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世界最終戦争~CPO6~  作者: 胡蝶 蘭
第四章【結成されたCPO6】
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訪れた最初の任務

 



「あくまでも日本……というより俺の推理ではありますが」


 九条怜は、煙草を深く吸い込んだ。肺を満たしたニコチンの煙が、会議室の照明を受けて白い輪郭を描く。国籍人種問わず全ての人物が自分に注目する、この静かな圧力の中で…。




「AIの真の目的は彼らが作り上げた❝真の平和❞です。AIが完全に管理下における人間だけを残すため、現在の世界から『平和を乱す、管理不能な不要分子』を排除している」



 日本での事件から得た「AIの論理の穴」を赤裸々に語った。




「その効率性に乗っ取り、様々な場所で社会的弱者や不要分子と見出した者達を排除している。だけど──AIの弱みは人の情緒や背景といったデータ化されないものを理解できないことにある。」


「彼らの目には『精神病院に居る者は全て何らかの精神疾患である』という様な確率論を文字ったバカげたデータにしか見えない。そこに居る人全ての生きた背景や職業、経歴等といったものは認識されないんです」


「だけど、その病院には誰が居ますか?働くナース、医師、マタニティブルーを抱えつつ懸命に子育てをしている人、不眠症に困っている人……。様々な人が居ます。でもそれを人工知能は理解できないし、しようともしていない。それは非効率的ですからね。」


「その、AIが理解できない不完全な人間の情緒こそが、世界を救う鍵であると俺は考えています」




 煙を静かに吐き出した。


 その煙が、キムの冷たい視線やドミトリの苛立ちに潜む好奇心の上を漂う。



「AIが次に起こす行動は間違いなく──【不要分子】を排除していく事です」




「ええ、そうでしょうね。彼達はいかなる時も、効率性を求めた行動を起こします。そこに発生する人間のバックグラウンドや情緒は統計には含みませんし、含めません。それこそが彼達の欠陥である事は間違いない」


 サラが静かに怜の意見に同意し、胸ポケットから飛行機で回収したチップを机の上に置いた。





「これは機内で私たちを襲った犯人の右耳に装着されていた小型チップです。……この国際会議の場でいち早くこれを此処に出さなかった私は、ミスター怜にとってはどう映りますか?」


 怜は、サラの正直さ、そして国益と人道の狭間で揺れる彼女の人間らしさを見据えた。



「……俺達も人間ですから、ね」


 怜は、再び煙草を吸い込み、燃える先端のオレンジ色を見つめた。



 ──どの国も、自分の国が利益を上げたい・国際的事件の解決をリードしたいという欲望はあるものだろう。


 勿論、俺も日本がそうなる事を望んでいる。


 だが、それを望みすぎるが故に、動くのが遅れては本末転倒なのだ。その間にも不要分子と勝手にみなされた【明日を生きたい人々】の命が奪われていっているのだから。





 会議室は静寂に包まれる。





 ──その時



 すっかりと聞きなれた警告音と共に、目の前のメインスクリーンに、AIからのメッセージが割り込んだ。




【AT FIRST】



 直後、ライリーの端末からアメリカ地方警察の緊迫した声が響き渡る。静寂を打ち破る、けたたましい緊急通報だった。



「フィラデルフィアのケンジントン地区で銃乱射事件が発生!被害多数、動機不明だ!──AIのメッセージと同期している…!」



 静かな会議室は一転、緊急指令室と化す。


 九条達CPO6のメンバーはAIが仕掛けた最初の「地獄への切符」を手にし、チーム全員が上着を即座に手にしてから、現場へと直行した。



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