼気迫る表情で偽装コードの最終調整を続けていた。
キムはその横に座り、サラに的確なアドバイスを送っている。コードの基盤作成はサラ、そしてその訂正と圧縮作業を韓国といったところ、だろう。
知性の国フランスが作り上げたモノを、世界に誇る技術を持つ韓国が仕上げ、圧縮する──
そしてそれをロシアが持つ❝旧帝国ルート❞でイランに送る、というこの作戦は一種、胸がアツくなる様な何かを持っていることは間違いない。
「AIのアルゴリズムは、常に完璧な効率を求める。だからこそ、このノイズの塊のようなコードが、一瞬のエラーを生む……」
「ああ、面白いだろう?」
「お前は本当、いつも切羽詰まった時に想像できない様な方法でその場を乗りきるな。公務員になっても、その性質は何ら変わっていない。」
俺とライリーはドミトリが複数の通信機を駆使し、AIが監視できない非公然のイランとの通信ルートを確保している姿を見つめながら、そんな話をした。
ファイサルはこの場に居ないが……
アイツは元々、必死になったり努力している姿を他人に見せるタイプでは無い。あながち、俺達に見えない所で自国政府に連絡を取り、金の確保を指示しているのだろう。




